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芥川龍之介作品

芥川龍之介作品の朗読です

芥川龍之介作品

樗牛の事   作:芥川龍之介

一  中学の三年の時だった。三学期の試験をすませたあとで、休暇中読む本を買いつけの本屋から、何冊だか取りよせたことがある。夏目先生の虞美人草ぐびじんそうなども、その時その中に交っていたかと思う。が、中でもいちばん大部だったのは、樗牛全集の五...
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三つの宝 作:芥川龍之介

一 森の中。三人の盗人ぬすびとが宝を争っている。宝とは一飛びに千里飛ぶ長靴ながぐつ、着れば姿の隠れるマントル、鉄でもまっ二ぷたつに切れる剣けん――ただしいずれも見たところは、古道具らしい物ばかりである。 第一の盗人 そのマントルをこっちへよ...
芥川龍之介作品

鼻   作:芥川龍之介

禅智内供ぜんちないぐの鼻と云えば、池いけの尾おで知らない者はない。長さは五六寸あって上唇うわくちびるの上から顋あごの下まで下っている。形は元も先も同じように太い。云わば細長い腸詰ちょうづめのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下っているの...
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袈裟と盛遠 作:芥川龍之介

上  夜、盛遠もりとおが築土ついじの外で、月魄つきしろを眺めながら、落葉おちばを踏んで物思いに耽っている。      その独白 「もう月の出だな。いつもは月が出るのを待ちかねる己おれも、今日ばかりは明くなるのがそら恐しい。今までの己が一夜の...
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野呂松人形 作:芥川龍之介

野呂松人形のろまにんぎょうを使うから、見に来ないかと云う招待が突然来た。招待してくれたのは、知らない人である。が、文面で、その人が、僕の友人の知人だと云う事がわかった。「K氏も御出おいでの事と存じ候えば」とか何とか、書いてある。Kが、僕の友...
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羅生門の後に 作:芥川龍之介

この集にはいっている短篇は、「羅生門」「貉むじな」「忠義」を除いて、大抵過去一年間――数え年にして、自分が廿五歳の時に書いたものである。そうして半なかばは、自分たちが経営している雑誌「新思潮」に、一度掲載されたものである。 この期間の自分は...
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父  作:芥川龍之介

自分が中学の四年生だった時の話である。 その年の秋、日光から足尾あしおへかけて、三泊の修学旅行があった。「午前六時三十分上野停車場前集合、同五十分発車……」こう云う箇条が、学校から渡す謄写版とうしゃばんの刷物すりものに書いてある。 当日にな...
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運  作:芥川龍之介

目のあらい簾すだれが、入口にぶらさげてあるので、往来の容子ようすは仕事場にいても、よく見えた。清水きよみずへ通う往来は、さっきから、人通りが絶えない。金鼓こんくをかけた法師ほうしが通る。壺装束つぼしょうぞくをした女が通る。その後あとからは、...
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西郷隆盛 作:芥川龍之介

これは自分より二三年前に、大学の史学科を卒業した本間ほんまさんの話である。本間さんが維新史に関する、二三興味ある論文の著者だと云う事は、知っている人も多いであろう。僕は昨年の冬鎌倉へ転居する、丁度一週間ばかり前に、本間さんと一しょに飯を食い...
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たね子の憂鬱   作:芥川龍之介

たね子は夫おっとの先輩に当るある実業家の令嬢の結婚披露式ひろうしきの通知を貰った時、ちょうど勤め先へ出かかった夫にこう熱心に話しかけた。「あたしも出なければ悪いでしょうか?」「それは悪いさ。」 夫はタイを結びながら、鏡の中のたね子に返事をし...
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「羅生門」 作:芥川龍之介

ある日の暮方の事である。一人の下人げにんが、羅生門らしょうもんの下で雨やみを待っていた。 広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗にぬりの剥はげた、大きな円柱まるばしらに、蟋蟀きりぎりすが一匹とまっている。羅生門が、朱雀大路...
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あばばばば  作:芥川龍之介

保吉やすきちはずつと以前からこの店の主人を見知つてゐる。 ずつと以前から、――或はあの海軍の学校へ赴任した当日だつたかも知れない。彼はふとこの店へマツチを一つ買ひにはひつた。店には小さい飾り窓があり、窓の中には大将旗を掲げた軍艦三笠みかさの...
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或旧友へ送る手記 作:芥川龍之介

誰もまだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない。それは自殺者の自尊心や或は彼自身に対する心理的興味の不足によるものであらう。僕は君に送る最後の手紙の中に、はつきりこの心理を伝へたいと思つてゐる。尤もつとも僕の自殺する動機は特に君に伝...
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蜘蛛の糸 作:芥川龍之介

一  ある日の事でございます。御釈迦様おしゃかさまは極楽の蓮池はすいけのふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮はすの花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色きんいろの蕊ずいからは、何とも云え...
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枯野抄  作:芥川龍之介

この作品は青空文庫()から取得しました。 丈艸ぢやうさう、去来きよらいを召し、昨夜目のあはざるまま、ふと案じ入りて、呑舟どんしうに書かせたり、おのおの咏じたまへ  旅に病むで夢は枯野をかけめぐる ――花屋日記――  元禄七年十月十二日の午後...