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夏目漱石

夏目漱石の朗読です

夏目漱石

ケーベル先生 作:夏目 漱石

木この葉はの間から高い窓が見えて、その窓の隅すみからケーベル先生の頭が見えた。傍わきから濃い藍色あいいろの煙が立った。先生は煙草たばこを呑のんでいるなと余は安倍あべ君に云った。 この前ここを通ったのはいつだか忘れてしまったが、今日見るとわず...
夏目漱石

落第  作:夏目漱石

其頃東京には中学と云うものが一つしか無かった。学校の名もよくは覚えて居ないが、今の高等商業の横辺あたりに在あって、僕の入ったのは十二三の頃か知ら。何でも今の中学生などよりは余程よほど小さかった様な気がする。学校は正則と変則とに別れて居て、正...
夏目漱石

虚子君へ 作:夏目 漱石

昨日は失敬。こう続けざまに芝居を見るのは私の生涯しょうがいにおいて未曾有みぞうの珍象ですが、私が、私に固有な因循いんじゅん極まる在来の軌道をぐれ出して、ちょっとでも陽気な御交際おつきあいをするのは全くあなたのせいですよ。それにも飽あき足らず...
夏目漱石

文鳥   作:夏目漱石

十月早稲田わせだに移る。伽藍がらんのような書斎にただ一人、片づけた顔を頬杖ほおづえで支えていると、三重吉みえきちが来て、鳥を御飼かいなさいと云う。飼ってもいいと答えた。しかし念のためだから、何を飼うのかねと聞いたら、文鳥ぶんちょうですと云う...
夏目漱石

僕の昔  作:夏目漱石

根津ねずの大観音だいかんのんに近く、金田夫人の家や二弦琴にげんきんの師匠や車宿や、ないし落雲館らくうんかん中学などと、いずれも『吾輩わがはいは描ねこである』の編中でなじみ越しの家々の間に、名札もろくにはってない古べいの苦沙弥くしゃみ先生の居...