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青空文庫の朗読

青空文庫の朗読です。

芥川龍之介、太宰治、夏目漱石などを読んでいます

宮沢賢治

やまなし  作:宮沢賢治

小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈げんとうです。 一、五月  二疋ひきの蟹かにの子供らが青じろい水の底で話していました。『クラムボンはわらったよ。』『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』『クラムボンは跳はねてわらったよ。』『クラムボンはかぷ...
芥川龍之介作品

樗牛の事   作:芥川龍之介

一  中学の三年の時だった。三学期の試験をすませたあとで、休暇中読む本を買いつけの本屋から、何冊だか取りよせたことがある。夏目先生の虞美人草ぐびじんそうなども、その時その中に交っていたかと思う。が、中でもいちばん大部だったのは、樗牛全集の五...
太宰治

津輕地方とチエホフ 作:太宰治

こなひだ三幕の戲曲を書き上げて、それからもつと戲曲を書いてみたくなり、長兄の本棚からさまざまの戲曲集を持ち出して讀んでみたが、日本の大正時代の戲曲のばからしさには呆れた。よくもまあ、こんなものを、書く人も退屈せずに書いたもの哉、讀む人も退屈...
芥川龍之介作品

三つの宝 作:芥川龍之介

一 森の中。三人の盗人ぬすびとが宝を争っている。宝とは一飛びに千里飛ぶ長靴ながぐつ、着れば姿の隠れるマントル、鉄でもまっ二ぷたつに切れる剣けん――ただしいずれも見たところは、古道具らしい物ばかりである。 第一の盗人 そのマントルをこっちへよ...
夏目漱石

ケーベル先生 作:夏目 漱石

木この葉はの間から高い窓が見えて、その窓の隅すみからケーベル先生の頭が見えた。傍わきから濃い藍色あいいろの煙が立った。先生は煙草たばこを呑のんでいるなと余は安倍あべ君に云った。 この前ここを通ったのはいつだか忘れてしまったが、今日見るとわず...
太宰治

女人訓戒 作:太宰治

辰野隆ゆたか先生の「仏蘭西フランス文学の話」という本の中に次のような興味深い文章がある。「千八百八十四年と云うのであるから、そんな古い事ではない。オオヴェルニュのクレエルモン・フェラン市にシブレエ博士と呼ぶ眼科の名医が居た。彼は独創的な研究...
宮沢賢治

月夜のでんしんばしら 作:宮沢 賢治

ある晩、恭一はぞうりをはいて、すたすた鉄道線路の横の平らなところをあるいて居おりました。 たしかにこれは罰金ばっきんです。おまけにもし汽車がきて、窓から長い棒などが出ていたら、一ぺんになぐり殺されてしまったでしょう。 ところがその晩は、線路...
太宰治

あさましきもの  作:太宰治

賭弓のりゆみに、わななく/\久しうありて、はづしたる矢の、もて離れてことかたへ行きたる。 こんな話を聞いた。 たばこ屋の娘で、小さく、愛くるしいのがいた。男は、この娘のために、飲酒をやめようと決心した。娘は、男のその決意を聞き、「うれしい。...
芥川龍之介作品

鼻   作:芥川龍之介

禅智内供ぜんちないぐの鼻と云えば、池いけの尾おで知らない者はない。長さは五六寸あって上唇うわくちびるの上から顋あごの下まで下っている。形は元も先も同じように太い。云わば細長い腸詰ちょうづめのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下っているの...
夏目漱石

落第  作:夏目漱石

其頃東京には中学と云うものが一つしか無かった。学校の名もよくは覚えて居ないが、今の高等商業の横辺あたりに在あって、僕の入ったのは十二三の頃か知ら。何でも今の中学生などよりは余程よほど小さかった様な気がする。学校は正則と変則とに別れて居て、正...
芥川龍之介作品

袈裟と盛遠 作:芥川龍之介

上  夜、盛遠もりとおが築土ついじの外で、月魄つきしろを眺めながら、落葉おちばを踏んで物思いに耽っている。      その独白 「もう月の出だな。いつもは月が出るのを待ちかねる己おれも、今日ばかりは明くなるのがそら恐しい。今までの己が一夜の...
太宰治

黄金風景 作:太宰治

海の岸辺に緑なす樫かしの木、その樫の木に黄金の細き鎖のむすばれて   ―プウシキン― 私は子供のときには、余り質たちのいい方ではなかった。女中をいじめた。私は、のろくさいことは嫌きらいで、それゆえ、のろくさい女中を殊ことにもいじめた。お慶は...
夏目漱石

虚子君へ 作:夏目 漱石

昨日は失敬。こう続けざまに芝居を見るのは私の生涯しょうがいにおいて未曾有みぞうの珍象ですが、私が、私に固有な因循いんじゅん極まる在来の軌道をぐれ出して、ちょっとでも陽気な御交際おつきあいをするのは全くあなたのせいですよ。それにも飽あき足らず...
芥川龍之介作品

野呂松人形 作:芥川龍之介

野呂松人形のろまにんぎょうを使うから、見に来ないかと云う招待が突然来た。招待してくれたのは、知らない人である。が、文面で、その人が、僕の友人の知人だと云う事がわかった。「K氏も御出おいでの事と存じ候えば」とか何とか、書いてある。Kが、僕の友...
太宰治

禁酒の心 作:太宰治

私は禁酒をしようと思っている。このごろの酒は、ひどく人間を卑屈にするようである。昔は、これに依よって所謂いわゆる浩然之気こうぜんのきを養ったものだそうであるが、今は、ただ精神をあさはかにするばかりである。近来私は酒を憎むこと極度である。いや...
夏目漱石

文鳥   作:夏目漱石

十月早稲田わせだに移る。伽藍がらんのような書斎にただ一人、片づけた顔を頬杖ほおづえで支えていると、三重吉みえきちが来て、鳥を御飼かいなさいと云う。飼ってもいいと答えた。しかし念のためだから、何を飼うのかねと聞いたら、文鳥ぶんちょうですと云う...
夏目漱石

僕の昔  作:夏目漱石

根津ねずの大観音だいかんのんに近く、金田夫人の家や二弦琴にげんきんの師匠や車宿や、ないし落雲館らくうんかん中学などと、いずれも『吾輩わがはいは描ねこである』の編中でなじみ越しの家々の間に、名札もろくにはってない古べいの苦沙弥くしゃみ先生の居...
芥川龍之介作品

羅生門の後に 作:芥川龍之介

この集にはいっている短篇は、「羅生門」「貉むじな」「忠義」を除いて、大抵過去一年間――数え年にして、自分が廿五歳の時に書いたものである。そうして半なかばは、自分たちが経営している雑誌「新思潮」に、一度掲載されたものである。 この期間の自分は...
太宰治

走れメロス 作:太宰治

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を...
芥川龍之介作品

父  作:芥川龍之介

自分が中学の四年生だった時の話である。 その年の秋、日光から足尾あしおへかけて、三泊の修学旅行があった。「午前六時三十分上野停車場前集合、同五十分発車……」こう云う箇条が、学校から渡す謄写版とうしゃばんの刷物すりものに書いてある。 当日にな...