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シングルマザーで頑張ったご褒美かしら

シニアの体験シニアの恋

「恵子さんは僕のことをどう思っているんですか?」静かな夕暮れ、萩原さんの声が私の胸に響きました。彼のいつも優しい声が、今日は真剣そのものでした。私の心臓は高鳴り、彼の気持ちが目から感じられるほど私に注がれていました。

「僕はあなたが好きです。恵子さんのことを好きになってしまいました。」 「私も萩原さんのことが好きです。でもこんな年になって…良いのかしら…」不安と喜びが交錯する中で、私は萩原さんの目に真剣さを見つけました。 「良いんです!年齢なんて関係ありません!」彼の声には揺るぎない確信があり、その言葉が私の心に染み渡りました。彼はそう言うと、私を優しく抱きしめ、そのまま顔をゆっくりと近づけました。こんな年になっても心臓が張り裂けそうでした。私たちはゆっくりと唇を合わせ、そのまま二人で存在を確かめるように強く抱きしめ合いました。

私の名前は恵子です。もうすぐ63歳の元看護師です。18歳から働き始め、63歳から年金が満額もらえるということでつい先日退職しました。私は結婚していたのですが、38歳の時に夫が不倫をし、離婚をしました。慰謝料として自宅をもらえたことで、何とかそれ以降はシングルマザーとして必死に働き、二人の子どもを育て上げました。そして子どもたちが家を出てから一番下の息子が結婚したのを機に、今まで暮らしていた自宅を売却して、小さなアパートへ引っ越しました。立地が良くて家賃も手頃なので気に入っています。広いバルコニーもあり、洗濯物を干すのにも不自由しない良い物件です。

暮らし始めてもうすぐ2カ月になるのですが、こんな年になって私は気になる人ができました。ご近所に住む萩原さんという方です。萩原さんは園芸が趣味で、彼のバルコニーには家庭菜園のプランターや草花の鉢植えがたくさん並んでいます。どれもよく手入れされていました。

朝、洗濯物を干すタイミングなど、ベランダへ出る時間が重なると時々萩原さんと会話をするようになりました。時折育てた野菜をいただいたり、彼の優しさに心惹かれていく毎日でした。彼と私は同世代くらいで、今は一人暮らしをしているそうです。娘さんは結婚し出ていったとのことでした。その娘さんが県外へ嫁いでからは、このアパートで一人の生活を楽しみながら園芸をしているそうです。私と境遇が似ており、それだけで私は彼のことが気になるようになりました。

こんな年になって…これって恋なのかしら?とはいえ、私も自分のことはわきまえているつもりです。仕事と子育てに疲れ切って、私はすっかり女らしさを捨ててきてしまいました。子供たちは父がいなくてもグレることもなくまっすぐに育ってくれましたが、父の代わりもしないといけない私は、常に強くある肝っ玉母ちゃんを演じていました。そう生きるしかなかったのです。看護師の仕事は責任が重く、夜勤は特に大変でした。言い訳しているわけではありませんが、女を捨てないと生きていけなかったのです。今ではぽっちゃりとしたおばさん体型になってしまいました。まるでどこかのボスみたいです。逆に萩原さんはお腹の出たおっさん化した体系ではなくすらっとしており、オールバックで整えた黒髪が印象的なとても紳士な方でした。

「もし良かったらこれどうぞ。」 いつも頂くお野菜のお礼におかずをおすそ分けしました。決してアプローチしているわけではないのですが、でもまあ少しだけ喜んでもらえたらという下心はあったと思います。その後、お野菜を頂いたらお返しにおかずを作ってあげるという形で以前にも増して彼との交流が増えていきました。

「いつも美味しい料理ありがとうございます。毎回美味しいです!」 ここ3日会えていなかった萩原さんが訪れてきました。聞くと娘夫婦の家に泊まりに行っていたそうです。お土産を頂きました。ありふれたお土産ではなく、地元で有名なお店の美味しい和菓子でした。 「ありがとうございます。良かったら一緒に食べませんか?お茶を入れますので」と萩原さんを誘い、我が家に入ってもらいました。そういうこともあり、お互いの部屋を行き来するようにもなりました。それから3か月が経ったある日、萩原さんからお出かけのお誘いを受けました。もちろん即OKをしましたが、頑張っている感が出過ぎないように気を付け極力ナチュラルな化粧をしました。

「今日も素敵ですね。」 「ありがとうございます。萩原さんも素敵ですよ」 彼の言葉は社交辞令だというのはわかっています。でも、褒めてもらえるだけで私は嬉しくて、こんな歳になっても心は喜んでいました。この日は、園芸好きな萩原さんの希望するガーデンに行きお散歩をしました。彼は子供のように夢中で植物について話していました。

「あっすみません、つい夢中になってしまって…僕の悪い癖ですね。」 「大丈夫ですよ!萩原さんの植物についてのお話、好きですよ」 そう言うと、彼は照れ笑いを浮かべながら私のことをエスコートしてくれました。こういうことが何度かあるうちに、私と萩原さんとの距離は自然と縮まっていきました。

そしてある日。

「恵子さんは僕のことをどう思っているんですか?」静かな夕暮れ、萩原さんの声が私の胸に響きました。彼のいつも優しい声が、今日は真剣そのものでした。でも、彼はまっすぐ私の目を見ています。彼の気持ちが目から感じられるほど私に注がれていました。 「こんな聞き方だめですよね。ふぅ…」 「恵子さん!!僕はあなたが好きです。恵子さんのことを好きになってしまいました。」 「私も萩原さんのことが好きです。でもこんな年になって…良いのかしら…」 「良いんです!年齢なんて関係ありません!」彼の声には揺るぎない確信があり、その言葉が私の心に染み渡りました。彼はそう言うと、私を優しく抱きしめ、そのまま顔をゆっくりと近づけました。こんな年になっても心臓が張り裂けそうでした。私たちはゆっくりと唇を合わせ、そのまま二人で存在を確かめるように強く抱きしめ合いました。でもこの時、私は喜びだけでなく、それと同じくらい困惑と不安もありました。こんな年になったおばさんの私。看護師をしていたから多少はお金はあるけど特段これといって自分でおすすめするポイントがありません。 「こんな私で本当に良いんですか?」 「もちろんです」 「年だし太ってきましたし」 「そんなこと言ったら僕だって頭も薄くなってきましたよ」 「僕はあなたの笑顔が好きなんです。年齢や体形なんて関係ありません」 そう言って彼は私を安心させてくれました。それからというもの、私と彼は徐々に関係が深くなっていきました。毎日のように部屋を行き来し、そのたびに愛を囁き合いました。彼はスマホ操作が苦手だったので、私が彼のコーチをしてあげたりもしました。今では毎日恥ずかしくなるくらいの内容のメッセージをやり取りしています。

こんな年になって、新たに人を好きになることがあるなんて思ってもいませんでした。歳を取れば取るほど相手に対して臆病になっていたのかもしれません。萩原さんとの付き合いはゆっくり、そして遠回りかもしれませんが確実に前に進んでいました。少しずつ彼に触れる機会が増え、私は自身が女であることを思い出していきました。見苦しいのは明らかなのに彼は私をすべて受け入れてくれました。そして、ついに私は彼と深く結ばれました。

若い頃とは違う感覚でした。終わった後、私たちは長い間抱き合っていました。なんだかぼーっとしてしまい、幸せだったことしか思い出せません。彼の行為は普段以上の優しさと慈愛に溢れています。私のことをまるで小動物でも見ているかのような目で私を可愛がってくれます。こんな幸せなことがあっても良いのか、そう思えるほど私のことを愛してくれました。その後も定期的に関係を持っています。

肌を合わせなくても彼との時間は、心に満足感を与えてくれました。ただ、彼との交際をまだ私の子どもに打ち明けられていませんでした。彼も娘さんには伝えていないとのこと。このまま内緒の関係で、そんな風に思ったこともありました。けれども、萩原さんは違いました。

「恵子さん。萩原になってくれませんか?」 いきなりのプロポーズでした。 「結婚して欲しい。そして子供たちにも堂々と話したい。」 彼の誠実さは、誰に対してもそうなのでした。

秘め事でも良いかと思った私は恥ずかしかったです。でも私も心のどこかで子供たちに対して後ろめたさを抱えていたのだと思います。彼に背を押され私も彼の提案に同意しました。

「こんな私で良いのなら…よろしくお願いします」 その言葉を聞いた萩原さんは、私のことを抱え上げくるくると回りながら喜んでいました。今度、彼の娘、私の子どもたちを呼んで一緒に食事をすることになりました。子どもたちがどんな反応をするのか不安な気持ちでいっぱいです。けれども私の隣には、彼がいます。私たちの寿命まであと15年くらいでしょうか。私は今までの60年を超えるくらい濃い時間を過ごしたいと思います。介護の時間ももうすぐやって来るかもしれません。でも彼となら乗り越えられる、乗り越えられなくても彼となら死ぬまで一緒にいたい、そう思っています。

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