今回のお話は、幸雄さんのお話です。それではお聞きください。
私の名前は幸雄、今年で61歳になります。会社経営を続けてもうすぐ30年になります。人生には成功もあれば失敗もあったし、何度も苦労をしてきた。けれど、そんな私の今の悩み、それは妻の冴子が、信じられないほど魅力的すぎるということなんです。これ、贅沢な悩みだって笑われるかもしれませんが、実際問題、私にとっては深刻なんです。
冴子は59歳になります。年齢を重ねた女性なら、普通は落ち着いてくるものだと思っていました。だけど、冴子はその常識をことごとく覆していくんです。どういうわけか、歳を取るごとに、彼女の魅力は増すばかり。まるで、月が満ちていくように、年齢と共に彼女の美しさも輝きを増しているんです。最初はただの気のせいかと思ったけれど、どうにもそうじゃないらしい。
特に夜、二人きりになると、その気持ちが高まります。いい歳してるはずなのにすぐにムラムラしてくるんです。冴子のふとした仕草、静かに笑う顔――それらが、私の心を簡単に揺さぶるんです。61歳にもなって、心がこんなにも激しく動くなんて、若い頃のようです。でも、それ以上に複雑な感情も渦巻く。彼女のことを愛してやまない一方で、彼女に負担をかけているんじゃないか、という不安が押し寄せてくるんです。
「妻は魔女なのかもしれないな」なんて本気で考えたこともあります。魅力的すぎるんです、冴子は。まるで私を虜にするために、彼女が年を取るたびにその魔力が増していくみたいなんです。でも、同時に、私は怖くもありました。この歳になっても彼女に対する気持ちは変わらず、それどころか強くなっていく。それが、冴子に負担になっているんじゃないかと思うと、夜、一緒にいるときでさえ、どうしても心配になってしまうんです。
私は、若いころはただ勢いで突っ走っていました。仕事も、家庭も、全部一生懸命だった。冴子もそんな私にいつも笑顔を絶やさずにいてくれました。でも、最近ふと、彼女が少し疲れているように見えることがあったんです。無理をしてるんじゃないか?私に合わせているんじゃないか?そう思うと、どうしようもなく不安になるんです。
そんなある日、思い切って友人にこの悩みを打ち明けたんです。すると、彼は大声で笑って「まあ冴子さん美人過ぎるもんな。贅沢な悩み過ぎるんだよ!羨ましいだけだろ!」なんて言ってくるんです。それでも私は真剣に話を続けました。すると、彼はちょっと表情を変えて「気にしすぎなんだよ。一度、ちゃんと冴子さんと話して見ろよ。正直に言えば、きっと分かってくれるさ」と言ってくれたんです。確かに、私一人で悩んでいるだけじゃ何も解決しませんよね。友人の言葉に背中を押されて、ついに冴子に打ち明ける決心をしました。
しかし、その決心をしてからが大変でした。いざ、冴子にどう切り出せばいいかと考えると、妙に緊張してしまうんです。頭の中では何度もシミュレーションを繰り返しました。「おまえを求めすぎて負担をかけてないか?」とか、「疲れていないか?」とか、そういう言葉をどうやって自然に言えばいいのか、ぐるぐると考え続けました。恥ずかしい話ですが、まるで初めて彼女に告白するみたいに、緊張してしまっていました。
夜、リビングでいつものように二人でくつろいでいるとき、私は心臓が高鳴っているのを感じました。冴子はテレビを見ながら笑っていましたが、私はもう、どのタイミングで切り出すべきか頭がいっぱいです。「今だ」と思っても、なかなか言葉が出ない。喉が詰まるような感じで、息を吸い込んでは止め、吸い込んでは止めを繰り返していました。
ようやく、意を決して口を開きました。「冴子…、この歳になってもお前を求めすぎて、君に負担をかけすぎてないか?無理してないか?俺のせいで疲れてるんじゃないかって心配なんだ。」
自分で言っておきながら、胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感じがしました。彼女がどう答えるのか、その答えを待つのがこんなに苦しいとは思いませんでした。彼女の顔を見たくても、なぜかその時は見られなかったんです。
冴子はしばらく黙っていました。彼女が黙ると、その沈黙が怖くて、心臓の鼓動がさらに早くなるのを感じました。『やっぱり無理させてたのか?』という不安が一瞬頭をよぎります。何か否定的な言葉が返ってくるんじゃないか、と心のどこかで覚悟していました。
しかし、冴子は静かに息をつくと、私の方に向き直り、優しく微笑みながら言いました。「そんなことを考えていたの?…ありがとう。私を気遣ってくれるのは、本当に嬉しい。でも、私は幸せよ。会社の経営も大変なのに、こんなに優しくしてくれて、それだけで私は十分すぎるほど感謝してるの。正直言って、無理なんて一度も感じたことがないのよ。」
その言葉を聞いた瞬間、まるで胸に重くのしかかっていたものがふっと消えていくような感覚がありました。驚きました。冴子は本当にそう感じてくれていたんだ、と。そして、私がずっと抱いていた不安がどれほど無意味だったのかを痛感しました。
「あなたが私を愛してくれることが、何よりも私にとって大切なことなの。もしそれがなくなったら、それこそ私にとって一番辛いことよ。でも、今のあなたの愛情を私はいつも感じているし、それに何も不満はないの。年齢なんて、二人にとってはただの数字に過ぎないでしょ?これからも、一緒にいろんなことを楽しんでいきましょうよ。」
その言葉を聞いて、私はやっと気づいたんです。冴子は、いつも私を支えてくれていたんだな、と。どんなときでも、彼女は私のことを思ってくれていて、私が感じる以上に彼女は強く、そして優しい。年齢を重ねてきた今、私たちは一緒に多くのことを乗り越えてきた。だからこそ、彼女はこんなにも余裕を持って、私の不安や心配を受け止めてくれているんだと実感しました。
あの夜、私は改めて決意しました。これからも、冴子と共に歩んでいく、と。年齢なんて関係ないんです。私たちはまだまだ若い。これから先も、二人で一緒に、人生の喜びを感じながら進んでいける。それが、何よりも大切なことだと、私はようやく気づきました。
いかがでしたでしょうか。贅沢すぎるただの仲睦まじい幸雄さんのお話でした。こんな夫婦になりたいものですね!それでは、またお会いしましょう。