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家政婦~住み込み手の提案をすると

いつまでも若く純愛

「家政婦でも雇ったらどうだ?」 友人の平田がぽろっと言ったその言葉に、僕はハッとした。

そんなことまでしなければいけないのか、と一瞬抵抗があったが、確かにこのままでは身も心もボロボロだ。

  僕の名前は竹内力也。弁護士として働いているが、当時は忙しすぎて生活はボロボロ。帰宅するのは深夜で、家のことはすべて後回し。部屋はゴミ屋敷のように散らかり、ワイシャツは使い捨て同然。自分でもこんな生活が続くはずはないと分かっていたけど、どうにもできなかった。

 それでも、仕事だけは手を抜けない。それが自分の存在価値だと信じてきた。だけど、ふと気づけば、誰もいない部屋に帰るのが恐ろしくなっていた。 早速、友人の言葉に従い、家事代行サービスをアプリで申し込んでみた。どうせこのままじゃやっていけない。そんな思いもあり、半ばやけくそだった。 

 休みの日、玄関のチャイムが鳴り、ドアを開けると、26歳くらいの女性が立っていた。髪をまとめ、控えめな眼鏡をかけた少し暗いイメージのする女性だった。少し緊張した様子で、僕に丁寧に自己紹介をした。 「はじめまして。今日からお世話になります、竹内早苗です。」

 なんと、彼女は同じ苗字だったのだ。一気に親近感が湧く。 彼女は自己紹介を済ませると、早速掃除を始めた。その手際の良さに僕は驚いた。部屋の隅々まで丁寧に掃除してくれ、あっという間に埃まみれの部屋が生まれ変わったようにきれいになっていく。 僕があまりに感心していると、彼女は控えめに微笑んだ。

「これくらいは、当然ですから」

掃除が終わった後ケーキを出して話を聞くと、彼女は4浪して薬学部に入り、奨学金と予備校時代の学費を自分で返済しながら、いくつものアルバイトを掛け持ちして生活しているという。

その日以来、彼女を指定して定期的に来てもらうようにした。家の中はどんどん整えられ、お願いしていなくてもワイシャツのアイロンがけまで丁寧にやってくれていた。彼女の繊細な気配りに、僕は次第に安心感を覚えるようになっていた。 数カ月が経った頃、彼女に感謝の気持ちを伝えたくなり、お礼に食事をご馳走することにした。近所のレストランで、彼女と向き合って座ると、改めて彼女のことが気になった。

 「いつも本当に助かってるよ。君のおかげで生活がガラッと変わったんだ。」 

「そんな、私こそ、力也さんが頼んでくださって助かっています。仕事も勉強も大変で…でも、私頼れる人がいないので…」

 彼女の言葉には寂しさと強い意志が感じられた。僕は、そんな彼女をもっと支えたいと思った。何か彼女にできることはないか考えながら、自然と口を開いていた。

 「もしよかったら、住み込みで働いてくれないか?僕はほとんど家にいないし、君は家賃が浮く。その分、勉強にもっと時間を使えるだろうし、僕も君がいてくれたら助かるし…」

 一瞬、早苗は驚いたように僕を見つめた。

「住み込み、ですか?そんな、私には…」

 「強制じゃないよ。今、週に3回も来てもらってるでしょ?そんなに変わらないかなと思ってさ。まあ一度考えてみて。」

 彼女はしばらく考え込んだ後、小さく頷いた。

「正直助かります。本当に良いんですか?」

彼女がそう答えたとき、僕はほっとした。 こうして、早苗は僕の家に荷物を運びこみ、質素な生活をしていたみたいで、荷物自体も非常に少なかった。その日から住み込みとして一緒に住むことになった。 

「おかえりなさい。いつも遅くまでお疲れ様です。ご飯温めますね」 

「自分で出来るから大丈夫だよ。勉強中だろ?」

 「いえ、ちょっと休憩しようと思っていたところですから」

 そう言い、彼女はいつも僕に温かい食事を用意してくれた。彼女が家に来てから、僕の生活は驚くほど変わった。仕事から帰ると温かい食事が用意してくれ、家の中もいつも清潔だった。彼女と過ごす日常が、僕にとってどれだけ大切なものになったのかは、言葉では表せない。

それに、驚くこともあった。彼女は暗いイメージのある女性だったが、眼鏡を外して髪の毛を上げるとドキッとするほどの美人さんだった。一度そっちの方が良いよとおすすめすると、翌日から髪型と眼鏡もコンタクトに変え明るいイメージの女性に変わっていった。 

 ある、休日の日、一緒に日用品の買い物に行くこともあった。もうただの同棲のような感覚だった。 正直、僕は早苗に特別な感情を抱くようになっていた。でも、その気持ちをどう伝えればいいのか分からず、ただ彼女との時間を大切にするだけだった。

 そんな日々が2年弱ほど続き、ついに早苗が薬剤師として働くことが決まった。彼女は僕の家を出て、新しい生活を始めることになる。 引っ越し前夜、彼女はお礼にと、僕のために豪華な夕食を用意してくれた。緊張した表情を浮かべながら、笑顔でテーブルに料理を並べる彼女を見て、僕は心の中で

「ここにいてほしい」と強く願っていた。 でも、その気持ちはやはり言葉にできなかった。食事をしながら、僕は何度も彼女に話しかけようとしたが、声が出なかった。

早苗もまた、何かを言いたそうにしていたが、結局何も言わずに微笑むだけだった。 そして、別れのとき。彼女は荷物を持ち、玄関で僕に微笑んで言った。

「力也さん、本当にありがとうございました。ここでの時間が、私にとって本当に大切なものでした。」 彼女の言葉に、僕の心は引き裂かれるようだった。今なら、まだ間に合うかもしれない。

「待って…」そう口にしたとき、僕は自分の胸が激しく鼓動しているのを感じた。 

「君がいなかったら、僕の生活はどうなっていたか分からない。君のことが、好きだ。ずっと一緒にいてほしい。」

「家事をして欲しいわけじゃないよ。今の僕は仕事も早く帰ってこれるようになったし、ただ君とこれからも生きていきたい」

 突然の告白に、早苗は驚いたように目を見開いた。そして、少しの沈黙の後、彼女は目に涙を浮かべながら、そっと頷いた。

 「私も…私も、力也さんのことが好きです。でも、迷惑をかけたくなくて…言えませんでした。」

 彼女の言葉を聞いた瞬間、僕は心の奥が熱くなるのを感じた。早苗の手を取り、そのまま彼女を強く抱きしめた。 

そして、その日を境に、早苗は僕の恋人になった。僕たちは互いに支え合いながら、やがて結婚し幸せな家庭を築いていった。 これが、僕と早苗の馴れ初めだ。彼女が僕の家に来てから、生活は一変した。今でも彼女との日々を大切にしながら、彼女と一緒にいられることに感謝している。

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