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急に夫が求めてくるようになりました。

シニアの話シニアの馴れ初めチャンネル様
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夫との関係が悪くなって、もうどれくらい経つでしょうか。私は弘美、62歳の主婦です。子どもたちが家を出た後も、夫とはずっとすれ違ったままの生活を続けてきました。寝室も別にして、お互いの生活に踏み込まないようにするのが暗黙のルールになっていました。

関係が悪くなったきっかけは、あの時でした。夫が会社の同僚たちと飲みに行くことが増え、帰りが遅くなることが多くなったんです。最初は「付き合いだから仕方ない」と思っていましたが、それが週に何度も、そして夜遅くから朝帰りになることが増え、さすがに私も不満をぶつけました。「いい加減にして、家のことも考えて!」と強い口調で言ったのを覚えています。でも、夫は「俺が仕事して稼いでるんだから、好きにさせてくれ」と言い返し、そこから話が大きくなって口論になってしまいました。それ以来、お互いに言葉を交わすことが減り、会話があったとしても事務的なものばかり。寂しい気持ちはありましたが、感情を抑えて耐えるしかありませんでした。

子どもたちが家にいる間は、なんとか家庭を維持しようと思って踏みとどまっていました。でも、子どもたちもそれぞれ独立し、結婚して家庭を持った今、もう家族のために無理をしなくてもいいのかもしれないと考えるようになりました。離婚届も一度は書いてみたんです。けれど、それを提出する勇気がどうしても出なくて、結局そのまま机の引き出しにしまい込んでいました。

そんな時、夫の様子に少しずつ変化が見え始めたのです。ある日の夕方、キッチンで夕食の支度をしていた時、夫が唐突に声をかけてきました。「今日の夜、外でご飯でも食べに行かないか?」と。それがあまりにも突然だったので、最初は冗談かと思いました。でも夫の表情は真剣で、私は「どうしたの?急にそんなこと言って」と驚きを隠せませんでした。「たまには外でゆっくり話がしたい」と言われ、半ば戸惑いながらも了承しました。

食事の席でも、これまでの無愛想な態度とは打って変わって、夫は終始穏やかな笑顔を浮かべ、私に話しかけてきました。「最近、よく眠れてるか?」とか、「これから何かしてみたいことがあるなら教えてくれよ」と、まるで昔の優しかった頃の夫に戻ったように感じました。その時は少しぎこちなさを感じつつも、彼の変化がどこか嬉しかったのです。

それだけではありませんでした。食事の帰り道、夫が私の手をそっと握ってきたのです。「弘美、最近色々考えることがあってさ、もっとお前のこと大事にしたいと思うんだ」と言われた時、私は思わず涙が出そうになりました。これまでの夫からは考えられないような優しさに、どう応えていいのかわかりませんでしたが、素直に「ありがとう」とだけ伝えました。

さらに夫の変化は続きました。日常の中で、ちょっとした気遣いを見せることが増えたのです。コーヒーを淹れてくれたり、私の好きなお菓子を買ってきてくれたり。何でもないような、でもこれまでの夫からすれば驚くほどの変化でした。そんな小さな優しさに触れるたび、少しずつ心が温かくなっていくのを感じました。

そして、驚いたのは夫が私を求めてくることが増えたことです。長い間、夜の生活も途絶えていて、そんな関係が戻るなんて思いもしませんでした。最初は戸惑いましたが、夫の言葉や態度には以前のような冷たさはなく、どこか優しさが滲んでいました。まるで、もう一度やり直したいという彼の気持ちが伝わってくるようでした。私は拒む理由もなく、むしろその優しさに惹かれる自分がいました。

これまでの冷え切った関係が嘘のように、少しずつ夫との距離が縮まっていくのを感じていました。離婚のことを考え続けていた私の心に、少しずつ違う感情が芽生え始めていたのです。もしかしたら、まだやり直せるかもしれない。夫の優しさに触れるたび、そう思えるようになってきました。

こんな風にまた夫と一緒に歩んでいけるのかもしれない、という期待が心の中に膨らんでいきました。それはとても穏やかで、温かい感情でした。

夫との関係が以前とは見違えるほど良くなってきたことを、私は心から嬉しく思っています。あの頃の冷たく張り詰めた空気が嘘のように、今ではお互いに笑顔で話し、自然に言葉を交わせるようになったのです。特に夜の生活が戻ったことで、夫婦としての繋がりを再び感じられるようになりました。以前は、ただ同じ家にいるだけのような関係でしたが、今では一緒にいる時間が心地良く、また楽しいものに変わっています。

ある日、子どもたちが久しぶりに帰省してきました。みんなが集まるのはいつも楽しみなことですが、その日は特に和やかな時間を過ごせました。食卓を囲み、昔話に花を咲かせていた時、長女の綾がふと「お母さんたち、最近すごく仲が良いね」と言いました。その言葉に一瞬戸惑いましたが、夫も微笑みながら「まあ、そうだな」と答えました。子どもたちは「どうしたの?」と不思議そうな顔をしていましたが、私はただ「ちょっといろいろあったのよ」と笑ってごまかしました。

その後、子どもたちが帰った後も、私はふと疑問に思いました。確かに夫が優しくなったのは嬉しいことですが、どうして突然こうなったのか、その理由が気になって仕方ありませんでした。これまでの夫の態度を考えると、まるで別人のように感じる部分もあったからです。夫の変化は、一体何がきっかけだったのでしょうか。

ある夜、私は勇気を出して夫にそのことを聞いてみることにしました。寝室で二人きりになった時、静かな声で切り出しました。「ねえ、どうして急に優しくなったの?今まではそんな風じゃなかったのに…」夫は少し驚いたような顔をしていましたが、やがて深く息をついて、話し始めました。

「お前には、ずっと我慢させてきたんだと思う。昔の俺は、仕事のことで頭がいっぱいで、お前に優しくする余裕がなかった。帰ってきても、ただ黙ってテレビを見て、何も話さなかったし…」と夫は言いました。それを聞いて、私は少し胸が痛くなりました。確かにあの頃の夫は、家にいてもまるでどこか遠くにいるような感じでした。

「実は、去年のことだったんだが、俺の同僚が突然倒れて、そのまま亡くなったんだ。まだ若いのに、あっという間だったよ。それを見て、俺も考えさせられたんだ。このままでいいのかって…」夫の声が少し震えているのがわかりました。「もし俺が急にいなくなったら、お前に何もしてやれないままだった。だから、今からでも少しずつでも、お前にちゃんと向き合おうって決めたんだ」

私はその話を聞いて、言葉が出ませんでした。夫がこれまでのことを反省し、自分なりに変わろうとしていたことを知って、胸が熱くなりました。「ごめんな、弘美。今さらこんなこと言っても遅いかもしれないけど…お前にはちゃんと感謝してる。だから、これからはお前をもっと大事にしたいと思ってるんだ」

その言葉を聞いて、私は涙が溢れて止まりませんでした。長い間、心のどこかで夫に対して諦めていた部分があったのかもしれません。でも、こんなにも真剣に向き合ってくれる夫を見て、私は心の中で何かが溶けていくのを感じました。もう一度、夫と一緒に生きていきたい、そう思えるようになりました。

「ありがとう。私も、これからはあなたとちゃんと向き合うようにするね」と言いながら、夫の手を握りました。夫もまた、優しく私の手を握り返してくれました。あの冷たかった手が、今はこんなにも温かく感じるなんて、以前の私には想像もできなかったことです。

そして、その夜、私は引き出しにしまっていた離婚届を取り出し、それを目の前で破いて捨てました。もう、あの紙に頼る必要はない。これからは、夫と一緒に新しいスタートを切ろうと決心したのです。

翌朝、夫にそのことを伝えると、彼は驚いた顔をしながらも、すぐに笑顔を見せてくれました。「そっか、それなら良かった」と、どこかホッとしたような表情で言ってくれたのが、とても印象的でした。これから先、どんなことがあっても、今度こそお互いに支え合いながら生きていける。そんな確信が、私の中にありました。

再び手を取り合った私たちは、これからも一緒に歩んでいきます。長い時間をかけて再び繋がり直したこの関係を、大切に育てていこうと思っています。

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