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こんな歳になって初めての車での初体験

シニアの恋愛は60歳からチャンネル様シニアの話

私の名前は田中美佐子、61歳になりました。夫とは20年以上連れ添いましたが、数年前に亡くなりました。子どもたちはそれぞれ家庭を持ち、今は一人で静かな日々を送っています。趣味らしい趣味もなく、最近は近所のカラオケ喫茶に通うことが日課になりました。音痴なのですが、歌うことで少し気分が明るくなるのが気に入っています。

そんなカラオケ喫茶で出会ったのが、小林建夫さんという男性でした。年齢は私と同じくらいで、どこか軽い雰囲気を纏った人でした。建夫さんは冗談を交えながら周囲を笑わせるタイプで、初対面から誰とでもすぐに打ち解ける様子がありました。でも、少し聞けば、過去に浮気をして奥さんに出て行かれたという経歴を持つ人だと分かりました。正直に言えば「軽い男」という印象で、私も適当に距離を保ちながら接していました。

しかし、彼の人懐っこい性格のせいか、何度か顔を合わせるうちに少しずつ話すようになり、気軽な仲になっていきました。建夫さんはよく「美佐子さん、たまにはドライブでもどう?」と誘ってきました。最初は冗談だろうと思って流していましたが、何度目かのお誘いで「たまには気分転換に行ってみてもいいかも」と思い、一度だけ行ってみることにしました。

ただ、ドライブ当日の建夫さんは思った以上にきちんとした格好で現れました。車も清潔で、私が乗り降りしやすいように気を配るなど、意外な一面を見せてくれました。行き先は特に決めていなかったのですが、建夫さんは気の利いた提案をいくつもしてくれ、どこに行っても楽しめるように工夫してくれました。車内では、建夫さんが亡くなった私の夫や子どもたちの話をじっくりと聞いてくれ、冗談ばかりの軽い人だと思っていた印象が徐々に変わっていきました。

その後何度かドライブに出かけるうちに、建夫さんの優しさや気遣いが本物であることに気付きました。そして、それと同時に私自身の気持ちにも小さな変化が生まれ始めました。彼と過ごす時間が楽しいと思えるようになり、次第に会うのが待ち遠しく感じるようになったのです。

そんなある日、三度目のドライブに出かけたときのことです。その日の私はこんな歳だけど私なりに少しおしゃれもして、いつもより明るい色のスカートを選びました。建夫さんもそれに気づいたのか、「今日の美佐子さんはいつにもまして素敵だね」とさりげなく褒めてくれました。照れ臭い気持ちと嬉しさが入り混じり、心がほんのり温かくなり、いくつになっても嬉しいもんなんだなと実感しました。

ドライブの帰り道、建夫さんが突然車を路肩に停め、「すごい星空でしょ」と窓を指差しました。そこには空に満点の星空が広がり、静かな湖がきらめいていました。その景色を眺めていると、彼がふと私の手に触れ、「美佐子さん、あなたは素敵すぎます。」と言いながら私の手を握ってきたのです。その言葉と行動に、私の胸がドキッとしました。そして体中に電流が走りました。

そして、まさかのことが起きたのです。建夫さんがそっと私を見つめ、手を握ったまま優しく顔を近づけてきました。最初は驚きました。心臓がドキドキして倒れちゃうんじゃないかと思いましたが、彼の真剣な表情に心が揺れ、気が付けば私は彼を受け入れていました。車内という非日常的な場所で、外から見られるかもしれないという緊張感が妙に私の心を高ぶらせました。「こんな歳になって…」という恥ずかしさもありましたが、それ以上に胸が高鳴っていました。

実は、こうした車の中での出来事は私にとって初めての体験でした。恥ずかしいながらも、その瞬間に感じた特別さは、若い頃のようなトキメキとは違った大人ならではのものだったと思います。何より、建夫さんが見せてくれる細やかな気遣いや優しさが、心に深く響きました。私が躊躇していると、彼は「無理しなくていいよ」とそっと声をかけてくれ、その言葉にホッとしたのを覚えています。

その後、結局ホテルにも行ってしまいました。彼は終始私の気持ちを尊重し、無理をさせないように気を配りながらも、心から私を大切にしてくれる姿勢が伝わってきました。その優しさに触れるたびに、建夫さんが過去の失敗を乗り越え、新しい自分になろうとしていることを感じました。

ただお互い年だなと思うことがありました。次の日は二人とも筋肉痛が酷くて、顔を合わせた時にはお互いおかしくておかしくてこれからも無理をしないで生きていこうと言ってくれました。

さらに、別の日には思いがけないサプライズもありました。建夫さんが車で連れて行ってくれたのは、なんと私が昔夫と訪れたことのある懐かしい景色の場所でした。「ここで美佐子さんと一緒に写真を撮りたかったんだ」と言われ、なんだか胸が熱くなりました。その写真は今でも私の手元にあり、見るたびに幸せな気持ちを思い出します。

その後、建夫さんと一緒に過ごす時間がさらに特別なものに感じられるようになり、今では半同棲のようにお互いの家を行き来し暮らしています。子供のこともありますし、建夫さんもまた過去の後悔や孤独な気持ちを打ち明けてくれました。二人とも年齢を重ねたからこそ分かること、感じられることがあり、同じ時間を共有する意味を改めて考えるようになりました。

それにしてもこんな歳になってからでも恋愛をするとは思いもしませんでしたが、これからの老後の人生が楽しく生きていけることを願っています。

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