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骨折し妻にお世話になります。

シニアの恋愛は60歳からチャンネル様シニアの話
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私の名前は永田武治、63歳です。定年を迎えたものの、再就職して営業の仕事を続けています。定年後も働けることには感謝していますが、営業の仕事は体力を使う上に気も遣うので、帰宅するとどうしても疲れがどっと押し寄せてきます。そんな日々の中で、家ではつい気が緩み、妻の和子に甘えてしまっていました。

そんなある日の夕飯時。和子が「ご飯できたわよ!」と何度も私を呼んでいましたが、私はその声を聞き流し、仕事の資料に目を通していました。「ちょっと待って」と返事をしながらも、結局リビングに降りたのは随分後のことでした。

食卓に座った私は、机の上に並べられた料理を見て、つい余計な一言を言ってしまったのです。「おかずが冷めてるじゃないか。」

その瞬間、和子の顔がピクリと動きました。そして、次の瞬間には彼女の怒りが爆発しました。「何度も呼んだのに来なかったあなたが悪いんでしょ!」と、普段は温厚な和子が鋭い口調で言い返してきました。

そこからお互いに言い分をぶつけ合い、どちらも引かず、ついに無言の冷戦状態に突入しました。私は「俺だって仕事で疲れてるんだ!」と、和子の怒りを無視するような言い訳を口にし、和子は「もう知らない!」と突き放す。そんなやりとりの後、家の中は一気に冷たい空気に包まれました。

そんな冷戦状態の最中、数日後に私は足元の段差に気づかずに転倒し、右手を強打しました。その痛みは尋常ではなく、病院に運ばれると診断結果は「骨折」。ギプスを巻かれ、数週間は安静にするよう言い渡されました。

帰宅してから右手が使えないその不便さを思い知りました。シャツのボタンを留めるのも、歯を磨くのも一苦労。左手だけではどうにもならないことが多く、特に困ったのが風呂です。片手では背中が洗えず、どうしたものかと途方に暮れていました。

意を決して和子に頼むしかありません。「悪いけど、風呂の手伝いをしてくれないか?」

和子はちらりと私を見たものの、何も言わずに無視。その態度に少し腹が立ちましたが、自業自得だという思いもあり、何も言い返せませんでした。

そんな状況で浴室に入ると、やはり困るのは背中を洗う時。なんとか工夫しようとしても、骨折した右手が動かない以上どうにもなりません。途方に暮れていると、ガラリと浴室の扉が開き、和子がタオルを持って立っていました。

「仕方ないから手伝ってあげるわよ。」投げやりな口調ではありましたが、その言葉にどれだけ救われたか分かりません。

和子は特に何も言わず、私の背中にタオルを当て、力強くゴシゴシと擦り始めました。その手つきが、どこか怒りを込めているようにも感じられ、私は「ああ、まだ怒っているんだな」と思いながらも、それを拒むことができませんでした。

背中を擦られていると、不意に和子がぽつりと言いました。「昨日のこと、反省してるの?あなたが呼んでるのにすぐ来なかったのが原因でしょ?」

その言葉に、私は一瞬戸惑いました。どう答えればいいのか分からず、「まあ…」と曖昧にごにょごにょとごまかそうとしましたが、それが更に和子の逆鱗に触れたようです。

突然、和子の手が私の「あそこ」をギューッと握り引っ張ったのです。思わず「いたたたたー!お、おい!」と大声を出してしまいました。

「早く謝らないからよ」と言いながら、和子はそのまま私を睨みつけまだ引っ張っています。慌てて私は「悪かった!ごめん!俺が悪かったよ!」と必死に謝りました。

その瞬間、和子の表情がふっと緩み、「分かればよろしい」と一言だけ言い手を放してくれました。その言葉に、私は心の中で何度も「ごめん」と呟きながら、ようやく和子の手助けを素直に受け入れることができるようになりました。

それからの日々、和子は毎晩のように風呂場で私の体を洗ってくれるようになりました。最初のうちは恥ずかしさや気まずさがありましたが、回を重ねるうちに、次第にその感覚は薄れていき、代わりに感謝の気持ちが大きくなっていきました。

「こんな不器用な俺を助けてくれるのは、和子しかいないんだな」と思うと、彼女の存在がこれまで以上に大切に感じられました。和子も最初は「仕方ないから」と言っていたものの、最近ではどこか楽しそうな様子で、「ほら、じっとしてて」と笑顔を見せることが増えました。

ある日、ギプスが取れた後のことでした。本当は右手もだいぶ動かせるようになっていたのですが、私は甘えたくて「まだ不便でさ」と和子に言ってしまいました。

それを聞いた和子は、「嘘ついたらまた引っ張るよ」と冗談交じりに笑いました。その一言に、私たちの間に冷たく漂っていた空気が完全に溶けたように感じました。こうして少しずつ、和子との会話が増え、笑い声が戻ってきたのです。

数週間後、ふと私は思いつきました。「今度は俺が洗ってやるから一緒に入ろう」と提案してみたのです。しかし、和子は即座に「嫌よ」と笑いながら断りました。

仕方なく一人で風呂に入っていると、突然扉がガラリと開き、なんと和子が入ってきたのです。驚いて振り返ると、和子は少し照れたような顔をしながら「今日だけよ」と一言。

その言葉に、私は思わず顔がほころびました。そんな私の顔を見た和子は呆れたように「バカな顔してるわね」と笑いましたが、その笑顔には柔らかさと温かさがありました。

湯船に二人で浸かりながら、私は改めて和子に感謝しました。「いつもありがとう。本当に助かったよ。これからも、ずっと一緒にいような。」

和子は照れ隠しに「何それ、大げさね」と言いましたが、その声には嬉しさが滲んでいました。

それからの毎日、私たちの家には穏やかな空気が流れるようになりました。昔のように些細なことでケンカすることもありますが、それすらもどこか心地よく感じられるほど、和子との関係は温かいものに変わりました。

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