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許されない恋 

木漏れ日が舗道を温かく照らす午後、街角の小さなカフェにて、久しぶりに二人は再会した。
彼女は心臓の鼓動を抑えきれずにいた。
彼と再びこうして向き合うなんて、想像もしていなかった。
彼もまた、同じように戸惑いを隠せない様子だった。
二人の間に流れる空気は、かつての熱を帯びているようで、それでいてどこか新鮮だった。

彼女の名は美穂、60代に入るというのに、その瞳は若々しさを失っていない。
彼、健一もまた、歳を感じさせない温かな眼差しを美穂に向ける。
かつて二人は若き日に恋に落ちたが、時の流れは彼らを離れ離れにした。
それぞれが家庭を持ち、生活を営んできた。
しかし、運命は彼らを再びここに導いた。

「美穂さん、久しぶりですね。」健一の声はやはり温かく、懐かしい響きを持っていた。

「健一さん、本当に久しぶりです。」美穂の声は、彼女自身でも驚くほどに震えていた。

カフェの中は穏やかな午後の光に満たされており、周囲のざわめきが遠く感じられる。
二人の間には、言葉にできない多くの感情が溢れていた。
若い頃の情熱、時の流れ、そして今、再び目の前に現れた互いの存在。
戸惑いながらも、どこかで彼らはこの瞬間を待ち望んでいたのかもしれない。

健一は美穂の手をそっと握り、彼女の目をじっと見つめた。
「美穂さん、あの時、僕たちは若かった。
いろんな選択があったけど、僕たちはそれぞれの道を選んだ。
でも、ずっと心のどこかで、美穂さんのことを…」

美穂は健一の言葉に心を揺さぶられる。
彼女もまた、過去の選択に何度も思いを馳せた。
家庭を持ち、子供たちを育て上げ、今はそれぞれの人生を歩んでいる。
だが、彼の存在はいつも心の片隅にあった。

「私もです、健一さん。でも、私たちにはもう…」

健一は美穂の言葉を遮った。
「美穂さん、私たちはもう若くはない。でも、だからこそ、今、この瞬間を大切にできるんじゃないかと思うんです。過去を悔やんでも始まらない。私たちには、これからの時間がある。」

美穂は健一の真摯な眼差しに心を打たれた。彼の言葉は、彼女の中に新たな希望の火を灯した。確かに、彼らの前にはまだ時間がある。そして、その時間をどう生きるかは、彼ら次第だった。

「健一さん、私たち、これからどうすればいいんでしょうか?」

「一緒に、新しい一歩を踏み出しませんか?あなたと一緒なら、どんな未来でも迎えられる気がします。」

二人は互いの手を握りしめた。
それは新たな始まりの誓いだった。
戸惑いながらも、彼らは互いを深く信じ、未来への一歩を踏み出す勇気を持った。
それは決していけないことではない。
ただこれからの一歩が険しくて難しいことを再認識する旅の始まりとなったのだった。

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