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この年になっての夫婦交換

シニアの体験シニアの恋

私の名前は美智子、60歳のパートタイマーです。夫の修とは35年連れ添い、二人の子どもを育て上げました。ですが、子どもたちが生まれてから、私たちはいつの間にか「レス」になってしまいました。気がつけば、もう20年近くも夜の営みはありません。それでも、私の心の中では、今でも夫に女性として見てほしいという願望が消えないんです。でも、どうも彼にはその気がないように感じていました。

そんなある日、親友の和子と久しぶりにランチをしました。和子とは高校時代からの付き合いで、今でも時々会ってはお互いの近況を報告し合います。その日も、いつものように他愛もない話から始まったのですが、ふと和子が「美智子、最近、夫婦の仲はどう?まだちゃんと愛し合ってる?」と聞いてきたのです。

私は一瞬言葉に詰まりました。60歳を超えて、そんな話をするのもどうかと思いましたが、和子はまるで年齢を感じさせないほど生き生きとしていて、60歳とは思えないほど若々しかったのです。「正直に言うと、もう何年も夜の営みなんてないわ…」と打ち明けると、和子は少し驚いた顔をしました。

「そんなに長い間レスなの?」と和子に聞かれ、私はただ頷くしかありませんでした。彼女はため息をつきながら、私の手を優しく握りしめて言いました。「それはダメよ、ちゃんと夫と向き合ってる?私たち夫婦は今でも愛し合ってるのよ。年齢なんて関係ないわ。でも、長い間レスだと、気持ちも冷えてしまうわよ。しなくても良いから、ハグだけでもしてみて。」

その時、私は自分が本当に夫との関係に無頓着になっていたことを痛感しました。和子はさらに続けました。「私たちも一時期、夫婦関係が冷めかけたことがあったの。でもね、その時に知り合いと2週間夫婦を交換したのよ。」

「交換?」私は驚きと戸惑いでいっぱいになりました。「そんなこと…」と声を潜めて言いましたが、和子はにっこり笑って、「分かるわよ、その気持ち。最初は私も抵抗があった。でも、それで夫との関係が良くなったの。本当に、試してみてよかったって思ってるの。」と話しました。

私はその提案に迷いと恐れが入り混じった感情を抱きました。夫が他の女性と過ごすなんて…。でも、和子の言葉には説得力がありました。「もし本気で夫ともう一度愛し合いたいと思うなら、一度考えてみてもいいかもしれないわ。」その言葉が、私の心に深く響きました。

その夜、私は意を決して夫に和子の提案を伝えました。夫は最初、驚いたように目を見開いていましたが、しばらくの沈黙の後、「もしそれで美智子がいいのなら…」と、静かに頷いてくれました。私たちは、長年抱えてきたこの問題に対して、勇気を出して一歩を踏み出すことに決めました。

和子が紹介してくれたのは、たかしさんとその奥さんの裕子さんという夫婦でした。たかしさんは60歳、裕子さんは52歳で、彼らもまた私たちと同じようにレスに悩んでいたそうです。最初はお互いにメールをやり取りしながら、少しずつ親しくなっていき、ついに直接会うことにしました。

その日、私たちはレストランで夕食を共にすることになりました。お互いに納得ができれば、その後はパートナーを交換して2週間一緒に過ごすという約束です。レストランに向かう途中、私の胸には緊張と不安、そして少しの期待が入り混じっていました。

レストランに着くと、たかしさんと裕子さんはすでに到着していました。「こんにちは、初めまして。今日はよろしくお願いします。」何度もメッセージを交換していましたが、実際に会うのはこれが初めてでした。お二人は私の想像以上に仲が良さそうで、そんな彼らもレスで悩んでいるという事実に少し不思議な感覚を覚えました。

夫の修を見ると、彼も少し緊張しているようでしたが、相手の二人と話しているうちに、少しずつリラックスしていったようです。私たちは食事をしながら、互いの悩みを率直に打ち明けました。少しずつ心を開くことで、緊張が解け、同じ悩みを持つ者同士だからか親近感が生まれていきました。

裕子さんが、「私たちももう何年もなくて、本当に寂しく感じていたんです。」と話し始めると、私はその言葉に深く共感しました。「その気持ち、痛いほどわかります。私も同じで、夫が私を女性として見てくれないような気がして…」と、思わず正直な気持ちを吐き出しました。

夫もまた、重い口を開いて話してくれました。「僕も美智子には申し訳ないと思っていたけど、お互い年を取ると、どうしていいか分からなくなってしまって…。」その時、裕子さんが柔らかく微笑みながら言いました。「同じ悩みを持つ人がいると、少し安心しますね。よろしくお願いします。」

こうして、私たちは来週から2週間、夫婦を交換することになりました。私の胸には期待と緊張が渦巻いていましたが、それでもこれが夫との関係を見つめ直す良い機会になるかもしれないと感じていました。

いよいよたかしさんが私の家にやって来る日が訪れました。「おかえりなさい。」そう言って出迎えると、たかしさんは夫よりもずっと物腰が柔らかく、気遣いのある人でした。普段はどうか分かりませんが、率先して洗い物などの家事を手伝ってくれる姿はとても新鮮で、私は彼に自然と惹かれていきました。

もちろん、すぐに夜の行為に及ぶようなことはありませんでした。最初の夕食時に、たかしさんと今後どうするかをきちんと話し合いました。そして、自然な流れでそういう関係になれば、その時はそうしようということになりました。

たかしさんとの生活はとても新鮮で、私にとって楽しいものでした。そして、一週間が過ぎた頃、彼から優しくアプローチされました。緊張していた私に、たかしさんは穏やかな声で話しかけてきました。「美智子さん、今だけは旦那さんのことを忘れてください。」

その優しい言葉に、私は少しずつ緊張が和らいでいきました。「ありがとうございます、たかしさん。どうぞよろしくお願いします。」彼は私を優しく抱き寄せ、そっと唇を重ねてきました。その瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じました。何年も忘れていた男性のぬくもり。夫とは違う、たかしさんの静かで繊細な愛し方が、まるで穏やかな波が私の心をそっと包み込むようでした。

「美智子さん…」その優しい声に、私は何かが弾けるような感覚を覚え、彼の背中に腕を回して強く抱きしめました。たかしさんは私を寝室へと導き、私たちは静かにお互いを求め合いました。

翌朝、目を覚ますと、たかしさんはすでに起きていて、優しい微笑みを浮かべながら私を見つめていました。「おはよう。よく眠れましたか?」と彼が穏やかに尋ねました。私は少し恥ずかしくなりながらも、「ちょっと寝不足です」と答えました。昨夜の余韻が残っていたせいか、彼の優しさが胸に染みて、なんだか心が温かいままでした。

その後、2週間の間にたかしさんと3回ほど関係を持ちました。彼との時間はとても心地よく、私が忘れていた「女性としての自分」を少しずつ取り戻していくような感覚がありました。それでも、心の中では、夫に無性に会いたいという気持ちが強くなっていったのです。それがたかしさんにも伝わったのか、「僕も同じです。妻ともう一度向き合いたいと思っています」と彼が静かに告げてくれました。

そして、交換期間が終わり、夫が家に帰ってくる日がやってきました。私は久しぶりにきちんと化粧をして、洋服も整えて、夫の帰りを待ちました。何年ぶりでしょう、こんなに夫を待ち遠しく感じたのは。

「ただいま、美智子」と玄関から聞こえてきた夫の声に、私は少し緊張しながらも、心のどこかでほっとしました。夫も、どこかぎこちなく、私たち二人の間には少し気まずい空気が流れましたが、それでもお互いに微笑んでいました。

「美智子、ありがとう」と夫が少し照れたように言った時、私は不意に戸惑いを覚えましたが、「私も…ありがとう」と素直に答えました。この2週間の夫婦交換は、私たちにとって新しい刺激を与え、互いの存在の大切さを再認識させるものとなりました。

「どうだった?」と夫が私の手を取って尋ねました。「うん…あなたに会いたかったわ」と私は、心からの気持ちをそのまま口にしました。夫も「そうか、俺もだよ」と言いながら、私を優しく抱きしめてくれました。夫に抱きしめられたのは何年ぶりだったでしょうか。(ああ、この感覚…落ち着くなあ)と、私は夫の胸に顔をうずめ、その温もりを久しぶりに心から感じました。

そのまま二人で寝室へと向かい、長い間忘れていた情熱が再び蘇りました。もちろん、若い頃のようにはいかないけれど、それでも夫の温もりを感じることができることに、私は幸せを再認識しました。

その後、私たちは以前のような夫婦関係を取り戻すことができました。レスだった日々は過去のものとなり、今では毎日ハグをすることが日常の一部になりました。夜の方は、年齢のせいもあり月に数回程度ですが、それでも再びお互いを求め合うことができる喜びを感じています。あの2週間が、私たちにとって残りの人生を大きく変えるきっかけになったことを、今振り返っても本当にそう感じます。

そして、たかしさんと裕子さんからも連絡があり、「またいつかお会いしましょう。今度は友人として飲みに行きましょう」とメッセージがありました。彼らもまた、夫婦としての関係が改善されたとのことでした。私たちも、あと寿命までの約20年、新しい形で夫婦として過ごしていけたらと信じています。これからも夫婦としてお互いを大切にしながら、新しい思い出を二人で築いていきたいと心から願っています。

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