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普通って何なのでしょうか。60過ぎても

シニアの体験シニアの恋

作:シニアの恋愛経験値は60歳から

私は鈴木悦子、今年で59歳になります。人生というのは本当に早いもので、夫とは高校時代からの付き合いで、もう40年以上も一緒に過ごしているんだなと実感します。彼は61歳。去年まで勤めていた会社を退職し、今は自営業で配達の仕事をしてくれています。年金をもらえるようになるまで数年働かないという訳にもいかなかったので、夫が働いてくれて感謝しています。もちろん夫だけではなく私もパートに出ています。将来的に年金がもらえるようになっても年金だけでは厳しいと思うので、働ける間は働いておこうと思います。だからこそ、何も言わずにこうして働いてくれる夫には心から感謝しているのです。

住宅ローンは退職金で払い終わりましたが、思っていた以上に退職金が少なく将来に不安を持っています。今でこそ夫婦二人で暮らしていますが、つい先月までは娘が孫を連れて帰ってきていました。娘は旦那が単身赴任で東京勤務だったため、一緒にはついて行かず私たちと一緒に暮らし子育てをしていました。それが5年も続いていたのです。かなりにぎやかでした。それが旦那が急に海外勤務になるということで一緒に海外に引っ越していきました。やんちゃ盛りの子供たちがいなくなり、我が家は急に別の場所かのように静かになってしまいました。私も新婚当初は義両親との同居だったので、夫と二人暮らしは先月からが初めての出来事なのです。二人きりになるとシーンという時間に耐えられなくなり、どうしてもテレビの音量を大きくしてしまいました。24歳で子どもたちを出産してから、夫婦だけの時間がこれほどまでぎこちなく感じるとは思いませんでした。

 そんなある日、布団に入ってウトウトしていると、隣で寝ていたはずの夫が突然布団に入ってきました。「えっちゃん、久しぶりにいいか?」と囁きました。えっちゃんなんて何年ぶりに言われたでしょう。その言葉に、私は一瞬何のことかわからずに戸惑ってしまいましたが、夫は私の上に覆いかぶさってきました。こんな年になってまさか、とは思いました。最後にそうしたのは45歳くらいだったと思います。それが今頃になってどうして…。

もちろん若い頃のような動きではありませんでした。私がどうしたらいいのかと思っていると、彼は満足そうに自分の布団に戻りました。それからは1週間に一度のペースで夫からのお誘いが続きましたが、正直に言うと、私はその行為に快楽を感じることができませんでした。それでも、関係がぎくしゃくするのが嫌で、夫の誘いを断ることはどうしてもできませんでした。

 若い頃から私自身は、あまり行為自体はしてもしなくてもどちらでも良いという感じでした。もちろん愛されているのを感じますし、子どもも欲しかったのでしていたという感じです。でも、今はただただ夫を満足させるだけ。どうして昔のように愛されていると感じられないのでしょうか。夫のことは今でも愛しているつもりですが、それは本当に女としての愛なのか、ただの情に過ぎないのではないかと考えると、不安が募ります。そんなことを考える自分がどうしようもなく嫌になりました。

夫が要求しだしてから数週間が経った頃、ついに夫が「もしかして、嫌だったか?」と尋ねてきました。私の反応が悪いのが気になったのか、どこか戸惑いがあったのかもしれません。そこで嘘でも「ううん、何も無いよ」と嘘をついてしまいました。私の表情を察した夫は「そうか、ごめんな。」と謝ってきました。私はそこで自分の気持ちを夫に出せればよかったのですが、何も言えませんでした。それ以来夫は私を誘ってくることは無くなりました。どこかホッとしていましたが夫に申し訳ない気持ちで一杯でした。
ただ、それからというもの夫との関係がギクシャクしてしまいました。
来週は私の60歳の誕生日です。さらに結婚記念日なんです。私はお詫びの気持ちを込めて夫にごちそうを作ろうと準備していました。朝から買い物と準備で大忙しでした。
久しぶりにメイクもしました。夫の為に何かをするなんて久しぶりでした。なんだか昔を思い出すようで楽しい準備期間でした。
「ただいまー」夫が帰ってきました。なんと夫は花束とケーキを持っていました。
「誕生日おめでとう。いつもありがとう」夫の言葉に私は思わず泣いてしまいました。ああ、夫はちゃんと私のことを見てくれている。私もちゃんと向き合わないといけないなと思いました。「うわぁ、豪勢な食事だな」 「ありがとう、えっちゃん」 「あのワイン、空けちゃおっか」と夫が定年時に頂いたちょっと高級なワインを出してきました。この日は久しぶりに若い頃に戻ったかのように胸がドキドキし楽しい食事でした。食事後ワインの力もあり、私は夫にあのことを話しました。
正直どうしていいのか戸惑った事、こんな歳なのにしてもいいのか、私のこんな体にも不安があったことなどを全て話しました。
すると夫もいろんなことを話してくれました。自分でも調べたりしたらしいのですが、お世話になっている人と飲みに行った時にアドバイスをもらったそうです。その方は夫よりも2つ年上の方なのですが、現在でも奥さんとラブラブな関係で今でも新婚のような毎日を送っているそうです。この型によると老人は老人らしく夫婦それぞれの営みの方法を見つけないといけないよとアドバイスをされたそうです。奥さんとちゃんと話し合って君たちのルールを決めなさい。60歳なんてまだまだ若い若い。世界には60歳超えて子どもを産んだ人もいるんだからとおっしゃっていたそうです。
行為というのは大切なコミュニケーションなんだよともおっしゃていたそうです。
そういわれて私はハッとしました。私は自分から夫の欲の発散の為にと決めつけていたことを反省しました。

あの日、夫と話し合えたことにより劇的に関係が変わりました。二人での生活が寂しく感じていたのが急に二人での生活じゃないと嫌になるくらいでした。
たまに近くに住む親せきが遊びに来るのですが、夫との時間を邪魔されてるとさえ思えるほどでした。
あれから私たちは、ちゃんとルールを決めました。お互いの気持ちをはっきりと出すこと、そして定期的にくっ付いて寝る事にしました。
行為自体が始まると私自身も体に気を遣うようになり、パートの同僚からキレイになったねと言われるようになりました。
これからいつまで元気で過ごせるかわかりませんが、寿命まであと20年。元気なうちにいろんなことを二人で経験していきたいと思います。
まずは二人で旅行にでも行きたいと思います。
老後の関係は人それぞれだと思いますが、関係が上手くいっていることに越したことはありませんよね。
皆さんもイライラせずに相手のことを思って話し合ってみてくださいね。

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