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娘婿の勘違いで大変なことに…

シニアの体験シニアの恋

作:シニアの恋愛経験値は60歳から

私は、夫と娘の真由美、婿の圭吾くんと一緒に温泉旅行に出かけることになりました。この旅は、検査入院から退院した夫の淳史が「最後の思い出に」と提案してくれたものでしたが、真由美たちにはまだその理由を伝えていません。車の中では、サービスエリアに立ち寄りながら、みんなで楽しい会話に花を咲かせました。そんな穏やかな時間の中で、私はふと、心の奥底に寂しさを感じてしまいました。

旅館に着くと、私たちの部屋は広くて豪華な部屋を夫が用意してくれていました。真由美も圭吾くんもとても喜んでくれて、私はその様子を見て少し安心しました。お昼を過ぎた頃、部屋の準備がまだ整っていなかったので、4人で旅館の周りを散歩することにしました。足湯に浸かり、地元のお土産を買い、温泉卵を楽しむ、そんな穏やかな時間が流れていきました。

部屋に戻ると、夫が私にこっそりと「後で話があるんだ」と告げました。その言葉に少し不安を感じたものの、私はその不安を顔に出さないよう努めました。夜になり、みんなで温泉に入りました。私が髪をアップにして出ると、圭吾くんが一瞬私を見つめているのに気付きました。少しだけドキッとしてしまった自分が恥ずかしくて、すぐに気持ちを切り替えました。

夜が更け、私はなかなか寝付けず、もう一度温泉に入りました。ゆっくりとお風呂に浸かり、部屋に戻ると、夫もいなくなっていました。真夜中だったので電気を消して待っていたのですが、そのまま寝てしまっていたようです。ふと気が付くと、誰かが私の上に覆いかぶさっていました。夫が「後で話がある」なんて言うから、私はその瞬間が来たのだと思いました。彼も私も、もう長くはないことを感じていたのでしょう。かなり久々のお誘いでしたが、最後の思い出として私は彼を受け入れました。そのまま私は浴衣を脱がされ、愛し合いました。真っ暗な暗闇の中、彼の動きは激しく、少し違和感はあったのですが久々の私は少し燃え上がってしまうほどでした。一息ついた後お水を飲もうと明かりをつけると、そこにいたのは何と圭吾くんだったのです!「何してるの!」と、私は驚いて彼を思わず蹴り飛ばしました。圭吾くんはかなり酔っているのか真っ赤な顔をしていました。が、すぐに自分の誤りに気づき、謝りながら部屋を飛び出していきました。私はしばらく呆然としていましたが、ようやく落ち着きを取り戻し、明かりを消して布団に潜り込みました。

私は、夫と勘違いして娘婿と体の関係を持ってしまったのでした。その後、夫がお風呂から帰ってきて話しかけてきましたが、私は寝たふりをするしかできませんでした。

翌朝、朝食の席で圭吾くんと目が合いましたが、彼は目をそらし、私も普通に振る舞おうと努めました。真由美と夫が席を離れた時、圭吾くんが私に「昨日のことは言ってないですよね?」と小声で聞いてきました。「言えるわけないじゃない!」と私は答えましたが、その後の彼の態度には少し緊張感が漂っていました。

旅行から帰ってきた翌日、夫は再び病院に入院しました。旅行の帰り際に、娘たちにも夫の現状を伝えました。もう長くはないことを…。娘たちは驚いていましたが、特に圭吾くんはなんてことをしてしまったのかと、青ざめた顔をしていました。娘がお風呂に入っている時に、圭吾くんが私に近づいてきました。彼は「ごめんなさい」と、半泣きで謝罪してきましたが、それが取り返しのつかないことだと、私たちは痛感していました。

その後の生活は、私にとっても一層苦しいものとなりました。夫との残された時間はたったの2週間だったのです。そのまま亡くなってしまいました。最後はあっけなかったです。そして最後の最後にこんな過ちを犯してしまったことを後悔してもしきれません。圭吾くんもまた、家の中に微妙な緊張感が漂う中で過ごしているようでした。私たちの間に生じた一瞬の過ちが、消えることなく心に重く残っていたのです。

ある夜、私は眠れず、布団の中で窓の外に広がる夜空をぼんやりと眺めていました。月の光が薄く照らす庭を見つめながら、私は心の中でひとり、夫に謝りました。「ごめんなさいね、あなたの最後の思い出をこんな形にしてしまって…」とつぶやいたその瞬間、涙が止めどなく溢れてきました。

翌朝、真由美と圭吾くんはいつものように朝食を取っていましたが、私の心はここにあらずといった感じで過ごしていました。朝食後、真由美が「お母さん、今日は気分転換に一緒に買い物に行かない?」と優しく誘ってくれました。その優しさに、私は少しだけ救われた気持ちになりました。「ええ、行きましょう」と微笑んで答えましたが、その笑顔がどれほどぎこちなかったか、自分でもわかっていました。

日が経つにつれ、私はますます孤独を感じるようになりました。夫がいない家は広すぎて、心の中の穴を埋めることはできませんでした。圭吾くんとの間には、言葉にできない重苦しい空気が流れていました。

そして、ある日、真由美が私にこう言いました。「お母さん、私たち、引っ越しすることにするね。お母さんには迷惑かけたくないし、私たちも新しい生活を始めた方がいいと思って…」その言葉に、私は胸が締め付けられる思いでしたが、反対する理由は何もありませんでした。

「そうね、それが一番いいかもしれないわ」と、私は静かに答えました。圭吾くんも何も言わずにうなずき、真由美に同意していました。こうして、娘と婿が家を出ていく日が近づいていきました。私は再び一人きりになることを覚悟しましたが、その孤独が以前とは違う、深い寂しさを伴うことを感じていました。

最後の夜、真由美と圭吾くんが荷物をまとめている時、私は自分の部屋で静かに過ごしていました。ふとした瞬間、夫との思い出が蘇り、彼の写真を手に取りました。「お父さん、ごめんなさいね」と再びつぶやき、涙がまた溢れてきました。

翌日、真由美と圭吾くんが家を出る時、私は玄関で二人を見送りました。「またいつでも帰ってきてね」と微笑みながら言いましたが、その声はどこか震えていました。真由美は私を抱きしめ、「お母さん、ありがとう」と言い、圭吾くんも「今までお世話になりました」と頭を下げました。

二人が家を出て行くと、私は再び一人になりました。静まり返った家の中で、私はしばらくの間、立ち尽くしていました。そして、夫との思い出を胸に抱きながら、新しい一歩を踏み出す覚悟を決めました。夫との時間、そして娘たちとの短い同居生活は、私にとってかけがえのない思い出です。それでも、私はこの家で一人、再び歩き始めるしかありません。そして私が犯した過ちを抱えながら、それでも前に進んでいく決意を固めました。

家の中には、夫の温もりと共に、私自身が作り上げた過去の影が残っています。それを乗り越えるには時間がかかるでしょう。それでも、私は生き続けます。夫が残してくれた最後の思い出を胸に、これからの人生を少しでも明るくするために。

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