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この歳でも妻のヤキモチが可愛すぎます

シニアの恋愛は60歳からチャンネル様シニアの話

私の名前は新田信二、60歳になりました。結婚してからもうかれこれ38年ほどになるでしょうか。子どもたちも独立し、今では5人の孫までいます。今は妻の真帆と二人で穏やかで静かな日々を過ごしています。希望すれば65歳まで働くことは出来たのですが、先日私は妻の勧めもあり60歳で会社を退職しました。友人たちからはまだまだ働けるでしょと言われたり、定年延長を勧められたりしましたが、真帆は「もう十分頑張ったからゆっくりしていいんだよ」と私を退職へと導いてくれたのです。私は「年金が入るまで生活が大変だろう」と心配したのですが、彼女は「ちゃんと管理しているから大丈夫よ」と笑顔で答えてくれたのでした。

退職してからは、真帆が「旅行に行ったり、買い物をしたり、今までできなかったことを一緒にしたいの」と積極的に私を誘い出してくれました。彼女は常に私と二人で行動するのが何よりも楽しいらしく、そんな嬉しそうな妻を見るのが私のささやかな楽しみになりました。もともと仲の良い夫婦ではありました。夫婦の営みもつい数年前まであったくらいです。ただ、それでも時折、何とも言えない寂しさが心の片隅に広がることがありました。それは体力の衰えを感じ、若い頃の自分と同じように出来ないことに戸惑いを覚えることもありました。

そんなある日、妻に誘われて自治会の催しに私も初めて参加しました。普段は全く顔を出したことがないので、珍しさもあってか、私の周りにはおばさまたちが集まってきました。「新田さんの旦那さん?初めまして!」などと寄ってたかって集まってきてはワーワーと言われながら談笑し、思いがけず楽しい時間を過ごすことが出来ました。こういう時のおばちゃんパワーには圧倒されますね。催しの最中、ふと真帆が僕のほうを見ていたので、僕が目を合わせるとすぐに笑顔を返してくれました。ただ、その笑顔は、少しだけぎこちなく見えたような気もしていました。そして催し自体は和やかに終わり、真帆と一緒に家へ帰ったのですが、何故か妻の様子が少しおかしいのです。彼女は無言で家事をしていましたが、片付けなどの生活音がいつもより激しく、どこか怒っているように見えました。

「え?どうしたんだ?」と声をかけると、真帆はふいに顔を背けました。「別に。…ただ、楽しそうで良かったわね!」

「え?楽しそうって?」

「だって、みんなに囲まれて、鼻の下伸ばしてたじゃない。」

その言葉に、私は思わず苦笑しました。「いやいや、そんなことないよ。圧倒されてアタフタしていただけだよ」と否定しましたが、真帆の機嫌は直りませんでした。「もういいわよ」と言って、真帆はさっさとお風呂に入って寝てしまいました。

その後しばらくして、私もお風呂に入り、布団に入ったのですが、突然真帆が私の布団に潜り込んできました。彼女は半べそをかきながら、少しかすれた声で言いました。「ごめんなさい。やきもち妬いちゃったの。」

私は驚きましたが、思わず彼女の手をそっと握りました。「そんなことで怒るなんて、真帆らしくないな」と言おうとした瞬間、彼女がポツリとつぶやいたのです。

「私なんかもう60だし…信ちゃんに釣り合ってないんじゃないかと思っちゃった。」

その言葉が胸がドキっとしました。目尻に涙を浮かべた真帆の顔が、なんとも愛おしくてたまらなくなりました。その時です、私の体に異変が生じたのは。もう尽きたと思われた私のみなぎりが蘇ってきたのです。体の奥底から何かが昂ってきました。

「真帆、そんなこと考えるなよ。俺が好きなのは、ずっとお前だけなんだから。」そう言って彼女の手をもう一度握り、優しくキスをしました。互いの体温がゆっくりと伝わっていきます。キス自体ももう何年振りでしょうか。その夜、私たちは静かに寄り添い合い、いつかの若い日々を思い出すように、数年ぶりに互いの温もりを確かめ合いました。まるで何年も前に戻ったかのような、不思議な感覚でした。

その日以来、私たちは再び新たな形で夫婦の時間を楽しむことが出来るようになりました。妻が普段からマッサージをしてくれたり、長年働いて来た私の体を労わってくれたからだと思います。もちろん体だけじゃなく心まで妻はずっと癒してくれていました。もちろん若い頃のようにはいかないけれど、年齢を重ねた今だからこそできる、深く穏やかな愛情の形があるんだなと実感しています。真帆も以前よりもっと明るくなったようで、私の名前を呼ぶ声がどこか弾んで聞こえます。「信ちゃん」と呼ばれるたびに、少し照れくさくも、胸の中に温かい幸福感が広がるのを感じています。外でもこんな風に呼び合ったりするので正直周りの人は気持ち悪いかもしれません。それでも良いんです。これからは私も改めて、真帆のことを癒してあげたいと思います。

真帆がこれまでどれだけ支えてくれていたか、仕事に没頭していた日々、彼女は文句一つ言わず家を守り続けてくれました。その彼女に少しでも恩返しができるように、これからも彼女を大切にしていこうと心に決めています。

結婚して38年。残りの時間がどれだけあるかなんて、もう考えない。ただ、彼女と同じ景色を見て、季節の風を感じる日々が続けば、それだけで十分だと思えるのです。静かな家の中で、真帆がそっと私の名前を呼ぶたびに、胸の奥で小さな幸せの花が咲いているのを感じます。

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