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不倫旅行

いつまでも若く背徳裏切り
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平凡な日常の中で、私はずっと誰にも言えない秘密を抱えて生きています。

それは、不倫。しかも5年もの間、元同僚だった後輩の彼との関係です。ただ、これまで一線を越えたことは一度もありません。キスだけの、本当にピュアな関係。でも、それが許されるわけではないことも、罪だということも、ちゃんとわかっています。それでも、この関係が私の心を埋めていたのは確かです。

彼との関係が始まったきっかけは、ほんの些細なことでした。私の夫との結婚生活に、どうしても満たされない部分があったのです。夫が悪いわけじゃありません。彼は誠実で、優しくて、私のためにたくさん努力してくれました。でも、それでも私の心は満たされませんでした。夫婦としての距離感がどうしても縮まらず、寂しさを感じてしまったんです。

そんなとき、仕事の悩みを相談していた彼が、いつの間にかただの後輩ではなくなりました。彼は私の愚痴を聞いてくれ、さりげなく優しい言葉をかけてくれました。気づけば、彼の存在が私の支えになっていたんです。

それから5年。私たちは決して一線を越えずに、ただ心の支え合いを続けてきました。だからといって、この関係が正しいわけではありません。でも、そんな関係を続けていた私の中に、一つの衝動が生まれたんです――彼とどこか遠くへ行きたい、と。

そのきっかけは、清の何気ない一言でした。

「来週、1週間出張になったよ」夕食を食べながらの、ただの報告でした。でも、私の中に眠っていた欲望が、その一言で目を覚ましたんです。(私も旅行に行きたい)。危険すぎる計画だとわかっていました。それでも、彼と一緒に特別な時間を過ごしたい。そう思った瞬間、私の中で罪悪感と期待がせめぎ合い始めました。

でも、どうしてもこのチャンスを逃したくなくて、夕飯の後片付けをしながら、なるべく自然に切り出しました。

「あなたの出張中、私も友達と旅行に行っていい?」自分では平静を装っていたつもりでした。でも、声がわずかに震えてしまっていたのが、自分でも分かりました。もし清が疑ったらどうしよう。そんな不安で胸が締め付けられましたが、夫は意外なほどあっさりと「いいよ」と言ってくれました。

「たまにはゆっくり息抜きしてきたら?」

いつもの優しい笑顔でそう言われた瞬間、張り詰めていた緊張が一気にほぐれました。その場ではほっとしたものの、私の胸の奥には罪悪感がずっと残っていました。でも、それ以上に「もう後戻りはできない」という気持ちが強かったんです。

旅行の計画は、念入りに立てました。夫の出張先とは真逆の方向を選び、友人と一緒に行ったことにするための証拠も事前に準備しました。旅先での行動が夫に知られても不自然にならないよう、細かいところまで気を使いました。万が一、夫に疑われたらすべてが終わります。だからこそ、完璧な準備が必要でした。

そして、夫が出張に出る朝。いつも通り、玄関まで見送りました。スーツ姿の彼が「じゃあ、行ってくる」と小さく手を振ります。

「いってらっしゃい。気をつけてね」

そう言って笑った自分が、どこか遠い存在のように感じました。胸の奥に湧き上がる罪悪感をなんとか押し殺して、私は次の計画に向けて動き出しました。

彼と合流し、車で目的地に向かいました。助手席に座り、窓の外を流れる景色を見ていると、どこか現実味が薄れていくような気がしました。非日常に足を踏み入れたという感覚が、私の胸を高鳴らせました。ふと、彼がちらりと私を見て微笑みました。

「こうして旅行するの、なんだか夢みたいだね」

「そうだね……私も、ちょっと信じられない」

私はそう答えながら、胸の奥に居座る小さな不安を、気づかれないように隠しました。夫がこのことを知ったら、どうなるのだろう。そんな考えが頭をよぎりました。でも、それ以上に「この時間を逃したくない」という気持ちが強かったんです。

昼間は観光地を巡り、人気の少ないカフェでゆっくりとお茶を飲みました。山道を散策して、時折手を繋ぎながら笑い合いました。おそろいのキーホルダーを買い、写真も撮り合いました。これが普通の旅行なら、きっと誰もが微笑ましく見るようなカップルだったと思います。でも、この時間が特別であればあるほど、胸の奥で罪悪感が小さく痛んだんです。

夜、ホテルのスイートルームに着いたとき、すでにお互いを強く意識していました。5年間、一線を越えない関係で抑え込んでいた感情が、一気に押し寄せてくるのが分かりました。部屋の鍵を閉めた瞬間、彼がそっと振り向いて、私の目を見ました。

「やっと……ここまで来たね」

彼の声は静かで、でもどこか感慨深げでした。私はただ、小さくうなずくだけでした。その瞬間、彼がそっと私の頬に触れ、唇が重なりました。それまでのすべての理性がふっと消え去るようでした。ただただ、彼の温もりと幸せだけが胸の中に広がっていきました。

次の日の朝、目を覚ますと、私はまだ夢の中にいるような気分でした。隣で眠る彼の穏やかな寝顔を見て、心の中にふわりと温かいものが広がります。こんなに満たされた気持ちになったのは、一体いつ以来だったのでしょうか。

罪悪感はどこか遠くへ追いやられていました。朝の光がカーテン越しに差し込み、部屋全体が柔らかな色に包まれています。こんな時間が、永遠に続いてくれたらいいのに。そう思う自分がいました。

でも、心の片隅では、どこかで「終わりが近づいている」という思いが消えませんでした。

途中擬装用に東京駅で下ろしてもらい、駅構内のアンテナショップで夫へのお土産を選ぶことにしました。彼は「少し休んでくるよ」と言ってどこかへ行き、私は一人で店内を歩き回りました。

お土産を一つ手に取って、そのままふと顔を上げたとき、全身が凍りつきました。目の前にいたのは、夫だったのです。

「……え?」

声にならない声が喉から漏れました。夫も私に気づいたようで、こちらをじっと見つめています。その顔には、驚きがはっきりと浮かんでいました。

「あ、明子……お前、ここで何してるんだ?」夫の声は、いつもより少し低く、抑えたような響きでした。

「え、ああ、その……お土産をうっかり忘れててね……」

言い訳がとっさに出てこなくて、しどろもどろになりながら何とか言葉を絞り出しました。夫の視線が私を刺すように感じられて、全身から冷たい汗が噴き出すのが分かります。

「そ、そうか……。俺もだよ。お土産、買う時間がなかったからな」

夫もそう言いながら微かに笑いました。でも、その笑顔はどこかぎこちなく、いつもの夫らしくない何かが滲んでいました。まるで、夫も焦っているように見えたんです。

その場の空気が、まるで張り詰めた糸のように緊張感を帯びていました。夫の視線が一瞬、私の後ろに向いたのを感じました。私も慌てて振り返りましたが、そこに彼の姿はありませんでした。もしかして、彼の姿が夫に見られてしまったのではないか。そう思うだけで、心臓が嫌な音を立てました。

夫が本当に何かを疑ったのか、それとも自分の焦りをごまかすだけだったのか私には分かりません。ただ、その場の空気が明らかにおかしいことだけは感じました。

帰り道の電車の中、私は窓の外の景色をただぼんやりと見つめていました。夫と目が合ったあの瞬間の緊張感が、頭の中で何度も繰り返されていました。夫婦としての日常に戻らなければならないのに、どこかでその日常が崩れてしまうような気がして、胸がざわざわしていました。

夫は私の嘘に気づいたのでしょうか。彼の目に浮かんだ、あの微妙な表情が頭から離れませんでした。

家に勝手からの夫の声は、いつもと同じように優しくて、何も変わっていないように思えました。けれど、私の胸の奥では小さな嵐が巻き起こり続けていました。これから先、何が待っているのか、まだ私には分かりません。ただ、この静かな嵐がどこへ向かうのかを、恐る恐る見届けるしかないのです。

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