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夫が夫の友達と私をくっつけようと

シニアの体験シニアの恋

子供たちが巣立って、私と夫、二人きりの生活が始まりました。私の名前は真理子、59歳です。あの慌ただしかった日々が嘘のように、今は毎日が静かで、まるで時間が止まったかのように感じます。部屋に漂う空気は冷たく、まるで海の底にいるような感覚で、心の奥に寂しさが広がっていくのです。

「これが私の望んでいた生活なのだろうか?」と、ふと自問することがあります。子供たちを育て、家族を支え、あの頃は目の前のことをこなすのに精一杯で、自分のことなんて考える余裕もありませんでした。けれど、今はすべてが落ち着き、心の中にぽっかりと空いた穴を感じています。これから、ただ老いていくことが私の未来なのでしょうか。

夫は私より6歳年上で、長年、経営者として家族を支えてくれました。家でも穏やかで、私に対して不満を言うことはほとんどありませんでした。子供たちがいるときは、私たちは良い父親、良い母親として役割を果たし、共に過ごしてきたと思います。でも、子供たちが巣立った後、私たちの関係はどこか変わってしまったのです。食卓を囲んでも、話すことがなくなり、互いの存在が空気のように感じられるようになっていました。

最近、夫の様子が少しおかしいと感じることがあります。彼の視線がどこか遠くを見つめているように感じるのです。夜、ふと目が覚めると、彼が隣で眠らずに私のことを見つめていることがありました。その目には、言いようのない寂しさが滲んでいて、私はその視線から逃れるように目を閉じてしまいました。彼は、何かを隠しているのでしょうか。それとも、私が気づいていないだけなのでしょうか。

そんなある日、夫が珍しく嬉しそうに「友人の信二が来るんだ」と言いました。そのときの夫の表情は、まるで昔に戻ったかのように生き生きとして見えました。信二さんは、夫の古い友人で、私も何度か会ったことがあります。50代半ばで、背が高くて落ち着いた物腰の彼は、どこか影のある魅力的な人でした。久しぶりの来客に、私は少し張り切って夕食を用意しました。この家に久しくなかった「温もり」を、少しでも取り戻したいと願ったのかもしれません。

その夜、夫はいつもより親しげな笑顔で信二さんを迎えました。彼らは昔話に花を咲かせ、仕事の話で盛り上がり、私も自然と笑顔になっていました。こんなにも楽しそうな夫の姿を見たのは、いつ以来だったでしょうか。心の奥で、少し安堵している自分がいました。

「真理子さん、いつもありがとうございます。こんなに美味しい料理、久しぶりです。なんだか元気が出ますね」と、信二さんが私に向けて優しく声をかけてくれました。褒められることなんて、なかなか無いことなので、胸が少しときめいてしまいました。「そんなことないですよ」と返しながらも、心がふわっと温かくなったのです。

それから、信二さんが家に訪れることが増えました。夫が「また信二が相談に来る」と言い、彼を家に招くことが多くなったのです。信二さんは、私が抱える漠然とした不安や寂しさを感じ取ったのかもしれません。夫が席を外すと、信二さんと二人きりで話すことが増えました。彼は穏やかで、私の話に静かに耳を傾けてくれました。

「真理子さん、最近、何かお困りごとはありませんか?なんだか、元気がないですよね?」と、信二さんは優しく尋ねてくれました。その言葉に、私は一瞬、言葉を失ってしまいました。心の中に溜まっていた不安や孤独を、彼にどう伝えたらいいのかわからなかったのです。でも、信二さんの眼差しは温かく、私の心の奥に触れてくれるような安心感がありました。

「実は…」私はぽつりと口を開きました。「子供たちがいなくなってから、毎日が空っぽなんです。夫とも話すことが減って、何をしていいのか、分からなくて」

その言葉を聞いた信二さんは、静かにうなずきました。「真理子さん、それは自然なことですよ。ずっと家族のために尽くしてこられたんですから、今は少し自分を労わってあげてください。あなたは素敵な人です。もっと自信を持って、今の自分を大切にしてください」

彼の優しい言葉に、私は思わず涙が溢れそうになりました。心の奥に押し込んできた孤独や、誰にも言えなかった不安が、彼の前では少しずつほどけていくように感じました。

それから私は、信二さんの訪問を心待ちにするようになりました。彼と話すことが、私にとって唯一の心の支えになっていったのです。彼の言葉一つひとつが、私の心を温かく包み込んでくれました。夫に対する裏切りだと分かっていても、私はその気持ちを止められなかったのです。信二さんへの思いと、夫に対する罪悪感。その狭間で心は揺れ続けていました。

そんなある日、夫が急な出張で家を空けることになりました。一人きりで広い家にいると、どうしようもない寂しさが胸を締め付けました。そんなとき、信二さんから「寂しくないですか?」というメッセージが届き、私は反射的に「今夜、お茶でもどうですか?」と返してしまいました。

その夜、信二さんが家にやってきました。リビングで向かい合って座り、二人でゆっくりと話をしました。彼の穏やかな眼差しに見つめられ、私は今まで心の奥に押し込んでいた思いが、堰を切ったように溢れ出してしまいました。

「信二さん、私…あなたと一緒にいると、ほっとするんです。夫には申し訳ないけれど、あなたと過ごす時間が…」

そう言うと、信二さんは私の手をそっと取って、静かに握り返してくれました。その瞬間、私は抵抗することなく彼の手を握り返していました。今まで抑え込んできた孤独や寂しさ、愛されたいという渇望が一気に溢れ出し、私は泣いてしまいました。彼は何も言わず、私を優しく抱きしめてくれました。その胸の中で、私は声を殺して泣きました。彼の温もりが、私の心をそっと癒してくれるように感じました。

その後、私たちは何度か会うようになりました。夫を裏切っているという罪悪感に苛まれながらも、信二さんとの時間が私にはどうしようもなく必要だったのです。彼がいなければ、私はもうどうやってこの毎日を乗り越えていけばいいのかわかりませんでした。

そんなある日、信二さんが突然の告白をしました。

「実は、君の旦那さんから頼まれたんだ。真理子さんの気持ちがもし僕に向いたら君を幸せにしてほしいって。彼はもう君を満足させられないことを悔やんでいて、でも君には笑顔でいてほしいって、俺に話したんだ」

その言葉を聞いた瞬間、私は全身の力が抜けてしまいました。夫が私の幸せを願って、信二さんに頼んでいたなんて、信じられませんでした。

「どういうこと?」涙が止まりません。「あなたが私を幸せに…?そんなの、信じられない…」

信二さんは、私の手をそっと握りしめました。「君の旦那さんは、自分がもう君に愛情を注げないことに苦しんでいた。彼がどれだけ君のことを大切に思っているか、俺には分かったよ。だから、君を笑顔にすることが、彼にとって一番の望みなんだって」

涙が止まりませんでした。夫は、私のことを大切に思ってくれていたのに、私は彼を裏切り、信二さんに逃げ込んでしまったのです。夫のことを、私は何も理解していなかったのです。

その日、私は信二さんに別れを告げました。「今までありがとう。でも、私はやっぱり夫と向き合っていきたい」と言いました。信二さんは静かにうなずき、優しく微笑んでくれました。彼の瞳には、悲しみと諦めが混じっているようでした。

家に帰ると、夫が静かに私を迎えてくれました。私は涙をこらえながら「ごめんなさい、あなたを裏切っていたの」と打ち明けました。夫は何も言わず、ただ私を抱きしめてくれました。その胸の中で、私は声を上げて泣きました。こんなにも私を思ってくれていたのに、どうして私は気づかなかったのでしょう。

それから、私たちは少しずつ夫婦としての絆を取り戻していきました。簡単なことで

はありませんでしたが、夫はいつも私に寄り添ってくれました。信二さんとはもう会っていません。彼もまた、私たちを見守ってくれているのだと思います。

今、私は夫と二人、少しずつ歩みを進めています。まだ完全に取り戻せたわけではありませんが、それでも、彼と向き合って生きていこうと決めました。彼が私の幸せを願ってくれたように、私も彼と共に、穏やかな日々を過ごしていきたいと思います。

これからも時間をかけて、私たちの絆をもう一度紡いでいけると信じています。隣で静かに新聞を読む夫の横顔を見つめながら、私は小さく息をつきました。どれだけの時間が必要かは分かりません。でも、私はまた新しい一歩を踏み出そうと決めたのです。

いかがでしたか?夫を裏切ってしまった真理子さんのお話でした。

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