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20年ぶりに夫と交わりました…

シニアの体験シニアの恋

私の名前は文恵、58歳の主婦です。毎日、近所のスーパーでパートをしながら、ささやかな日常を送っています。私には、雄太郎という夫がいるんですが、彼の会社は65歳が定年退職のところ、去年60歳で早期退職をしました。そんなに急いで仕事を辞めなくてもいいのにと思いましたが、会社の事情やら本人の体調のこともあったので、まあ仕方なかったんだと思います。でも、正直言って、そこから私の苦労が始まったんです。

もともと夫は、家のことは私に任せっきり。私もそれが当然だと思っていました。だから、彼が毎日家にいるようになり、どう接していいか正直戸惑いました。娘たちもそれぞれ家庭を持ち、家を離れて久しい。リビングでぼんやりとテレビを見ている雄太郎の姿を見て、私は溜息をついた。かつて仕事に打ち込み、頼もしい夫だった彼が、今では気力を失い、まるで無気力な子どものようだ。

「これじゃ、家に一人子供が増えただけじゃないのよ……」

私は思わず口に出してしまっていました。娘たちが家を出てから、夫婦二人きりの生活に慣れることができずにいたんです。そんな私の気持ちを見透かしたのか、ある日、ご近所さんが突然うちにやってきて、「文恵さん、これ見て!」って、ゴールデンレトリバーの子犬を抱えて見せてくれたんです。もう、それはそれは可愛い顔で、ちょこんと座って、私を見上げてきました。その瞬間、思わず「可愛い……」とつぶやいてしまいました。

すると、「この子を、貰ってくれる人を探してるんです。文恵さんとこ、どうですか?」って言うんです。正直、驚きました。だって、犬なんて飼ったことないし、そもそもペットなんてこれまで考えたこともなかったんですから。でも、そのとき、夫がひょっこりと顔を出し、「おお、かわいいなぁ!うちで引き取ろうか!」って言い出したんです。

私はびっくりして、思わず「え、ちょっと待ってよ!」と制止しました。犬を飼うなんて簡単なことじゃないし、今までそんな話もしたことなかったのに。でも、夫は「俺も家にいるし、退屈だしな。これもいい機会かもしれない」なんて言って、なんだかやる気満々でした。

そんな夫の姿を見て、私は少しだけ考え直しました。退職してから元気を失っていた彼が、こんなにも嬉しそうにしている姿を見るのは本当に久しぶりだったんです。結局、私はそのまま押し切られる形で、ゴールデンレトリバーの子犬を引き取ることになりました。

その子犬に、雄太郎は「カイト」という名前を付けました。由来はなんだか、昔好きだった歌の歌詞から取ったとか言ってましたけど、まあ、特に深い意味はないみたいです。とにかく、カイトは家に来た初日から大暴れで、見るからにやんちゃな男の子で、すぐに家の中を駆け回っていました。

最初のうちは「可愛いなあ」なんて私も思ってましたけど、そんな気持ちはすぐに消え去りました。カイトはとにかくいたずらばかりで、お気に入りのクッションはかじられるし、新聞紙はあっという間にボロボロ。あげくの果てには庭の花壇を掘り返してしまい、私はついに「もう、いい加減にしてよ!」と叫んでしまいました。

でも、夫は「まあまあ、子犬だから仕方ないよ」と、呑気に笑うばかり。私は「そんな簡単なことじゃないんだから!」とイライラしました。私がパートに行っている間、家にいるのは夫なんだから、しっかりカイトの面倒を見てほしいのに、結局、私が帰ってくるまで何もしていないことがほとんどでした。

「どうして、私が全部世話しなきゃいけないの?」と、とうとう我慢の限界が来て、夫にぶつけました。彼は「ああ、俺もちゃんとやるよ」とは言うものの、どこか他人事のようで、なんだか虚しくなりました。

ある日、パートから帰ってきた私は、ふと目にした光景に唖然としました。その横でカイトがお菓子の袋をビリビリに破いて部屋中にお菓子が散乱しているのです。私は、もう言葉も出ませんでした。さらにそんなに騒がしいのにも関わらず夫はソファで寝ているのです。

「ねえ、あなたが犬を飼おうって言ったんでしょ?私ばっかりに押し付けて、何もしてないじゃない!」私はとうとう声を荒げました。夫はびっくりした顔をして、「いや、朝の散歩は俺がしてるだろ?」と反論しましたが、そんなことくらいで許されるはずがありません。

「朝の散歩だけじゃないのよ!カイトには食事だって、トイレの世話だってあるのよ!毎日毛の掃除も大変だし。それを私が全部やってるの、わかってるの?」と、思わず泣きながら叫んでいました。

「お前だって、カイトが可愛いって言ってただろ!」夫も負けじと声を荒げましたが、私にはそれが言い訳にしか聞こえませんでした。

「そんな問題じゃないの!あんたが責任持って世話するって言ったんでしょ?結局、全部私に押し付けてるじゃないの!」私は、これまで溜め込んでいた怒りを全部ぶちまけてしまいました。

その日は、私たちは結婚してから一度もしたことがないような大喧嘩をしました。私は、娘たちが家を出て行った後の寂しさ、夫への不満、そしてカイトを飼ったことでさらに負担が増えたことを、涙ながらにぶつけました。夫も、最初は私に反論しようとしていましたが、私の言葉に言い返すことができず、最終的には「ごめん」としか言えませんでした。

それからというもの、家の中は妙にぎこちない雰囲気になりました。私は、気まずさを感じながらも、カイトの世話を続けていました。雄太郎も、散歩だけじゃなく、私の負担を少しでも減らそうと食事、掃除など頑張ってくれていました。そんな彼の姿を見て、少しだけ心が落ち着いていくのを感じました。

数週間が経ち、家の中の雰囲気が少しずつ穏やかになってきた頃のことです。私は、いつものようにカイトのトイレのシーツを交換し、リビングでほっと一息ついていました。そのとき、夫がゆっくりと近づいてきて、「お疲れ様」と言いながらお茶を差し出してくれました。

「ありがとう」と私は答えましたが、心のどこかでまだわだかまりが残っていました。その夜、私が寝室に入ってベッドに横になっていると、夫が入ってきました。普段は別々の部屋で寝ている私たちが、同じ寝室で顔を合わせるのは本当に久しぶりでした。彼は少しだけ躊躇いながら、私のベッドのそばにやって来て、ぽつりと呟くように言いました。

「文恵、本当にごめんな……」

私は驚いて、夫の顔を見つめました。彼は真剣な表情で、私の目をまっすぐに見ていました。いつもは冗談めかしたり、はぐらかしたりすることが多いのに、そのときの彼は本当に心から謝罪をしているようでした。

「文恵に全部負担をかけてしまったんだと思う。カイトを飼うことだって、俺のわがままだったのに、結局、世話もほとんどお前に任せてしまって……」

私は、何も言えずに彼の言葉を聞いていました。夫は少しうつむきながら、続けました。

「お前があんなに怒ったのは、初めてだったからびっくりしたよ。俺が悪かった。反省してる。」

その言葉を聞いた瞬間、私の胸の中で何かが溶けていくのを感じました。これまで感じていた寂しさや怒りが、少しずつ和らいでいくような気がしました。涙が自然と溢れて、私は「もう、いいよ」と呟きながら、彼の手を握りました。

「私も、怒りすぎたわね。ごめんなさい。でも、これからは二人で、カイトの世話をちゃんとしようね」と言うと、夫は微笑みながら頷きました。

その夜、私たちは久しぶりに二人で寄り添い、20年ぶりに交わりました。昔の様にはいかなかったけど、彼が私を愛してくれていることに心が満たされて行きました。長い年月の間に忘れてしまっていた温かさが、心の奥底からじんわりと湧き上がり、まるで若い頃に戻ったかのような気持ちになれました。

それからというもの、私たちの関係は少しずつ変わっていきました。夫はカイトのことだけではなく、自分自身のことも自分で出来るようになってきました。最近は自分でささ身を買ってきてカイトの食事を作ったりもしています。少しずつ、お互いに思いやりながら、カイトと共に新しい日々を歩んでいくようになったんです。

カイトのおかげで、私たちは以前よりも健康的な生活を送るようになりました。毎日一緒に散歩をするようにもなり、体も心も元気になり、夫も私も、以前より少しずつ笑顔が増えていきました。

「カイトが来てくれて、本当に良かったな」と、ある日、夫が言いました。私は微笑みながら、「そうね。大変なこともあるけど、あの子がいなかったら、今みたいにお互いを思いやることもなかったかもしれないわね」と答えました。

今では、カイトは私たちにとってかけがえのない家族です。時にはいたずらもしますが、その無邪気な姿に癒され、笑顔をもらっています。夫もかなり自発的な生活になり、私たち夫婦はカイトと共に新しい生活を楽しんでいます。

この先、どんなことが待っているかわかりませんが、カイトと一緒に過ごす日々が、私たちにとって新しいスタートだと思っています。これからも、カイトと一緒に歩んでいく未来を楽しみにしながら、私たちは二人で新しい日々を生きていこうと、心に誓いました。

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