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誰にも言えない辛い秘密

シニアの体験シニアの恋

「夜が怖い」。そう言ってしまえば簡単ですが、これはそんな軽い言葉では片付けられないのです。毎晩、あの忌まわしい記憶が私を縛り付けてきます。眠れない夜が続く日々に、息が詰まりそうです。

「由美さん、また眠れていないの?」友人にそう指摘されたのは、これでもう何度目でしょうか。私が深夜の悪夢にうなされ始めたのは、息子たちの同居が決まったその日からでした。夜になると、あの恐怖が肌にまとわりつくように蘇ってきます。

私はもうすぐ還暦を迎える五十九歳です。これまでの人生を振り返っても、こんなに不安で押しつぶされそうな日々を過ごしたことは、あの時以来だと思います。私は夫の信二さんと三十五年をともに過ごし、互いに支え合いながら平穏な家庭を築いてきました。息子の健太も無事に大人になり、仕事も落ち着いて、最近はずっと心配していた結婚相手も見つかりました。「結婚する」と報告してくれたとき、私は心から嬉しかったのです。

その健太と、彼の素晴らしいお嫁さんである奈々ちゃんが、結婚後、新居を建てるまでの間、私たちの家で同居することになりました。奈々ちゃんは美しく、しっかりしていて、家事も仕事もそつなくこなす素晴らしい女性です。初めて彼女を紹介されたとき、私も信二さんも「こんな素敵な女性が息子に!」と驚いたほどです。正直、息子にはもったいないくらいの人だと思いました。

それでも、私はこの同居に対して一抹の不安を感じていたのです。息子たちと暮らせる喜びと、家族が増えることへの期待がある一方で、心のどこかに黒い雲がかかったような嫌な予感が拭えません。この不安の根源は、私の心の奥底に封じ込めた恐ろしい記憶にあるのです。

話は三十年ほど前にさかのぼります。私と信二さんが結婚したばかりのころ、私たちは信二さんの両親、つまり私の義父母と同居していました。あの時の私は、結婚したばかりで希望に満ち、義父母も優しく、少し緊張しながらも幸せに暮らしていました。ところが、義母が大病を患い、半年ほど入院することになったのです。

義母がいなくなってから、義父の私に対する態度が変わり始めました。それまでは穏やかで優しかったはずの義父の視線が、私を追いかけるようになり、言葉の端々に妙な色気を含むようになったのです。私は最初、それがただの気のせいだと思いたかったのです。義父が寂しいから、息子の嫁である私を娘のように見ているだけなのだと思っていました。しかし、現実は私の願望とは違いました。

義父は次第に、私の体に触れることが多くなり、そして、ある日、ついに私を半ば強引に関係を迫ってきたのです。

義父は私を押さえつけ、「誰にも言ったらだめだよ」と脅してきました。その時、私は恐怖で身体が凍り付き、声も出せず、ただ震えることしかできませんでした。何度も何度も拒もうとしましたが、義父は「この家から出て行ってもらうよ?」と私を追い詰め、私は恐怖に屈してしまいました。

義母が退院するまでの間、私は毎日、義父の慰み者にされ続けました。地獄のような日々だったのです。誰にも相談できず、信二さんにすら言えませんでした。義父の脅しに怯えながら、ただひたすら耐えるしかなかったのです。信二さんに「同居を解消してほしい」とお願いしたこともありましたが、彼は「親を看るのは長男の務めだ」と言って私の訴えを取り合いませんでした。義母が退院する日を、私は絶望の中でただひたすら待ち続けました。

そして、義母が退院し、ようやくその悪夢は終わったのです。義母が戻ってくると、義父の態度はすっかり変わり、まるで何事もなかったかのように穏やかな老人になりました。まもなく私と信二さんの間に健太が生まれ、義父はあの時の行いを忘れたかのように、孫を可愛がる優しいおじいちゃんになりました。しかし、私はあの出来事を一生忘れることはできません。義父が還暦を迎える頃、病気で亡くなったとき、私は少しほっとしたのを覚えています。

そんな過去を抱えているからこそ、息子たちとの同居にはどうしても不安が拭えません。もちろん、信二さんはそんなことをする人ではありません。彼は真面目で、義父とは全く違う人です。私だってずっと家にいますし、奈々ちゃんも仕事を続けると言っていますので、私と同じようなことが起きるとは思っていません。

でも――それでも!あの時の恐怖と苦しみが、今でも私を締め付けて離さないのです。あの時の私は、義父の脅しに屈してしまいました。誰にも相談できず、一人で戦っていました。でも、奈々ちゃんには同じ思いはさせたくないのです。彼女が私のような目に遭うのではないかと、不安でたまりません。

ある日、信二さんが楽しそうに言いました。「健太たちが来るまでに、準備を終わらせないとな」

「そうね……でも、本当に大丈夫かしら?」私は恐る恐る尋ねました。

「心配しすぎだよ、由美。奈々ちゃんはしっかりしてるし、君もいつも通りにしていればいいんだよ」と、信二さんの声は軽やかで、私の心配など全く理解していない様子でした。彼にとってあの悪夢は知らないことなのですから。

私はその言葉にかすかな安堵を覚えましたが、それでも心の奥底には黒い影が渦巻いていました。

夜、ベッドで目を閉じると、あの義父の冷たい手が私の体を這い回る感触が今でも鮮明に蘇ります。奈々ちゃんが、あの時の私のように苦しむ姿を想像してしまうのです。大丈夫、信二さんはそんなことをする人じゃない。奈々ちゃんだってしっかりしています。理性ではそう考えても、過去の記憶は私を追い詰めるのです。

でも、そんなことを信二さんに言うことはできません。彼は、私がこんなことで悩んでいるとは思っていないでしょうし、息子夫婦が一緒に住むことを楽しみにしているからです。だから、私は一人でこの不安を抱え続けるしかないのです。

奈々ちゃんは、本当に素晴らしい人です。私と違って、気丈で、何でも自分でこなせる強い女性です。だから、私のように弱くはないはずです。でも、そんな彼女だからこそ、同じようなことが起きてしまったら、どうしようと考えてしまいます。

あの日々の恐怖を、もう二度と味わいたくありません。奈々ちゃんにも、私のような思いはしてほしくありません。だから、私は彼女を守るために、できる限りのことをしようと心に決めました。たとえ信二さんや息子がどう思っても私は奈々ちゃんを守りたい。あの地獄を経験した私だからこそ彼女を助けられるはずです。

息子たちが引っ越してくる日が近づいてきました。私の心の不安は増すばかりですが、それでも、私は奈々ちゃんに優しく接しようと思っています。彼女の笑顔を守るために、どんなことがあっても、私はあの日の自分に負けないように、しっかりと立ち向かっていこうと思います。私自身があの時、誰かに助けてほしかったように、今度は私が彼女の力になりたいと思います。いかがでしたでしょうか?由美さんのお話でした。皆様はどう感じられましたか?

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