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代理告白~会社の同僚への

いつまでも若く感動純愛

数年前に両親が次々と病に倒れ、ひと段落着いたところに今度は、妹夫婦が事故で亡くなった。気づけば、俺の隣には12歳の柚希だけが残されていた。まるで、すべてが崩れ去った後に差し込む一筋の光のように。

俺の名前は勇樹、41歳。つい数年前までは、普通の会社員として忙しい日々を送っていた。だが、人生は突然、予測もつかないほどに変わるものだ。60代で病に倒れた両親に続き、歳の離れた妹とその夫が交通事故でこの世を去った。たったの2年で不幸な出来事が続いていた。ただ、その中でも奇跡的に妹の娘だけが助かったのだ。

柚希は俺にとって、唯一残された家族となった。彼女の存在がなければ、俺はとっくに絶望の中に沈んでいたかもしれない。妹の夫の両親や兄弟は、「育てる自信がない」と口を揃えて言うばかりだった。その言葉を聞いたとき、俺の胸は張り裂けそうだった。自分の無力さに苛立ち、衝動的に「俺が柚希を引き取る」と宣言していた。

会社に事情を話し、定時で帰れる生活を整えた。最初は慣れない育児に戸惑い、俺自身も新しい生活に苦労したが、それでも何とかやっていくしかなかった。だが、柚希は両親を失ったショックからか、ほとんど口を開かず、目はいつも遠くを見つめていた。さらに女の子特有の問題もあり、彼女のその目を見ていると、俺もどうしようもない無力感に襲われた。

そんな俺に手を差し伸べてくれたのが、会社の同僚である七海だった。彼女は明るくて気の利く人で、育児に関する悩みを親身になって聞いてくれた。特に女の子特有のことについては、俺一人ではどうしようもなく、自然と彼女に頼るようになっていった。

七海は頻繁に家に来ては、炊事や洗濯、家事全般を手伝ってくれた。彼女の気遣いで、家の中には少しずつ暖かさが戻り始めたが、柚希は彼女にもなかなか心を開かず、どこか遠慮がちだった。七海はそんな柚希を見つめるたび、少し寂しそうに微笑んだ。

ある夜、七海が帰った後、キッチンで彼女が作ってくれた夕飯を片付けながら、俺はふと彼女の背中を思い出した。彼女が帰り際、柚希のことを心配そうに見送る姿、その優しさが、俺には眩しく映っていた。

そんなある日、柚希が高熱を出した。体温計が示した数字は40度を超えていて、俺は血の気が引いた。すぐに救急車を呼び、必死に彼女の手を握りしめた。救急車の中、柚希の小さな手の冷たさが俺の胸に突き刺さる。あの小さな体にこれほどの負担をかけていたのかと、後悔が押し寄せた。

病院の冷たい照明が照らす診察室で、医者に「おたふくかぜからくる髄膜炎を発症しているようです。しかも発症からかなり時間が経っているようです」と言われた時、心が冷えた。もっと早く気づいていれば。。自己嫌悪に苛まれた。医者の声が遠く聞こえ、ただ柚希のか細い呼吸に耳を澄ませていた。

2日後、ようやく熱が下がり、柚希が目を覚ました。ベッドの上で弱々しく息をつく彼女を見た瞬間、俺は堪えきれずに語気を強く叱ってしまった。

「どうして、すぐにしんどいって言わなかったんだ。もしお前に何かあったら、俺は――」

言葉が詰まり、涙がこぼれ落ちた。感情をぶつける自分が情けなくて仕方なかった。柚希は小さな声で「ごめんなさい…」と呟き、その目に涙をためていた。それを聞いた瞬間、胸の中の何かが崩れ落ちるような感覚がした。

6日間の入院を終え、柚希を連れて家に戻った。その夜、リビングのテーブルを挟んで、俺たちは向き合った。これまで溜まっていたものを、すべて話し合うために。

「柚希、俺はこれからお前の父親として生きていく。だから、辛いことも苦しいことも、ちゃんと話してくれ。俺はお前を一人にはしない。俺が父ちゃんだと嫌か?」

俺は柚希の瞳をまっすぐに見つめ、心からの想いを伝えた。彼女は少し間を置いてから、泣きそうな顔で「ううん。心配してくれてありがとう…お、お父さん…」と、小さな笑顔を見せてくれた。それは、これまでの彼女の頑なな態度をすべて吹き飛ばすような、温かな光だった。

「お、お父さん…」

「ん?どうした?」

「七海さんのこともちゃんとしないとダメだよ」

「な、なんだ突然…」

「気付いてないの? 七海さんは、お父さんのことが好きなんだよ」

俺はその言葉に、息が詰まった。今までずっと支えてくれた七海が、自分に特別な感情を抱いているなんて、全く考えたこともなかった。アタフタしたその時、七海がその夜も家に来てくれた。柚希のために手作りのケーキを持ってきて、彼女はそれを見て嬉しそうに笑った。

「柚希ちゃん、退院おめでと!」

「七海ちゃん…」

「ん?なあに」

柚希は少し躊躇うように視線を泳がせた後、真剣な瞳で七海を見つめて言った。

「私のお母さんになってください。そして、お父さんと結婚してください」

その瞬間、七海は目を見開き、顔を真っ赤にしてうつむいた。俺も驚きで言葉を失い、しばらくその場で固まってしまった。彼女の頬が赤く染まるのを見て、胸の奥からじんわりと温かい感情が湧き上がってくるのを感じた。

七海が帰った後、窓辺に立って夜の風を感じながら、俺は彼女のことを考えていた。柚希の言葉が頭の中で何度も反響する。彼女が俺を支えてくれた日々、俺の心の中にあった感謝だけではない、もっと深い想いに気付かされる。

そして数日後、俺は七海に日頃の感謝を伝えるため、ささやかだが心を込めてプロポーズをすることに決めた。柚希が願った「家族」として、俺たち三人で新たな一歩を踏み出すために。

今、俺の隣には七海がいて、柚希も以前よりずっと笑顔が増えた。朝、三人で食卓を囲む温かさや、何気ない会話の中に流れる安らぎ。家の中には、以前は感じられなかった穏やかな空気が満ちている。俺が守りたかったのは、ただ柚希だけではなく、こんな日常そのものだったんだと、今になってやっと気付いた気がする。

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