私は理恵、現在アラフォーになってしまった普通のOLです。この年になると独身なの?と聞かれることは滅多になくなりました。皆さん気を使ってくれているのでしょう。でも実はバツイチなのです。一度結婚をしてかなり嫌な思いをしました。それ以降は結婚に臆病になり結婚はおろか恋愛すらしていませんでした。私は15年ほど前に、以前の職場の上司である人と結婚しました。上司と部下という関係でありながら、猛アピールに押されて結婚しました。両親や祖父母に猛反対されましたが、当時の私は周りが見えていなかったのだと思います。渋々彼らは折れてくれ結婚を祝福してくれました。ただ、彼らの懸念通り結婚後夫は豹変しました。彼は家庭内暴力を振るうようになり、抑圧的な生活をせざるを得ない状態にされたのです。その頃の私は精神が正常ではなかったのだと思います。大丈夫と自分に言い聞かせ我慢して結婚生活を続けていました。そして結婚3年目のある日、彼は浮気相手と暮らすから家から出て行ってくれと言い出したのです。「出て行ってくれるか?」彼のこれ以上ない冷たい目。一生忘れることは無いでしょう。それが前夫の最後の言葉でした。元々上司と部下だっただめ家庭内でも上下の関係になっていたのです。私が何を言っても彼の耳に届きませんでした。そしてその場で彼は私に離婚届を突き出してきました。そのまま本当に家を追いだされてしまいました。その日は仕方なく近くの祖父母の家に避難しました。
突然やってきた孫に祖父母は何も言わず優しく接してくれました。そして翌日、昨日合ったことを伝えました。離婚の話を聞いた祖父は怒髪天を突くかのような怒りで、前夫の会社に乗り込む勢いでしたが私はなんとか祖父を諫めました。そして思い出したのです。この家は私の祖父が私の結婚を祝って私名義で買ったマンションだったのです。そのまま祖父母と相談し家を売却することにしました。彼が仕事中に不動産屋を呼び査定をし、すぐに売却手続きを取りました。そして、私の両親が買ってくれていた家具一式もリサイクル業者にすべて買い取ってもらい、私が買ったものは全て処分しました。そして離婚届に記入し提出しに行きました。
それを全て1日で済ませたのですから、祖父の行動力は凄かったです。
もちろんその日の夜21時ごろ前夫から何度も電話がありました。私が出るのを躊躇っていると祖父が電話に出て怒涛の怒りをぶつけていました。会ったら〇してしまうのでは無いかというくらい怖かったです。それから前夫がどうなったかは知りません。退去日までに出なかったとして、不動産屋と揉めたと祖父から聞きましたが、祖父も前夫の情報を私に伝わらないようにしてくれていたのだと思います。祖父母には本当に感謝しています。
それ以降私は、賃貸マンションで一人暮らしをしています。
それから十数年が過ぎ気付けばもうすぐ子どもも産めなくなる年に近づいてきました。仕事も転職して順調に昇進し管理職になり、独りで気楽に過ごす日々を送っていました。しかし、そんな私に運命の転機が訪れました。
ある日、通勤で使っているバスに乗っていると、突然、目の前の男性が体調が悪そうで倒れそうになっていました。私はとっさに「席を変わりましょうか?」と声をかけましたが、彼は「大丈夫…」と言いながらも咳き込み、明らかに苦しそうな状態でした。
私はどうしても見て見ぬ振りが出来ず、バス停で彼を下ろし救急車を呼ぼうとしたところ、そこは調度病院前だったのです。そのまま彼に肩を貸して、目の前の病院に連れて行きました。もちろん時間外でしたが、救急外来がある病院でそのまま看護師さんに引き渡すことが出来ました。そのまま会社に向かおうかとも思いましたが、どうしても気になり彼の診察を待っていました。彼の診察結果は、肺炎を起こしていた上に熱中症と診断されました。そしてそのまま入院することとなりました。
私は彼のことを気にかけながらも、そのまま日常生活に戻りました。ところが2週間後、会社で新しい上司が紹介されることになり、出てきた人を見てびっくりしました。彼はバスで助けた方だったのです。
彼は他社から引き抜かれてきた田中実さんといい、挨拶の時にみんなの前で私に感謝の言葉を投げてくれました。後日、改めてお礼をするために食事に誘ってくれました。そのディナーの席で、彼は自分の離婚の理由を話し始めました。彼の元妻が浮気し、家を出て行ったこと、そしてその後、彼がしつこく金銭を要求されたことを語りました。同じような境遇だったのでビックリしました。そしてそんな失意の中、転職を決意したそうです。そして優秀な田中さんをうちの副社長が引っ張ってきたそうです。
失意の中にいるのかと思いきや、彼はむしろ「元妻の浮気には感謝しています。あなたに会えましたから」とストレートに私に気持ちをぶつけてきました。実は彼は私のことを以前から知っていたのだそうです。妻と離婚をしてから、毎日バスと電車でずっと一緒だったそうです。密かに素敵な人だなと私のことを見てくれていたそうです。離婚の疲れや引っ越しの疲れもあった時に病気になりそしてそれを私に助けられた。彼は運命だと思ったそうです。私はその告白に驚きつつも、彼の真剣な眼差しに心を動かされました。
その後彼の猛アプローチがあり、私たちはお互いの家を行き来しながら親しくなり、半同棲生活を始めました。同じような境遇に合っている彼は優しく私の心も溶かしていってくれました。そして驚くべきことに、両親と祖父母に彼を紹介した時には彼らは前夫とは違いものすごく祝福してくれました。「良い人をみつけたね。大事にしなさいね」と祖父は言いました。猛反対だった前夫とはえらい違いでした。そして、彼との交際が始まって10月後、私はまさかの妊娠をしました。この年での妊娠に驚きましたが、彼はもの凄く喜び「産んでほしい」と言ってくれました。私たちはすぐに籍を入れ、私は彼の住むマンションに引っ越しました。新しい生活が始まりました。
私はずっと自分の人生がどこで間違えたのかと思っていました。しかし、間違えた先にも幸せが待っていることを、この年になってようやく実感することができました。
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