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初めての朝帰り

シニアの恋愛は60歳からチャンネル様シニアの話
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私の名前は永田隆二。今年で60歳になります。

つい先月、定年を迎えました。長い会社員生活がようやく終わり、しばらくのんびりしてから次の仕事を探そうと思っています。これから何をするべきか、まだ具体的な計画はありませんが、今のところは妻と二人、穏やかな毎日を送っています。子どもたちはすでに独立し、遠方と言うこともあり滅多に家には帰ってきません。寂しくないと言えば嘘になりますが、二人きりの生活も悪くはありません。妻は今も家事をきちんとこなしてくれるし、何より彼女の手料理は変わらず美味しい。結婚して30年以上経ちますが、彼女の存在には感謝しています。ただ、一つだけ物足りないことがあります。それは、夜の生活がすっかりなくなってしまったことです。妻の年齢を考えれば、無理をさせたくない気持ちもあるし、彼女に不満があるわけではありません。それでも、時折、胸の奥が空っぽになったような感覚に襲われるのです。

そんなある日、ポストに一通のはがきが届きました。地元の同窓会の案内です。

「またか……。」

正直なところ、同窓会にはこれまでほとんど興味を持ったことがありませんでした。懐かしい友人たちと再会するのは良いものかもしれませんが、年齢を重ねるごとに、それ以上の意味を見いだせなくなっていたのです。

しかし、そのはがきにはある名前が記されていました。

加納涼子。涼子は、私にとって特別な存在でした。彼女は私の初恋の相手であり、小学校から高校まで同じ学校で過ごした憧れの人でした。小学生の頃、彼女に対して密かに抱いていた気持ちは、結局言葉にすることができないまま、時が流れました。

「懐かしいな……。」

頭の中に浮かぶのは、当時の彼女の笑顔。私のような引っ込み思案な人間にも分け隔てなく接してくれた、優しい少女の姿でした。

高校を卒業した後、彼女は上京し、それ以来の消息は分かりません。会えるはずがないと思いながらも、心のどこかで彼女に再会できるかもしれないという期待が湧き上がりました。

私は妻に相談することもなく、即座に参加を決めました。その瞬間、胸の中に小さな火が灯った気がしました。

同窓会の会場となったのは地元の古びたホテル。懐かしい同級生たちの顔が並ぶ中、私は一人でそわそわしていました。頭の片隅では、ずっと涼子の姿を探していたのです。

そして、しばらくして――。

「隆二君、久しぶりだね。」振り返ると、そこに彼女がいました。

「涼子ちゃん……。」声が上ずり、まともに返事をすることすらできませんでした。涼子は、高校時代よりも少しふっくらしていましたが、そのぽっちゃりとした健康的な姿が私にはたまらなく魅力的に映りました。彼女の笑顔はあの頃のままでした。いや、むしろ歳を重ねた分だけ柔らかさを増しているように感じられました。

「ずっと話したいなと思ってたのよ。」

「え? 本当に?」涼子は同窓会の間、ほとんど私のそばを離れませんでした。周囲に他の同級生もいたはずなのに、彼女の視線は常に私に向けられていました。

「ねぇ、この後も少し話せる?」涼子に誘われ、私は舞い上がる気持ちを抑えきれませんでした。

調子に乗った私は、少し背伸びをして高級レストランを予約しました。涼子に喜んでもらいたいという一心で、財布のことなど気にする余裕もありませんでした。

テーブルを挟んで向かい合った涼子と私は、久しぶりの再会に心を躍らせながら会話を交わしました。

「実はね、隆二君……。」

「ん?」彼女の声が少しだけ低くなり、表情が真剣になりました。

「昔から好きだったの。ずっと……。」その言葉に、私は息を飲みました。

「え、本当に?」

「本当よ。でも、私ってわがままだったし、自分からは言えなかったの。結局、何も言えないまま東京に行っちゃった。」

その言葉に心臓も跳ね上がるのを感じながら、私も彼女に告白しました。

「僕も……小さい頃から君が好きだったよ。」涼子の顔が驚きで赤く染まり、少しだけ涙を浮かべたように見えました。

二人の時間はあっという間に過ぎ、グラスの中のワインがなくなる頃には、昔の恋心が再び蘇ったような感覚に包まれていました。

酔いが回った涼子が、突然声を荒げました。

「ねぇ! なんで結婚したの!?」

「えっ……?」彼女の目には涙が浮かび、唇が震えていました。

「私じゃダメだったの? 私だってずっと好きだったのに!」私は返答に困り、ただ彼女を見つめるしかありませんでした。次第に彼女は涙をぬぐい、静かな声で謝りました。

「ごめんね……困らせるつもりじゃなかったの。ただ……一度だけ……私を抱いてほしい。」

その言葉に、私はどうすることもできませんでした。彼女の目には、真剣な気持ちが宿っていました。

私は言葉を失い、ただ涼子の真剣な目を見つめていました。心臓の音が爆音で聞こえるほど響き、目の前の彼女の言葉をどう受け止めるべきか、答えを見つけることができませんでした。

「一度だけでいいの……。」彼女の声は震えていましたが、その瞳には揺るぎない決意が込められていました。

その瞬間、私の中に渦巻いていた迷いは、どこか霧散していくように感じました。背徳感と高揚感がない交ぜになり、気がつけば彼女の手をそっと握り返していました。

「分かった。」その言葉が自分の口から出た時、私は全てを受け入れる覚悟を決めていました。

ホテルのドアを開けると、薄暗い照明が部屋をやわらかく照らしていました。心臓の鼓動はさらに早まり、胸が苦しくなるほどでした。涼子は静かに部屋の中へ入り、バッグを置くと振り返りました。

「ありがとう、隆二君。」その声には、どこか安堵の色が感じられました。

涼子がシャワーを浴びるためにバスルームに消えると、私は一人ソファに座り、天井を見上げました。

頭の中で何度もこれで良いのかと問いかけましたが、答えは出ません。ただ、ここにいる自分を責めることもできず、彼女への思いがすべてをかき消していました。

やがて、涼子がバスタオルを身にまとってバスルームから出てきました。その瞬間、すべての理性が吹き飛びました。

彼女の髪からは滴る水滴が肩を伝い、バスタオルから覗く肌はかつての記憶よりも豊かで、柔らかい輝きを放っていました。

私は自然と立ち上がり、彼女に歩み寄りました。彼女の瞳がまっすぐに私を捉え、言葉ではなくその視線が全てを物語っていました。

そして、その夜、私たちは互いの孤独と憧れを埋めるように、むさぼるような時間を過ごしました。

彼女の肌は暖かく、長い年月を超えて再会した二人の感情が、身体を通して交わりました。

「隆二君、大丈夫?」涼子のささやき声が、耳元で甘く響きます。私はその声に応えるように、彼女を強く抱きしめました。

何度も交わした口づけは、昔の自分に戻ったような感覚をもたらし、彼女の指先が私の肌に触れるたびに、心の奥が震えるようでした。

朝、私はベッドで目を覚ましました。隣には、穏やかな寝息を立てる涼子の姿がありました。その光景に、胸の奥が締めつけられるような思いでした。朝、彼女との別れは心をえぐられる様な感覚でした。

そして、家に帰ったら、きっと妻に怒られるだろう。いや、怒りだけでは済まされないかもしれない。それでも、涼子との時間を優先してしまった自分がいました。

家に帰ると、玄関の扉が開いた瞬間、妻の怒りの表情が目に飛び込んできました。

「どこに行ってたのよ!」

「ごめん、ちょっと同窓会の友人と飲みすぎて……。」必死に言い訳をしましたが、妻は腕を組み、鋭い目つきで私を睨みつけました。

「飲みすぎ? 無断外泊するまで飲むなんてどういうこと?」

その言葉に、私は何も言い返せませんでした。自分の行動を正当化する術などなく、ただ彼女の怒りを受け止めるしかありませんでした。

「ねえ、本当に何か隠してるんじゃないの?」彼女の声が徐々に低くなり、その裏に潜む不安を感じ取りました。

「ごめん。本当に酔いつぶれてたんだ。」思わず出たその言葉だけが、私の口から絞り出されました。

妻はしばらく沈黙し、深いため息をついて言いました。

「分かった。でも、もう一度こんなことがあったら、許さないからね。」その言葉に、私はようやく息をつくことができました。

涼子との再会は、私にとって一生忘れられない思い出となりました。しかし、その代償として妻の信頼を失いかけたことも、また事実です。

私はこれからの人生で、彼女との時間を心の奥深くにしまいながら、妻との日々を大切に生きていこうと決意しました。

彼女の笑顔と、その夜の温もりは、一生忘れられない出来事になりました。

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