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動画を見ていたらパソコンから警告音が…

シニアの恋愛は60歳からチャンネル様シニアの話
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私の名前は小笠原 正、61歳になりました。長年勤めた会社を定年退職し、穏やかな日々を送っています。自由な時間が増え、朝は好きなだけ寝られ、時間に追われることもなくなりました。最初のうちは、この生活がとても快適に思えました。

しかし、次第にすることが無さ過ぎて退屈を感じるようになりました。仕事がなくなったことで、何をするにも張り合いがなく、時間だけが無為に過ぎていくような感覚に陥りました。テレビを見ても面白くない、新聞を読んでも頭に入ってこない。散歩をしても特に目的があるわけでもなく、ただ歩いているだけのように感じました。妻の真理は相変わらず忙しそうに家事をこなし、趣味の読書や手芸を楽しんでいます。私も何かを始めるべきだと考えましたが、これといって興味を持てるものが見つかりませんでした。

そんな私にも妻に対する秘密があります。それはパソコンでそういう動画を見る事です。正直定年退職する前には、私の男としての能力はもう終わっていました。現役時代は仕事が辛く、性欲よりもただただ睡眠欲が勝ち、そんなことを考える余裕はありませんでした。しかし、定年を迎え、のんびり過ごしたことで体力が回復すると、不意にそうした思いが湧き上がってくるようになりました。私たち夫婦は10年ほど前までは、妻ともまだ愛し合っていました。しかし、ある時を境に、それがなくなりました。たしか妻から「もうしんどいから」と言われた時に、私は特に不満を持つこともなく、もう歳だしそんなものなのかとそれを受け入れました。私自身も体力に限界がありましたし、年齢を重ねるにつれ、そういうものなのだろうと納得していました。

ただ、性欲が復活したからといって今さら妻に求める事なんてできません。でもどうしても自分の中のムラムラするものが我慢できなくなり、そんな葛藤の末、私はこっそりとパソコンでそういう動画を見るようになりました。誰にも迷惑をかけるわけではなく、ただひとりの時間を満たすためのささやかな楽しみのつもりでした。

しかし、その日、私は思いもよらない出来事に見舞われました。いろいろ検索していると、ある動画をクリックした瞬間間、突然大きな音で、警告音が鳴り響いたのです。

「ウイルスに感染しました。今すぐこちらに連絡してください。」

スピーカーからけたたましい音が流れ、画面には真っ赤な警告メッセージが表示されました。私は一瞬で血の気が引きました。どこを押しても音は止まらず、画面のメッセージは消えません。焦りながらキーボードを叩きましたが、何も変わらず、ただ警告音が響き続けるだけでした。

その時、妻の声がしました。何事かと驚いた様子で、足音が近づいてきます。私は焦りました。何とか音を止めなければならないと必死になりましたが、画面は動かず、音は止まりません。

ドアが開きました。妻の目がパソコンの画面に向けられました。そして、すぐに事態を理解したようでした。

何とも言えない空気が流れました。私は弁解しようとしましたが、妻は無言のままパソコンを操作し始めました。数分後、警告音は止まり、画面も元に戻りました。「直ったよ」妻のその言葉と共に静寂が訪れました。私は安堵の息を漏らしましたが、妻の視線がじっとこちらに向けられているのを感じました。妻は、何も言わずに部屋を出ていきました。ドアが閉まる音が響き、私はようやく息をつきました。

何とも言えない気まずさが部屋に残りました。絶対に気づかれたに違いありません。いや、もしかすると、前から妻は私の行動を知っていたのかもしれません。そんな考えが頭を巡り、私はますます落ち着かなくなりました。

その夜、布団に入っても、なかなか寝つけませんでした。妻の様子が気になり、何度も隣を窺いました。しかし、妻は特に何かを言うわけでもなく、いつも通りに過ごしているように見えました。そんな中、妻が静かに声をかけてきました。暗闇の中で、静かな声が響きました。

「ねえ」私は息を詰まらせました。

「もしかして……まだ、したいの?」妻のその言葉に、私は言葉を失いました。妻の問いかけに、私は息を呑みました。

まさか、こんな言葉を妻の口から聞くことになるとは思いもしませんでした。ずっと言えずにいたことを、なぜ今になって妻が口にしたのか。その理由を考える余裕もなく、ただ心臓の鼓動が速くなっていくのを感じました。

暗闇の中、妻の表情は見えません。しかし、布団越しに伝わる微かな気配から、彼女が私の返事を待っていることは分かりました。長い沈黙が流れました。

言葉にするのが、こんなにも難しいことだとは思いませんでした。たった一言「そうだ」と言えばいいだけなのに、喉が乾いて声が出ません。10という年月の重さを、改めて思い知らされました。

今さらこんな話をしてもいいのか。妻は私を責めるために言っているのではないか。あるいは、ただの確認なのではないか。そんなことばかりが頭を巡り、答えを出せずにいました。

しかし、妻は再び小さな声で言いました。

「……どうしてあんなビデオ見てたの?」一瞬で冷や汗が吹き出しました。今度こそ、私は答えなければならないと思いました。

妻の問いは、単なる確認ではなく、私の気持ちを確かめようとするものだったのです。私は深く息を吸いました。

「……したくないわけがない」自分でも驚くほど、正直な言葉が口をついて出ました。言ってしまったのです。

ずっと胸の奥にしまい込んでいた思いを、たった一言で吐き出してしまいました。

すると、妻は小さく息を吐きました。そのため息が何を意味するのか、私には分かりませんでした。安心なのか、戸惑いなのか、それとも呆れなのか。ただ、それは拒絶のものではないように感じました。

「良いよ…」妻のその言葉に私は、びっくりしながらもゆっくりと手を伸ばしました。

暗闇の中で、探るように妻の肩に触れると、指先に伝わる温もりがひどく懐かしく思えました。

正直妻の体に触れること自体10年ぶりの感触だったのです。

妻は、すぐには動きませんでした。小さく震えているようにも感じました。私の心臓の鼓動が早まるのと同じように、妻も緊張しているのかもしれません。私は、そっと手を滑らせました。

妻の肩から体へ、そして胸へと触れると、彼女は小さく身じろぎしました。

「……もうおばあちゃんなのに…」妻の声は、わずかに震えていました。私は、その問いかけに答えを出すまでに、少しの間を要しました。

「……若いおばちゃんで良いじゃないか」それが、私の偽りのない気持ちでした。

暗闇の中で、妻が小さく頷いたように感じました。そして、私は妻をそっと抱き寄せました。

10年の空白を埋めるように、静かに、確かめるように、互いの温もりを感じました。

妻を抱き寄せると、彼女の体がわずかにこわばるのを感じました。久しぶりすぎて、どうしていいのか分からないのは、私だけではないのだと気づきました。

10年という年月は、互いの距離を少しずつ広げていたのかもしれません。以前は自然と触れ合っていたはずなのに、今はまるで初めてのようにぎこちない。それでも、妻の温もりは変わらず、触れるたびに懐かしさがこみ上げてきました。

妻の髪からは、仄かにシャンプーの香りがしました。それは、ずっと隣で過ごしてきたはずなのに、こうして改めて意識すると、新鮮でさえありました。私は、そっと顔を近づけました。妻は、逃げようとはしませんでした。

10年ぶりの口づけは、ほんの一瞬でした。それでも、その短い時間に、言葉にできない思いが詰まっているように感じました。

妻の唇は、昔と同じように柔らかく、少し温かかった。妻はそっと目を閉じました。

触れるだけのキスだったのに、それだけで胸がいっぱいになりました。

「……正くん」妻が、静かに若い頃の呼び方で名前を呼びました。その声に、いつもと違って心が満たされました。

私は、もう一度妻を抱きしめました。妻の体が、少しずつ力を抜いていくのを感じました。

ゆっくりと、10分の距離が埋まっていくようで、私はそっと妻の手を握りました。

妻の指が、ゆっくりと私の指に絡まってくる。久しぶりのその仕草が、どうしようもなく愛おしく思えました。

妻が、微かに頬を寄せてきました。

私は、もう一度、ゆっくりと唇を重ねました。懐かしくもあり、新しくもある感覚でした。

この10年の間に、私たちは変わったのかもしれません。でも、変わらないものも、確かにここにあるのだと思いました。

私は、妻をそっと抱きしめながら、その温もりを確かめました。もう、何も言葉はいりません10年ぶりの妻は最高でした。

目を覚ますと、まだ外は薄暗く、窓の向こうに静かな朝の気配が漂っていました。隣では、妻が静かに寝息を立てていました。私は、そっと息をつきながら、昨夜の出来事を思い出していました。ああ、こんな歳になってもまだ出来るんだなとしみじみとした気持ちになりました。

私はそっと妻の髪に触れました。柔らかく、穏やかな温もりが指先に伝わってきました。こんなふうに、ただ妻の存在を感じることが、これほどまでに安らぎを与えてくれるものなのかと、改めて思いました。

しばらくすると、妻がゆっくりと目を開けました。

私の視線に気づくと、少しだけ恥ずかしそうに目を伏せました。その仕草が、どこか初々しく見えて、私は思わず笑いそうになりました。妻は、小さく息をついて、ぽつりとつぶやきました。

「もう……ああいうビデオ、見ないでね」私は一瞬、何のことかと考えましたが、すぐに思い当たりました。

「もしかして前から……気づいていたのか?」妻は、私の顔をじっと見つめた後、ゆっくりと頷きました。

「……うん、なんとなくね。でも、言えなかったのは、どうしていいか分からなかったから」私は、少しだけ肩を落としました。妻に気づかれていたことが何とも言えない恥ずかしさがあり、それ以上に申し訳ない気持ちになりました。

「……ごめん」そう言うと、妻は小さく首を振りました。

「いいの。でも、してほしくなったら、ちゃんと言ってね」私は、その言葉に驚きました。

今まで、そんなふうに言われたことはありませんでした。

「本当に、いいのか?」私がそう尋ねると、妻は少しだけ頬を染めて、静かに頷きました。

「……私だって、嫌なわけじゃないのよ。でもこんな歳だしおかしいのかなと思って」その言葉に、私は言葉を失いました。

妻もまた、私と同じように、何かを押し殺していたのかもしれない。

「……ありがとう」そう呟くと、妻は小さく笑いました。

「何それ、おかしいわね」

「いや、本当に、ありがとう」妻は、少しだけ困ったように笑いながら、私の手を握りました。その指先のぬくもりが、やけに愛おしく感じました。私は、もう一度、妻を抱き寄せました。

「じゃあ……毎日でも?」軽く冗談めかして言うと、妻の手が私の腕をぺしりと叩きました。

「ばか」そう言いながらも、妻の表情はどこか照れくさそうで、私はその顔を見て、どうしようもなく嬉しくなりました。

朝の光が、少しずつ部屋を明るくしていきます。私は、ゆっくりと布団を抜け出し、台所へ向かいました。

コーヒーを淹れながら、これまでのことを思い返しました。

10年という歳月を経て、ようやく、私は妻と向き合うことができたのかもしれません。

「今日は俺が朝ごはん作るよ」そう心の中で誓いながら、私は妻のために、もう一杯のコーヒーを淹れました。

静かな朝のキッチンに、湯気とともに、どこか穏やかな空気が広がっていきました。

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