平穏なはずの老後が一瞬にして奪われた。不注意で起きた事故のせいで動かなくなってしまった俺の体。しかし、彼女の手が触れるだけで、不本意ながらも毎回俺は下腹部が熱くなる。こんな感情に戸惑いつつも、今回の介護は何度目なのだろうか。恥ずかしさでいっぱいだが、今回は何かが違った。彼女は悟ったかのように、「声を出さないでくださいね」と優しく促してきた。彼女はそう告げると、俺の下腹部を丁寧に拭き始めた。
俺の名前は淳史。60歳を過ぎ、平穏な老後を送るはずが、自転車事故により一変した。生死の境をさまよい、奇跡的に生還はしたものの、俺の体は完全には回復しなかった。動かない手足、それに伴う激しいストレスは、知らず知らずのうちに妻に向けられていた。そのことに気付かされ、息子の提案でヘルパーを頼むことに。最初は他人の手を借りることに抵抗があったが、妻の負担を少しでも軽減できるならと、徐々に受け入れるようになった。
ヘルパーに頼んだのは良いが、正直扱いが酷く辛い日々だった。人間として扱われている気がしない。しかし、その中でも、週2回だけやってくる和子さんだけは違った。彼女の見た目はとても若々しく、50代とは思えないほどだ。彼女はただのヘルパーとしてではなく、まるで友人のように接してくれる。週に2日、彼女の訪れる日は、俺にとってただの介護の時間を超え、心の支えとなっていた。冷たく閉ざされがちな心が、彼女のふとした笑顔や会話によって少しずつ温かさで満たされていくのを感じた。彼女の訪問が、俺にとって唯一の楽しみになり、生きがいにも感じられるようになっていた。彼女自身も離婚経験や子供の話など、プライベートなことも打ち明けてくれる。彼女の存在が、俺の日々に少しだけ色を加える。彼女の訪れる日は、途切れがちな俺の人生に、再びリズムを取り戻すようになってきていた。
そんな中、俺には一つの悩みがあった。介護を受ける中で、彼女に体を拭いてもらうとどうしても下腹部が熱くなった。恥ずかしいが自分ではどうすることも出来ない。そんな俺の心境を察してか、彼女はそれでもいつも通り優しく、丁寧に介護を続けてくれていた。
そんなある日、今日も体を拭く時間がやってきた。この瞬間が、恥ずかしくもあり、苦しくもあった。彼女への思いが大きくなるにつれ余計に下腹部に血が集まる。もう何度目だろう。恥ずかしくて堪らない。しかし今回、事態は異なった。「声を出さないでくださいね。」と彼女は悟ったようにそう言うと、いつもの優しさよりも丁寧に陰部を拭き始めた。隣の部屋には妻がいる。妻の存在が頭をよぎるたびに胸が締めつけられる一方で、彼女の慎重な手つきに、心は複雑な安堵と期待で痛烈に揺さぶられた。彼女の手が俺の肌に触れるたび、混じり合う期待と不安が強烈な感情となって、俺の意識を支配していった。