PR

陶芸家~息子の妻~

禁断

「お義父さん!できました!」夕日の赤に染まる工房の中、陽子の声が鮮やかに響き渡った。汗をかきながら、眩い笑顔で問いかける彼女の手には、成形したばかりのおちょこが握られていた。和夫はおちょこを受け取り、じっと見つめた。「あ、あぁ。なかなか良い出来だ」と少しどもりながらも、息子の嫁に恋心を抱いてしまった和夫の心には、許されざる感情が渦巻いていた。

和夫は陶芸家としての日々を送っている。妻を10年前に亡くし、それ以来、陶芸に没頭することで心の空洞を埋めてきた。息子夫婦との同居が始まったのは、そんな孤独な日々を変える大きな転機だった。だが、息子は仕事で遅くなることが多く、夕食は陽子と二人きりになることが多かった。食事中、元々無口な和夫は話をうまく振ることができず、食卓に響くカチャカチャという食器の音が重苦しい沈黙をさらに強調していた。そんな状態が続いたある晩、陽子が突然涙を流しながら言った。「お義父さんも私のことが嫌いですか?」その言葉に驚いた和夫は、必死に彼女をなだめ、自分が長年一人でいたためにどう接していいかわからないことを正直に話した。彼女からは、息子ともうまくいっていない、さらにお義父さんも話すらしてくれなくてつい泣いてしまったそうだ。陽子は少しずつ安心したのか、「じゃあ今度、陶芸のこと教えてくれませんか?」と提案してきた。陶芸のこととなると、和夫は時間を忘れてつい夢中になって話していた。陽子もその話に引き込まれ、自然と会話が弾んだ。「今度、一緒にやってみるかい?」と誘うと、彼女は目を輝かせて頷いた。

陶芸の時間は、二人の心の距離を急速に縮める特別な時間となった。「陽子さん、あぁ、それは駄目!こう!もっと優しく」と、 和夫は陽子の手を優しく包み込むようにして指導した。陽子はその手を素直に受け入れ、静かに頷いた。夕食の席で陽子が笑顔で言った。「ふふっ、お義父さん、陶芸中は本当に人が変わったみたいになるんですね」和夫は恥ずかしさの中にも心が踊るのを感じるようになっていた。
陶芸を始めてからしばらく経ったある日、成形したばかりのおちょこを手に、「お義父さん、できました!どうですか?」陽子が嬉しそうに和夫に見せにきた。「あ、あぁ。なかなか良い出来だ」和夫はしどろもどろになりながらも言葉を返す。「これで一緒に飲みましょうね」と目を輝かせながらおちょこを眺める陽子。しかし、その瞬間、和夫は自分の心に芽生えた感情に気付いてしまった。こんな年にもなって、陽子さんに好意を抱いてしまったのだ。ましてや息子の嫁なのに。
その気持ちに気付いてからは、和夫はまた言葉数が少なくなっていった。「お義父さん、最近どうかしましたか?」陽子が心配そうに和夫をのぞき込む。「あ、あぁ。何でもないよ」と目をそらすと、陽子はその方向にトコトコと回り込み、「はい、これで一緒に飲みましょ」と出来上がったおちょこを手渡ししてきた。「お義父さんと飲むために作ったんですよ」和夫の心は限界に達し、気持ちを抑えきれずに陽子を抱きしめてしまった。
「お義父さん」
陽子がそう言ったその時、おちょこを落とし割ってしまったのだ。「あああぁ。すまない」我に返って謝ったと同時に、息子の帰宅の音が聞こえた。「どうかしたのか」と息子。陽子が振り返り、「お帰りなさい!おちょこを割ってしまったの」と抱きしめたことは隠したまま割れたおちょこの片づけをしていた。

「昨日はすまなかった」と翌日すぐに謝罪をした。「大丈夫ですよ!今度は一緒に作りましょう」陽子は、昨日抱きしめたことが無かったかのように接してくれた。陽子が和夫の隣で一心不乱に土をこねている。和夫は彼女の笑顔を見るたびに、胸の高鳴りを感じながら、自分の気持ちを必死に押し殺した。だが彼女の手が自分の手に触れるたびに、心臓が高鳴るのを感じていた。

和夫がこのまま、彼女に対してどう行動するのかは正直まだ分からない。年を取ってからの恋。このまま盛り上がっていくのか、ゆっくりと静まっていくのかはわからない。 だが、「お義父さん見て」と、出来上がったおちょこを嬉しそうに見せる陽子の笑顔を、和夫は守っていくことを静かに誓った。

タイトルとURLをコピーしました