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息子夫婦に触発された夫が

シニアの体験シニアの恋

こんにちは、私は裕子と申します。先日58歳になりました。

夜中、ふっと目が覚めることってありますよね。皆さんも、きっと一度や二度、経験したことがあるんじゃないかと思います。私も、その日、まさにそんな風に目を覚ましたんです。時間は深夜、家全体がしんと静まり返っていて、夫の穏やかな寝息だけがかすかに聞こえる、そんな夜でした。

だけど、その静寂の中で、何かが微かに揺れているような気がしたんです。初めは気のせいかと思いましたが、じっと耳を澄ませると、どうも二階の息子夫婦の部屋の方から、かすかな振動が伝わってくる。ほんの僅かです。息子夫婦の部屋は家の一番奥にあるから、声が直接聞こえるわけじゃないんですが、あの…なんと言うか、古い家のせいか、床板がわずかに軋む音や、ベッドが動く振動が、静かな夜にはよく響くんですよ。

「はぁ…」と思わず小さくため息をついてしまいました。ああ、と苦笑しながらも、「まあ、早く孫ができるならいいか」と自分に言い聞かせました。けれど、正直言うと、心の中では「わざわざここでしなくても家でしなさいよ…」なんて思っていました。恥ずかしい気持ちも少しありましたね、やっぱり。でも、嫌な気持ちではなかったんです。むしろ、夫婦として仲が良いのは素敵なことだと、どこか微笑ましく感じてもいました。

息子たちが帰ってきてくれるのは嬉しいんです。特に、孫はいつできるのかなといつも思っていましたから。もし孫が出来たらと想像するだけで、ワクワクしていました。だから気にしないようにしてまた目を閉じたんですけど、どうしてもその振動が気になってしまって、全然眠れなくなっちゃったんですよね。

翌朝はやっぱり寝不足気味で起きた私でしたが、朝食の時間には何事もなかったように振る舞いました。息子夫婦は仲良くテーブルに座って、昨日の晩のことなどおくびにも出さない様子。私は内心で「まぁ、当然よね」と思いながら、ちょっとした照れ隠しに、やたらとキッチンで忙しそうに振る舞いました。

「この味噌汁、美味しいねぇ。これ家でも作ってくれない?」と、息子が嫁に言いました。

「それはね、この隠し味が入っているのよ」と私はお嫁さんに教えてあげました。

朝から二人は仲睦まじい姿を見せられ、私はまたもや心の中で「ああ、もう」と微妙な気恥ずかしさを感じてしまいました。

その日の午後、息子たちが帰っていった後、私は庭に出て、一人でゆっくりと花の手入れをしていました。庭仕事は昔から好きで、家のことを忘れて少しだけ自分の時間に浸れる大事なひとときです。でも、その日ばかりはなぜか、息子夫婦のことが頭から離れなくて、なんとなく、彼らのこれからのことや、自分のことを考えてしまっていました。

ふと思い出したのは、私と夫がまだ若かった頃のことです。結婚してすぐ、何もかもが新鮮だった頃、私たちも同じような時期があったなぁとしみじみと考えていました。あの頃は、毎日が忙しくて、でも一緒にいるだけで満たされていました。それが、時が経つにつれて、家事や育児に追われて、いつしか夫婦の時間は減っていったんです。

そして、その日の夜です。息子夫婦が帰ったことにより、急に家は再び静かな食卓になりました。私はベッドに入り、夫も隣でいつも通り静かに眠りにつこうとしていました。いつもなら、そのまま二人で背を向け合って眠るのが普通なんです。長い年月、そうして過ごしてきましたから、特に違和感も感じなくなっていました。

でも、その夜は違いました。ベッドに横になって、しばらくすると、夫がそっと手を伸ばして、私の肩に触れてきたんです。あまりに不意打ちだったので、私は一瞬固まってしまいました。夫がこうして私に触れるなんて、本当に10年以上なかったことですから。

「やめてよ」と言いそうになったけれど、いつもなら言っていたと思うのですが、その時は言葉が出なかったんです。代わりに、私は夫の顔をじっと見つめ返しました。すると、夫がぽつりと「久しぶりだね」と静かに呟いたんです。その言葉が、妙に遠くて懐かしくて、胸がきゅっと締め付けられるような気持ちになりました。

10年以上…そう、私たちはただ「家族」として一緒に暮らしていただけで、「夫婦」としての関係はいつの間にか薄れてしまっていたんだなと、その時改めて感じました。

私は何も言わず、ただ夫の手の温かさを感じていました。その手が私の肩から背中へと滑るたびに、心の奥で眠っていた何かが目を覚ましていくのを感じました。あの夜、息子夫婦のかすかな振動を感じた時から、私の中で何かが変わり始めていたのかもしれません。もしかしたら、私と同じように夫も昨日の息子たちのことに気付いていたのかもしれません。

その夜、私たちは再び夫婦としての時間を取り戻しました。ぎこちなさもあったけど、どこか心地よいものでした。それから少しずつ、私たち夫婦の間に小さな変化が訪れるようになりました。夫が私に触れること、私が彼に寄り添うこと──そんな些細なことが、だんだんと増えていったんです。

数日後、夫が「最近、なんだか落ち着くね」と言ったんです。まるで何もかも自然に戻ったかのような口ぶりでしたが、私はその言葉を聞いて少し嬉しくなりました。そう、私たちはようやく、長い年月を経て、また一緒に寄り添えるようになったんだと、しみじみ感じたんです。

息子夫婦が帰っていった後、家は再び静かになりましたが、私の心の中には、以前とは違う静かな温もりが残っていました。夫の手の温もり、そして、もう一度取り戻した「夫婦としての時間」。それが、私たちにとって何よりも大切なものだと気づくのに、そう長くはかかりませんでした。

夜中にふっと目を覚ました時、私は隣で寝ている夫の寝息を聞きながら、小さな微笑みを浮かべました。私たちの間に再び訪れたこの温もりに、私は心から感謝しているんです。

これからも、きっと、静かな日々が続くでしょう。でも、その静寂の中にある温もりこそが、私たちの新しい幸せの形なんだと、今はそう思えるんです。

いかがでしたでしょうか。裕子さんの息子さんが帰省してきてからのお話でした。皆様もこういう経験はありますか?もしありましたらいろんな出来事をコメント欄で教えてくれると嬉しいです。では。

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