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職場なのに思わずキスをしてしまい

シニアの恋愛は60歳からチャンネル様シニアの話
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私の名前は高木誠一、60代前半の工場経営者です。結婚して2年で離婚してからは、娘を男手ひとつで育ててきました。もちろん、完璧な父親ではありません。それでも、自分なりに一生懸命やってきたつもりです。その甲斐あってか、娘は結婚して家庭を持った今でも、よく実家に顔を出してくれます。そんな娘がいるだけで、私は十分幸せだと思っていました。

ところが最近、娘が「お父さん、そろそろ一緒に住まない?」と、同居の話を持ちかけるようになりました。娘の旦那さんも同居に賛成しているようで、「ぜひ一緒に暮らしましょう」と言ってくれるのです。普通なら喜ぶべき話なのだと思います。でも、私はどうしてもその提案を受け入れることができません。

その理由は、私の離婚原因が「親との同居」にあったからです。

私は昔、両親と妻とで同居していました。最初のうちは問題なくやっていました。親も妻も、互いに気を遣いながら生活していたので、特に大きなトラブルはありませんでした。ですが、同居を始めて1年も経たないうちに、小さな衝突が増えていきました。私はそのたびに「まぁまぁ」とその場をやり過ごしてばかりで、どちらの味方にもつきませんでした。その結果、妻は次第に心を閉ざし、最終的には外で不倫をしてしまったのです。

もちろん、不倫をした妻を正当化するつもりはありません。でも、彼女がそうせざるを得なかった理由を、今の私は理解できます。彼女が離婚の際に涙ながらに言った「自分の居場所がなくて、不倫をしてしまいました。本当にごめんなさい」という言葉が、ずっと私の胸に引っかかっています。だからこそ、同居の提案を聞くたびに、その時の苦い記憶が蘇ってしまうのです。

そんな気持ちを抱えながら、私は工場で事務をしてくれている彼女に、ついいつも愚痴をこぼしていました。彼女は50代後半の独身女性で、どこか落ち着いた雰囲気を持った人です。彼女との付き合いはもう20年を超えます。気さくで話しやすく、私はつい何でも話してしまいます。

「あらあら、娘さんの気持ちも分かるから難しいわねぇ」と彼女は笑顔で答えてくれました。「きっと、お父さんが一人でいるのが心配なんでしょうね。」

確かに、彼女の言う通りなのかもしれません。娘は昔からしっかり者でした。小学生ながらに家事を手伝い、自分のことをきちんとこなしてくれる子でした。そんな娘が、私を気にかけてくれるのはありがたい話です。でも、それでも同居は無理だと、私は思っています。

「でもね、一番いいのは、あなたにいい人ができることじゃない?」と、彼女がふと真剣な表情で言いました。「娘さんも、あなたが幸せになれば安心するんじゃないかしら」

その言葉に、私は驚きました。再婚……そんなこと、考えたこともありませんでした。私がそんなことをしたら娘はどう思うのか、反対されるのではないかと不安がよぎります。

「いやいや、そんな相手なんていないよ。それに、娘がどう思うか……」

「それ、言ったらだめよ」と彼女が少しきつい口調で言いました。「自分が恋愛しないのは娘さんのせいだって言ってるのと一緒だからね。社長が誰かと幸せになることで、娘さんも安心するかもしれないじゃない」

その言葉に、私は黙り込んでしまいました。彼女の言う通り、私は娘を理由に、自分の幸せを考えることから逃げていたのかもしれません。

家に帰る途中、私はふと考えました。自分が幸せになることで、娘も安心できるのではないか。そう思うと、不思議と胸の中が軽くなるような気がしました。そして翌日、娘に思い切って話してみることにしました。

「もしお父さんが誰かと再婚することになったら、どう思う?」と尋ねると、娘は目を丸くして驚きながらこう言いました。

「え、お父さんって好きな人いるの? 誰なの?」

その反応に、私は思わず苦笑いしてしまいました。予想外の言葉でしたが、娘の口調には驚きと同時に、どこか期待のようなものが感じられました。それなら、この胸に秘めた想いを行動に移すべきかもしれないと、私は心を決めたのです。

翌朝、私は少し緊張しながら工場へ向かいました。普段なら気楽に話せる彼女に、今日はどうやって声をかければいいのか、そればかり考えていました。自分でも情けないと思いますが、この年になって恋愛感情を出すなんて思ってもみなかったのです。

事務所に入ると、彼女がいつものようにデスクで作業をしていました。私は彼女の笑顔を見ると、少し気持ちが落ち着きましたが、それでも胸の奥が妙にざわつきます。

「おはようございます、社長。今日は疲れた顔してますよ。大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だよ。ちょっと寝れなくてね」

そう答えたものの、その「考え事」が彼女のことであるとは、もちろん言えませんでした。それでも、一度決めた以上、ここで逃げるわけにはいきません。昼休みになったタイミングで、私は彼女に声をかけました。

「少し話せる?」

「なんですか、改まって」

彼女は不思議そうに私を見ました。私は深呼吸をして、応接スペースに彼女を誘い、他の社員がいないことを確認してから話し始めました。

「実は、昨日娘に再婚のことをちらっと聞いたんだよ。もし私が誰かと再婚することになったら、どう思うかって」

「娘さんは、なんて言ったんですか?」と聞き返してきました。

「賛成だと言ってくれました。それで……あなたに伝えようと思ったんです」

彼女は目を丸くし、次の言葉を待っているようでした。私は少し震える声で続けました。

「ずっと考えてたんだよ。いつも俺の愚痴を聞いてくれて、助けられていたんだなって。もしよかったら、結婚を前提に付き合って欲しい」

その瞬間、彼女は一瞬動きを止めました。目を見開き、口を開けて何かを言おうとしているのに、言葉が出てこないようでした。

彼女はしばらく黙ったままでしたが、やがて口を開きました。

「社長…まさかこんなことを言われるなんて…でもすごく嬉しいです」

その言葉に、私は胸がじんわりと温かくなるのを感じました。ただ、彼女は少し困ったように続けました。

「ただ、私も知っての通りいろいろあったので、すぐに答えを出せるかと言われると……」

「もちろん!焦らずに考えてくれたら」

そう答えながらも、私は心のどこかで期待している自分を感じていました。彼女の気持ちを待つ時間がどれほど長く感じるか分かりませんでしたが、それでも彼女の答えを信じることにしました。

それから1か月後、私は彼女から「今、良いですか?」と誘われました。胸が高鳴るのを感じながら、応接スペースで待っていると、彼女が少し緊張した表情で現れました。

「お待たせしました」

「この一カ月ずっと社長のこと考えていました」彼女が顔を上げ、私の目を見ながら言いました。

「私でよければ、お付き合いさせてください」その言葉を聞いた瞬間、私は思わず立ち上がり、彼女を抱きしめてしまいました。

「ありがとう。本当に、ありがとう」

彼女は少し照れたように笑いながら、「これからよろしくお願いします」と小さな声で答えました。

そのとき、私の中で衝動的な気持ちが湧き上がり、職場なのにキスをしてしまいました。「社長!もうここ会社ですよ」と彼女が驚いた声を上げましたが、抵抗することはありませんでした。

数か月後、私は彼女を正式に娘に紹介しました。娘は「お父さんが、こんなに嬉しそうなの、初めて見るかも」と言って彼女を歓迎してくれました。彼女も最初は戸惑っていましたが、娘と話すうちに打ち解け、笑顔を見せるようになりました。

最終的に、私たちは籍を入れて新しい生活をスタートさせました。彼女が私の家に引っ越してきたのですが、「この家にはあなたと娘さんの思い出があるから」と、新居を提案した私の考えをやんわりと断ってくれました。

これからの人生、何が待っているか分かりません。でも、彼女となら乗り越えられると思います。そして、彼女に「ここが自分の居場所だ」と思ってもらえるよう、精一杯の努力をしていきたいと思っています。

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