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娘の夫の浮気

シニアの話シニアの馴れ初めチャンネル様

私の名前は康子、60歳の主婦です。先日珍しい来客がありました。娘の真央が実家に戻ってきたのです。彼女はそれほど帰省の回数が多くないです。だから何かあったのだと思いました。案の定です。ほんの数日前のことでした。彼女は泣き腫らした目で「夫に浮気された」と告げ、私たち夫婦の前で離婚の決意を固めていました。そのときの彼女の表情には、怒りや悲しみ、そして裏切られた苦しみが滲み出ていて、見ているだけで心が痛みました。

「もう絶対に許せないの。離婚するしかない」と、真央は固い決意を滲ませて言いました。私の娘らしいと言えば娘らしい、と思いました。普段から毅然とした性格の真央は、こうと決めたら曲げないところがあるのです。ですが、それでも私は娘に諭さずにはいられませんでした。「真央、少し落ち着いて話してみない?」と、私は優しく声をかけました。

「だって、許すなんて無理だよ。あんなことされたのに、どうして私が我慢しなきゃいけないの?」真央の声は震えていて、涙をこらえているのが分かりました。

「確かに、浮気をされたことは許せない。でも、感情のままに決めてしまうのは、後悔することもあるのよ」と、私はゆっくりと、しかししっかりとした口調で言いました。「一度立ち止まって考えてみない?あなたが本当に何を望んでいるのかを…」

真央はしばらく黙っていましたが、ふいに顔を上げ、「お母さんにはわからないよ。お父さんが良い人だから、お母さんが羨ましいよ」と言い放ちました。

私はその言葉に一瞬息を呑みました。良い人…か。確かに、今の夫は優しく、家族を大事にしてくれる人です。娘からすれば非の打ち所がないような男性に見えるだろう。

私には優しくしてくれるし、怒ることなんてない。でも、そんな夫にもかつて裏切られた過去があるのです。真央の言葉が、まるで当時の私を責めるように感じられた私は、心に秘めていたことを話す決心をしました。

「真央、実はね…」私は重くて口に出すのも辛い過去を語り始めました。「お父さんも、昔浮気をしていたことがあるのよ」

真央の目が驚きに見開かれました。「え…嘘でしょ?お父さんが?それ初耳なんだけど、本当なの?」

「本当よ。あれは真央がまだ小さかった頃だったわ。相手は職場の同僚で、しかも相手には子どもがいたの」

その事実を告げた瞬間娘は目を大きくして驚いていた。「嘘でしょ…相手に子どもって…」

「さすがにそれを知ったときは、本当にショックでねぇ…、何日も眠れなかった。何度も何度も離婚を考えたの」

当時のことを思い出すと、今でも胸が締めつけられるような感覚があります。私は本気で、離婚することが子どもたちにとって一番良いのか、それとも一人で子育てをする覚悟があるのか、真剣に悩んでいました。

「でもね、真央…」と私は言葉を続けました。これで終わってはただ大変だったことと、せっかく築いてきた夫への良いイメージが崩れてしまうことになる。それは私にとっては不本意だったのです。だからこの話の続きを話すことにしました。「最終的に、私は離婚をしなかった。というのも、果たして一人であなたたちを育てていけるのか…考えたときに、それは無理だと判断したの。生活も、安定していなかったし、私自身も働いてはいたけれど、十分な収入があったわけじゃなかったから」「そ、それでお父さんとこれまで?」

「えぇそうよ。私はその時に決めたのよ。あの人を責めずに、飼い慣らすことにしようと。浮気を知っていても、知らないふりをして、ただ静かに見守ることにしたの」

真央は驚いた表情のまま、しばらく口を開けずにいました。まさか自分の父親がそんな過去を持っていたとは、思いもよらなかったのでしょう。やがて、真央はおずおずとした声で尋ねました。

「それで、お母さんはどうして…どうしてそんなに強くいられたの?私にはそんなふうに割り切るなんて、できそうにないよ」

私はゆっくりと微笑んで、真央の目を見つめました。「強くなんてなかったわ。ただ、生活のためだったの。プライドだけでご飯は食べられないでしょう?だから私は、プライドなんて捨ててしまおうと思ったのよ。あなたたちを守るのに必要ないと思ったからね…」

浮気を知った当時、私の頭の中には、さまざまな考えが巡っていました。自分の誇りや夫への愛情、そして何よりも子どもたちの未来。しかし、どれを取っても、子どもたちを守るためには安定した生活が必要でした。だから私は、プライドや怒りを飲み込んで、あの人に何も言わずに日常を続けることを選んだのです。

「もちろん、辛かったわ。毎日心の中で叫びたくなるような気持ちを抑えていた。でも、浮気相手との関係は自然に終わった。あの人も、たぶん浮気が続かないことに気づいていたのね。しばらくして、何事もなかったかのように馴れ馴れしくしてくるようになったの」

その時のことを思い出すと、今でも腹の底から怒りが湧いてきそうでした。夫が、まるで過去の罪など存在しないかのように接してきたとき、私は初めて反撃に出たのです。

「真央、私がどうしたか分かる?」私は穏やかに尋ねました。真央は小さく首を振りました。

「私はね、浮気のことをその時にようやく問い詰めたの。ずっと沈黙していたからこそ、あの人は私が知らないと思っていた。でも、そうじゃなかったのよ。浮気が終わって、気が緩んだ頃を見計らって、じっくりと時間をかけて追い詰めたの。どうして、何があったのか、一つひとつ確かめるように問い詰めた」

真央は息を飲んで聞き入っていました。「そんな…でも、それでお父さんはどうしたの?」

「最初は苦し紛れの言い訳をしていたけれど、私が冷静に一つひとつ質問していくうちに、だんだん追い詰められて、最後には何も言えなくなってしまったわ。それからよ、あの人が変わったのは。それまでは、私を軽んじていたのかもしれない。でも、私がどれだけ我慢していたかを知って、ようやく私を恐れるようになったの」

その時から、夫との関係は一変しました。私たちは一見すると仲の良い夫婦に見えたかもしれません。でも、実際には、私が彼をコントロールしていたのです。私はもう、彼に裏切られることがないように、彼の行動を見張り、必要ならば手綱を引くようにしていました。もちろん、それは家族の平和を保つためでもありました。

「だから、真央。私は離婚しないことを勧めているわけじゃないの。でも、離婚することだけが解決策じゃないのよ。浮気されたからって、すぐに全てを壊してしまうのは簡単だけど、それで得られるものもあれば、失うものもある。それをよく考えてから決めてほしいのよ」

真央はしばらく沈黙していましたが、やがて深く息をついて、静かに言いました。「…お母さんがそこまで考えてたなんて…。でも、なんだか少し分かる気がする。確かに、あの人を完全に見捨てる前にできることがあるのかも…」

その言葉を聞いて、私は内心安堵しました。真央が自分の感情に押し流されるのではなく、冷静に現実と向き合おうとしているのが伝わってきたからです。真央もまた、私に似ているのかもしれない、と少し思いました。

「お母さん、ありがとう。私、もう少し考えてみる」と、真央は微笑んで言いました。

私は真央のその笑顔を見ながら、自分の選択が間違っていなかったのだと、改めて感じました。そして、彼女がどんな道を選ぶにしても、それを支える準備はできていると、心に誓ったのです。それに私も今から離婚しないとは限らない。

あくまで夫のことは飼いならしてるだけ。不要だと判断した瞬間、私はいつでも捨てられるのだから……

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