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他人にも自分にも厳しい妻のデレ

シニアの話シニアの馴れ初めチャンネル様

俺の名前は佐藤崇50代のサラリーマンです。今回は最近の妻との出来事を話そうと思います。妻は自分にも他人にも厳しい性格です。そのせいか友人と呼べる人も少ないです。夫としてのひいき目かもしれませんが、妻を苦手とする人はやましいことを抱えている人が多いです。やましい気持ちがあるから、妻に正論を言われて気まずくなってしまうという感じですね。そのせいか、息子の嫁ともあまりいい仲であるとは言えません。息子ともあまり相性が良くないのか「親父、どうして母さんと結婚したの?」と昔からよく言われていました。

妻のことをしっかり知らない人から見れば、きっと性格が悪いように見えるでしょう。だけど、妻がはっきりと物事を言うことで救われた人もいるのです。その最たる例が俺です。俺は息子が生まれてすぐうつ病になって会社を辞めなければいけませんでした。うつ病などに関して、今ほど理解があったわけではない時代だったので「この程度でうつ病になるなんて」と陰口を叩かれていました。妻ははっきりと物事を言う性格だから、きっと「役立たず」や「離婚する」と言われるかもしれないと思っていたのですが……。

結論から言えば、妻は俺がうつ病になっても何も変わらずに接してくれたんです。会社を辞めてしまったことで収入が激減して生活にも不安があったはずなのに、そのことで俺を責めることは一度もありませんでした。責められないからこそ余計に俺の方が思い詰めてしまい「本当は離婚したいと思っているんだろう!」と大声を出してしまったことがあります。

「あなたは風邪を引いて寝込んだ私を看病してくれたでしょう? あの時、実は心の中で家のこともしないでサボっているとか思ってた?」

「思うはずないだろ、それにそんなこと今言っているわけじゃ……」

「同じじゃない」

洗濯物をたたみながら妻は言葉を続けます。

「私は風邪だったけど、あなたは心の風邪のようなものでしょ? 私は確かに性格がキツイけど弱っている人を追い詰めるほど人でなしではないつもりだけど?」

当たり前でしょうとでも言いたげな表情で言われて、俺の方が拍子抜けでした。厳しい妻だからこそ「その程度で会社を辞めるなんて」と責められてなじられると思っていました。

「それにあなたは責任感が強い人じゃないの。そんなあなたがうつ病と診断されるほど追い詰められたんだからよほどのことなんでしょ?」

「でも、お金の問題とか……」

「今までの貯えもあるし、私も節約をして何とか切り詰めるようにするわ。私だって仕事をしているんだから一気に困窮するようなことにはならないでしょ。どうしても生活に困窮するようになったら私が親や兄弟に頭を下げてお金を借りることも考えているから安心して」

後から分かったことですが、実際に妻はこの後に妻の両親や兄弟たちに事情を説明して「もしかしたらお金を借りることになるかもしれない」と伝えていたそうです。その説明の時に俺のうつ病に関しては何も言っていなかったらしいので、俺の立場も考えてくれていたのでしょう。

「私はこの通り納得できないことはキツイ言い方をする性格だから心配するのは分かるけど、人でなしのように思われていたことについてはショックだわ」

「ご、ごめん」

「別にいいわよ。そう思われても仕方ない言い方ばかりだったものね。とにかくあなたは自分のことだけ考えて。私に申し訳なく思う必要もないの。変に気を遣われてあなたの心の病が悪化するようになったらそっちの方が迷惑なんだからね」

はっきりと言う妻の言葉だからこそ、すんなりと受け入れることができたのでしょう。良くも悪くもお世辞なんて言わないからこそ、妻の言葉が本音だと思えたのです。息子や息子の嫁も、もう少し妻と接する機会があれば分かってくれるのかもしれません。一応それとなく息子たちともう少し仲良くした方がいいんじゃないかと言ったこともありました。

「別に無理に仲良くする必要なんてないでしょ。実の親子じゃないんだから、下手に距離を詰められてもお嫁さんにとっては迷惑になるの」

「だからと言って息子にも息子の嫁にも悪く思われたままっていうのは……」

「いいじゃない。息子はちゃんとお嫁さんを大事にできる男になったって誇らしいし、お嫁さんのご両親は身体が悪いんだから私と仲良くする暇があるならご両親を気遣いなさいって感じよ」

妻は言っていることは本当にいいことばかりなので、そのたびに俺は惚れ直します。だけど、息子や息子の嫁に誤解されたままというのはどうしても俺が我慢できないのです。妻は本当は人を気遣える優しい人なのだと息子と息子の嫁に説明に行ったのですが、大爆笑されました。

「いや、親父……いきなり家に来て何を言うかと思えばめちゃくちゃ母さんの惚気するじゃん。片道1時間かけて父親が母親の惚気を言うって息子の俺の気持ち考えてくれよ」

「ふふっ、お義父さんが心配しなくてもお義母さんのことは分かっていますよ?」

どうやら俺だけが妻を悪者にされていると勘違いをしていたようです。息子は息子で妻のことを自慢の母親だと思っていたようです。だけど自分が悪いと分かっていても母親から責められると「なんでそこまで言われなきゃいけないんだ」と思ってしまうこともあるのだとか。

「お義父さんには話していなかったんですけど、一度だけ離婚の危機があったんです。仕事を理由に夫が朝帰りばかりしていて」

「あ、親父勘違いしないでくれよ? 本当に仕事が忙しかっただけで浮気じゃないから」

「そのことでお義母さんに愚痴ったことがあったんですけど、すぐに来てくれて……自分の息子じゃなくて私の味方をしてくれたんです」

まさか息子が離婚の危機に陥っていたなんて思いませんでした。息子の嫁はそのことがきっかけで妻への印象が変わったのだと言っています。

「なかなかお邪魔できない時がありますけど、お義父さんのこともお義母さんのことも苦手というわけじゃないんです……正確には苦手じゃなくなったって感じですかね。確かにお義母さんは言葉はキツイですけど、いつだって相手のことを考えているのが分かっていますから……」

その日の夜は妻からこっぴどく怒られました。いきなり訪ねることも失礼、苦手かもしれない相手との仲を取り持とうとしたことも失礼だと言われてしまったのです。確かによく考えてみると俺の行動は決して褒められたものではありません。息子や息子の嫁が笑いごとにしてくれたから良かったものの、本当に妻のことを苦手に思っていたら確実に俺も疎遠対象だったでしょう。

「あなたがそうやって気持ちを溜めこまなくなったこと、私は安心しているの。だけど相手のことを考えないとあなたが相手を追い詰めることになりかねないってことを覚えておいてね」

こっぴどく叱られた後、妻が「あなたがそうやって私のことで一生懸命になってくれるのは凄くうれしいんだけどね」と言ってきました。たまにしかない妻のデレに俺も嬉しくなります。その日は久しぶりに一緒の布団で寝ました。こんな風に一緒に寝ることがほとんどなくなったせいかすごく新鮮な気持ちになりました。それは妻も同じだったようで、いつもより少し寝つきが遅いように感じます。妻と結婚してもうすぐ30年、いずれ息子にも子供ができてこれからまだまだ環境は変わっていくことでしょう。だけどその中で絶対に変わらないのは、俺が妻を大好きなことです。きっとこれからも妻のいろいろな部分に惚れ直していくんだと思います。結婚して何十年も経つというのに、俺はいつまでも妻に恋し続けるのでしょう。そのことを幸せに思いながら、今日も妻と何気ない日常を過ごしていきたいです。

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