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雪見荘の女将

いつまでも若く純愛背徳
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私の名前は伊藤正。都会の喧騒から逃れるように、澄み切った冬の空気に包まれた山深い温泉地「雪見荘」へと足を運んだ。その瞬間、私を包み込む静寂と白銀の世界に、心が解放されるのを感じた。この温泉地は冬になると豪雪に見舞われ、外界から隔離されがちな場所にある。一ヶ月近くの滞在が今では、私にとっては隠遁のようなものだ。部屋に籠りがちで、食事もままならない日々を送っていた。

雪見荘の女将、春名は私の様子を見かねてか、何かと声をかけてくる。もしかしたら〇殺を心配してるのかもしれない。

女将の春名は美しい女だ。失礼かもしれないが、正確にはだったというのが適切なのかもしれない。ふくらみのある胸元を牡丹の彩られた着物が覆い隠す。その濃い牡丹の花が、白い肌をより一層際立たせている。夫を早くに亡くし、一人でこの宿を切り盛りしてきたその経験が彼女をより引き立たせているのか、慈愛を含んだ笑顔を宿泊客に分け隔てなく振りまいている。その例にもれず私にも、地元の食材を使った料理を朝食に勧めてきたり、廊下ですれ違う時には明るく挨拶を交わしてくれる。夕食時には地元の話をしながら配膳をする。当初、私は彼女の親切が面倒臭く感じていたが、次第に春名の温かい人柄が心地よく感じられるようになった。そんな彼女の優しさに少しずつ、私の心は解きほぐされていった。

ある日、猛烈な寒波が襲来し、雪見荘は外界から完全に隔離されることになった。営業はほぼ休止状態となり、私以外の客はすべてこられないという事態になった。3,4日は誰も来れないだろうとのことだった。従業員も春名と厨房の人だけが残っているだけだった。その夜はなかなか寝付けずに露天風呂に向かうと、今朝までの強風と雷がうそのように静まり返っていた。大雪に旅館全体が包まれ、味わったことが無いほどの静けさと、雪に照らされた露天風呂の神秘的な光景に心が奪われた。

湯に浸かりながら、私は自分の置かれている状況を考え込んでいた。すると、露天風呂の奥の岩の影からポチャという音が響いた。湯気に覆われた視界の先に、微かに動く影が見える。心臓が高鳴り、緊張が全身を駆け巡る。恐怖を覚えながら「誰かいるんですか?」と声をかけると、そこにいたのはなんと女将の春名だった。「ごめんなさい、言い出せなくて」と彼女は申し訳なさそうに眉を下げる。私が動揺していると、彼女はそのあふれんばかりの果実をタオルで隠しながら、「そのまま、入っていてください。すぐに出たら風邪を引いてしまいます。」というので、私はその通りにした。

「何かあってここに来られたんですよね?よかったら悩んでいることを、話してみてくださいませんか。」

春名の強い意志を宿した黒い瞳が、私を映す。春名は昔テレビに出るほどの美人女将で、あれから20年近く経ってるはずなのに年齢を感じさせない程未だに若々しさを保っている。

緊張しながらも二人で温泉に浸かり、私は彼女に自分の過去、浮気されたこと、離婚したこと、会社で同僚からされた裏切りについてなど全てを話していた。春名はどんな話でも遮らず優しく受け入れてくれ、急かすわけでもなく、時に励まし頷きながら私の話を最後まで聞いていた。その声の温かさが私に安堵感を与えていた。話に夢中になりかなり体が温まってきたので、「のぼせそうなので、先に上がりますね」と告げると、春名が「待って」と言いながらゆっくりと近づいてきた。私は咄嗟に後ろを向いた。突然、背中にそっと春名の手と頭が置かれ、私は全身の血が一気に熱くなるのを感じた。その柔らかな温もりに、胸の奥に張り付いた何かが、音を立てて剥がれていくようだった。「びっくりしましたか?もう大丈夫ですよ。これで嫌なことすべて飛んでいきましたよね」と言って、そのまま温泉から上がっていった。私は驚きと戸惑いでしばらく動けずにいた。

翌朝、雪見荘はうそのように晴れわたり、景色は完全に一変していた。春名は何事もなかったかのように朝から明るく挨拶してくる。私は彼女の目を見ることができず、少し心が揺れていたが、春名は私の動揺を感じ取ったのか、特に何も言わずにいつも通りに振る舞ってくれた。

それから、私が雪見荘を去るまでの間、雪が逢瀬の合図となった。誰もいなくなった露天風呂で彼女を待つ時間は何よりも幸福だった。窓の外が白い世界に変わるたびに、春名の白くやわらかい肌を思い出し己を制御できなくなる。春名と私は降りしきる雪を眺めながら、今までの人生を共有していた。雪の静けさは、私たちの心にも穏やかさをもたらし、さらにお互いを深く理解する機会となった。

何度目かの逢瀬で、春名は初めて自分の過去について話し始めた。夫を亡くしたさみしさや、後継者もなく一人廃れ行く旅館の今後。多くの困難と試練を経て、自信に満ち溢れているように見える彼女もまた、弱さを抱えていた。いつもは暖かく感じる笑顔が、今日は弱々しく、消え入りそうに見えた。私は思わず彼女を抱きしめた。やわらかい彼女の白いふくらみが体を刺激する。春名は一瞬驚いたように私を見つめたが、すべてをゆだねるように体を密着させた。

沸騰するように全身をめぐる血流に操られ、私をそのまま欲望の渦へと駆り立てた。

 翌日からは通常客が戻ってきており、私たちはただの女将と宿泊客に戻っていた。あの夜見た儚い笑顔が幻だったのではないかと思うほど、春名は以前と同じ優しく力強い笑顔を宿泊客に向けている。そんな彼女をみて私は帰る決心をした。彼女もまた私が立ち直り、元の居場所へと戻ることを望んでいたのだろう。私が物思いにふけながら、雪見荘をでようとしたとき、誰かがふいに私の袖をつかんだ。

そこには白く美しい春名が立っていた。春名は私に小さな包みを手渡した。それは雪見荘の景色が描かれた絵と、温泉の香りがする石鹸だった。「これで雪見荘のことを忘れないでくださいね」と彼女は微笑んだ。私は包みを受け取り、

「春名さんのおかげで孤独が和らぎました。ここは私にとって特別な場所になりました」と心から感謝を伝えた。春名は私の手を握りながら、「正さん、いつでも帰ってきてくださいね」と優しく答えた。

都会に戻る途中、雪見荘の景色が描かれた絵に目を落としながら、彼女の微笑みと触れた温もりが心に蘇った。雪見荘は、私にとってただの隠れ家ではなく、迷い続けた道の終わりに見つけた、一筋の光だったのだ。

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