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彼女の姉

敦は、心臓が口から飛び出そうなほど緊張を感じながら、車をみさきの実家へ向けて走らせていた。この結婚の挨拶は彼にとって人生の新たな章の始まりだった。希望と不安が胸を満たし、彼の鼓動は戦いの前夜の太鼓のように鳴り響いていた。しかしまさかこの日が、彼の人生に予期せぬ展開をもたらすことになろうとは、この時は想像もしていなかった。

実家のドアを開けると、暖かい空気が彼を優しく包み込んだ。みさきの家族は、彼を暖かく迎え入れた。だが、姉と目が合った瞬間、敦は氷水を浴びせられたように一瞬にして体から汗が噴き出した。彼女は、かつての一夜の相手、まりえだった。その事実が、彼の心を激しくかき乱した。彼女はかつて、一度だけ足を踏み入れた風俗で出会った女性だったのだ。女性経験の無い敦を優しく導いてくれた、まさにその女性が、ここにいたのだ。

「ふーん、良い人見つけたじゃん」とまりえはにっこりと微笑み、あきらかに敦にだけ向けて言った。その言葉には、過去の秘密を知るまりえのいたずら心が明らかに込められていた。一方で、敦は心の中で激しく動揺していた。彼女の家族は何も知らないまま談笑を続けている中、敦の頭の中は混乱でいっぱいだった。冷や汗が止まらず、彼はトイレに駆け込んだ。

トイレから戻ると、そこにはまりえが立っていた。「いけないんだよ。彼女がいるのに風俗に来るなんて」と彼女は冗談めかして言った。敦が何か言い返そうとすると、まりえは彼の口を押さえ、「内緒にしといてあげる」と言い残し、部屋に戻っていった。その後の挨拶は、敦にとってまりえからの視線を感じ続ける緊張の連続だった。

夜が更けると、酒の酔いが回ってきた敦は、柔らかいソファで休ませてもらうことになった。みなが就寝し、家は静まり返っていた。しかし、その静寂を破るかのように、まりえがそっと近づいてきた。彼は拒否しようとするが、体が思うように動かない。そして、まりえは彼にそっとキスをしたのだった。

はっと目を覚ました敦は「夢、なのか?」と自問自答した。その時、みさきがお風呂から上がってきた。「あら、起きたの?お酒は抜けた?」みさきが何か言ってるけれど頭に入らない。キスをされた感覚が今でもはっきりと残っている。現実と夢の区別がつかない。みさき、、、ではない?そんなことを考えていると、そのまま眠ってしまっていた。翌朝、みさきの実家を後にする際、まりえは敦だけにわかるように、人差し指を口元にあて、「シー」というポーズをしていた。それは、昨日のキスが確実にまりえだと確信する瞬間だった。

この出来事は、敦にとって忘れられない経験となった。過去の一夜が突如として現実に蘇り、彼の心に深い戸惑いを残した。今後実家に行くのが怖くなった。そんな時、敦のスマホがブルブルと震えた。「次はいつ会えるかな?」まりえからのメッセージだった。

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