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抗えない人妻

背徳

営業終了後の静けさが店内を優しく包み込んでいたある晩、隆二と貴子にとって予期せぬ出来事が起こり、二人の関係に大きな変化が訪れた。高い棚から荷物を取ろうとしてバランスを崩した貴子を、隆二が素早く後ろから抱き支える。彼女の体を支えながら、「大丈夫か?」と彼が問いかける声が、誰もいない店内に響き渡った。貴子が御礼を言いながら上を向き、隆二の目を見た瞬間、言葉を超えた何かが二人の間に流れる。彼女の心臓の鼓動は、隆二にも聞こえるかのように激しく鳴っていた。この一瞬の出来事は、二人の運命を大きく変えていくことになる。
・・・
初夏の柔らかな日差しの中、小さな蕎麦屋の縁側にかかる風鈴が、そよ風に乗って涼やかな音色を奏でていた。その音は、時折軽やかに舞い込む新緑の香りとともに、店の周りを優しく包み込んでいた。隆二が心をこめて営むこの場所は、常連客の顔と名前を全て覚え、地元の人々にとってほっと一息つける憩いの場だった。蕎麦の打ち方から盛り付けに至るまで、妥協を許さない職人気質の隆二だが、その真面目な外見の裏には、人の心を温かくする優しさを持っていた。
そんな隆二のもとで働く貴子は、家計を支えるためにパートとして蕎麦屋で働くことを選んだ。最初はただの職場だと思っていたが、隆二と共に過ごす時間が長くなるにつれ、彼の人柄や仕事への誠実な態度に魅了されていった。二人の間には、共に過ごす時間の中で、深い信頼関係が築かれつつあった。
そんなある日、酔っ払い客が貴子に絡んできた。あまりのしつこさと怒声に彼女は戸惑い、恐怖で固まってしまった。しかし、隆二は毅然とした態度で客を追い出す。その姿に、貴子は彼の男らしさにも惹かれていく。この出来事は二人の関係に大きな変化をもたらした。貴子はその時、初めて隆二の存在の大きさと、男性としての温かさを強く感じたのだ。
その後の日々、貴子は隆二のさりげない優しさに心を奪われていく。手を切った時には、隆二が優しく応急処置を施してくれた。蕎麦を扱う時とは異なる、慎重で温かい彼の手つきに、貴子はますます彼に惹かれていった。
営業終了後のある晩、片付けをしていた貴子が高い棚から物を取ろうとしてバランスを崩し、倒れそうになったその瞬間、隆二が彼女を抱き支えた。一瞬の出来事だったが、時間が止まったかのように長く感じられた。「ありがとうございます」と貴子が言うと、隆二は優しい笑みを浮かべていた。その時どれくらいの時間見つめ合っていたのだろうか。貴子は体が火照り、完全に隆二のこと以外目に入らなくなっていた。しかしその時、店の電話が鳴り響き、現実に引き戻された。
電話の相手は、貴子の夫からだった。まだ終わらないのかと帰宅の催促の電話だったが、「今日は忙しかったので、もう少しだけかかりそうです。」と、隆二は貴子の夫に淡々と嘘を付いて断った。
電話を切った後、隆二は貴子をそっと引き寄せる。彼の眼差しは、先ほどのような温かさに加えて、何かを決意したような強さを帯びていた。「貴子さん、さっきのこと…もう少し、続けてもいいですか?」隆二の声にはわずかな震えがあり、彼の瞳には躊躇いと強い想いが交錯していることが見て取れた。貴子は、隆二がこの一言を口にするまでにどれほどの決断を下したのかを感じ取り、その瞬間、彼女の心の中の罪悪感は全て弾け飛んだ。貴子がゆっくりと頷くと隆二は貴子を強く抱きしめた。「隆二さん」貴子の体は熱くなり、もう何も考えられなくなっていた。これまでの関係にはもう戻れない。彼女の心はすでに隆二のことしか考えられなかった。

この一連の出来事は、二人の関係を新たな段階へと導いた。互いを深く理解し、心から信頼し合うようになった二人だが、その先に波乱が待っているのも頭では分かっている。夫への罪悪感はもちろんあったが、もう何も考えられない。

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