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看護師の衝動~特別な対応~

背徳

「気持ち良いですか?」彼女の声が、耳元で優しく響き、その声には不意に心が動揺した。彼女は俺の全身をタオルで隅々まで丁寧に拭いてくれていた。武彦はこの質問がどちらの意味であるのか理解できなかった。

俺は小さな会社を経営している。自分で言うのもなんだが、かなりのワンマンだ。だが今、俺は完全に他人の手を借りずにはいられない状況に置かれていた。車の事故に合い、両手両足を骨折した俺の入院生活は。はや20日が経過した。当初のうちは家族や友人も見舞いに来てくれたが、2週間も立つと妻すら見舞いに来ない。しかも妻は明日から海外に旅行に行くそうだ。まあ俺も自由に生きてきたから何も言えない。

だが、全く動けずに個室に一人でいるとさすがに孤独に押しつぶされそうになる。他の看護師は流れ作業のように俺の世話をする中、斎藤明子さんだけは何かが違った。彼女の優しさ、気付きは、他の誰にもない温かさがあった。それは単なる義務以上のもので、彼の存在を認め、尊重してくれるかのようなものだった。明子は食事の介助から日常の細かい世話まで、全てにおいて丁寧に行い、さらに病室の前を通るたびにひと言優しい言葉をかけて慰めてくれた。

そんなある日、俺は我慢できない程のかゆみが身体を襲い、コールボタンを押した。その日の夜勤は明子だった。彼女は嫌な顔一つせず俺の背中をそっと掻いてくれた。彼女の手が触れるたびにいつも以上にその優しさを感じた。だが、なぜか痒みはなかなか収まらず、その後何度も彼女を呼び出す羽目になった。5度目のコールの時でも彼女は嫌な顔を見せずに「体を拭きましょうか?」と提案してくれた。
部屋の中はほんのわずかな光だけが灯っていた。彼女は異常なくらい丁寧に、そして隅々まで時間をかけて拭いてくれた。彼女の手が優しく俺の身体をなぞるたびに戸惑いに満ち、緊張が全身を走り抜けた。だが、その触れる感触が予想外に心地よく、俺の身体は混乱していた。この状況に自分でも驚くほどの恥ずかしさと興奮が交錯していた。

そして最後に彼女は「気持ち良かったですか?」と耳元で優しく囁いた。その声には慈愛や深い愛情が滲み出ており、心奪われながらも、俺はただ戸惑いを隠せずに「あ、ああ、ありがとう」としか返答できなかった。義務感から丁寧に拭いてくれたのか、それとも別の意味で言ったのかはわからない。部屋から出ていく彼女の目は、仕事を超えた何かを訴えかけるような深いものがあった。それは切なさや、未練、あるいは別の意味のようにも感じられた。

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