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レンタル妻

いつまでも若く恐怖純愛

私の名前は志保。朝が来るのが怖い。いつも通り、郵便受けには督促状が詰まり、食卓には何もない。そして、今日も夫のクスオは戻ってこないだろう。働きもせず、毎晩どこかで飲んだくれている。私が目を背けるたびに、彼が夫であるという事実が、私を静かに追い詰めてくる。心の底からどうしてこんな人を選んでしまったのだろうと後悔しているのに、今さら何も変えることは出来ない。

子供もいる。生活費も、学費も必要だ。クスオが稼いでこない分、働いているのは私だけ。借金は膨らむばかりで、いつかこの重みが私を押し潰してしまうのではないかと思う。そんな私を支えてくれるのは、夫ではなく、彼の友人である財前さんだった。

財前さんは、驚くほど裕福で、そして思わずためらうほど優しい人だ。クスオがまた金に困ったと泣きつけば、彼は黙って財布を差し出してくれる。「これで最後」と言いながらも、結局はまた助けてくれる。私にとって、彼は唯一の救いのような存在だった。けれど、その財前さんにすがり続ける自分が情けなく、申し訳なくもあった。

そんなある日、クスオがとんでもないことを言い出した。「志保、お前を担保にして財前さんから金を借りてたんだ」

その言葉が耳に飛び込んできた瞬間、思考が止まった。心臓が凍りつくような冷たさを感じ、視界がかすんだ。借金まみれの私には、拒否する権利など残されていないことがわかっていたが、それでも…ここまでのことをされるとは思わなかった。こんな仕打ちが、いったい何を意味するのか。どこまで私は、自分を犠牲にしなければならないのか。

それでも、財前さんのもとを訪れるしかなかった。私は震える手でインターホンを押し、扉が開くのを待った。どうしようもない絶望と、張り裂けそうな羞恥心が胸を締め付ける。

扉の向こうで私を迎えた財前さんは、私の様子を見てすぐに状況を察したのか、優しくため息をつき、「志保さん、無理をすることはないんだよ。嫌なら断ってもいいんだから」と静かに言った。

その言葉に、私は一瞬救われた気がした。けれど、帰る場所などどこにもない私は、彼の申し出に甘えるしかなかった。こうして私は、娘の麻衣を連れて、財前さんの家での生活を始めることになったのだった。そしてその夜、私は財前さんを受け入れた。ただ、彼は強引なことはまったくせず安心して彼に身を任せることが出来た。

ただ、財前さんの家での生活は、想像以上に穏やかで温かかった。彼は娘の面倒をよく見てくれ、まるで自分の娘のように大切にしてくれる。笑顔で絵本を読み聞かせ、時には一緒に遊びながら、麻衣に寄り添うその姿を見ていると、私は胸の奥がふっと温かくなるのを感じた。こんな光景は、かつての結婚生活にはなかったものだ。

夜、眠れない時も、財前さんはそっと隣に座っていてくれた。何も言わず、ただそこにいて、必要なら手を握ってくれる。それだけで不安や孤独が和らいでいくのを感じた。彼の大きな手の温もりに包まれていると、心の底から「この人となら…」と思わずにはいられなかった。

ある夜、どうしても疑問が湧いてきて、思い切って尋ねた。「どうしてあんな人を、ずっと助けてくれるんですか?」それは感謝と同時に、心の底にある小さな嫉妬からも来る質問だった。

財前さんは少し微笑み、どこか懐かしそうな目をして、「昔、彼に助けられたことがあってね。その恩返しをしているだけさ」と照れくさそうに答えた。その言葉には、少しの誇りと、深い情が感じられた。私はまた彼の魅力に気付いてしまった。彼はただ裕福だから素敵なのではなく、その優しさが私を強く引きつけるのだ。お金、人間力、そして男としての魅力、すべてで夫を上回っている。

そんな彼との穏やかな生活を続けているうちに、私は自分でも驚くほど財前さんに心を許していることに気づいた。そして、ふとした時に、かつての結婚生活を思い返すことがあった。なぜ、あんな人を選んでしまったのか…自分を責めるようにして過ごしたあの時間のことを思い出すと、自然と涙がこぼれた。

肩を震わせる私を見た財前さんは、そっと手を伸ばして私の肩を抱きしめた。そして静かに、「ずっとここにいていいんだよ、志保さん」と囁いた。その一言が、どれだけ私を救ってくれたかわからない。私の心の中にあったわだかまりが、彼の言葉でやっと溶けていくようだった。

やがて、私は財前さんの子を身ごもった。彼との新しい命を授かったことが嬉しくてたまらなかったが、同時に、まだクスオと離婚が成立していないことが頭をよぎり、つい「ごめんなさい」と謝ってしまった。すると、彼は静かに私の手を握り返し、優しい笑顔でこう言った。「謝る必要なんてないよ。名義なんてどうでもいい。麻衣ちゃんも、新しい子も、僕の大切な家族だよ」

その言葉に、私は胸がいっぱいになった。彼の手を握り返しながら、この人となら、きっと私は幸せになれる…そう確信した瞬間だった。そして私は、ついにクスオとの決別を決意した。

財前さんが手配してくれた話し合いの場で、私はついにクスオに離婚を告げた。案の定、クスオは激怒して、財前さんに詰め寄る。「俺の嫁を奪いやがって!」と、低い声で怒鳴りつけ、拳を振り上げるその姿に、私は麻衣を抱き寄せて身をすくませた。

飛び掛かるクスオの手を取り、華麗に投げ飛ばした。そして、財前さんはまるで動じることなく、静かな眼差しでクスオを見つめ、冷静な口調で言った。「君が志保さんと麻衣ちゃんを大切にしなかった結果だよ」

一瞬、クスオの顔に何かが浮かんだが、それでも彼は食い下がろうとした。しかし、財前さんはどこからか分厚い封筒を取り出し、無言で彼の足元に投げ落とした。「もう十分恩返しはしたはずだ。この金を持って出ていけ」と言い放った。

クスオは一瞬目を見開いた後、札束に視線を奪われる。途端に表情を変え、不貞腐れたように離婚届にサインをした。そして私たちを一瞥することもなく、部屋を出て行った。

財前さんは私を抱きしめ、「すぐにクスオがまたお金に困って戻ってくるかもしれない。だから、海外にでも引っ越そうか」と提案してくれた。彼には海外にも家があり、私たちを新しい生活へと導こうとしている。私はその申し出に頷き、ついに新しい人生を共に歩む決意をした。

数年後、私たちは海外で幸せに暮らしている。麻衣なんてすでに英語をすらすらと話せるようになり、新しい環境にすっかり馴染んでいる。財前さんとの生活は穏やかで、温かな光に包まれているようだった。今では、もう過去のことなど気にすることもなくなっていた。

そんなある日、ふとした知らせが耳に入った。元夫が、かつての家で嫌がらせや不法侵入を繰り返して逮捕されたという。何もかも失ってしまった彼は、他にも余罪があり今は刑務所にいると聞いたが、もはや私の心には何の影響も及ぼさなかった。

ただ、隣にいる財前さんの手を握りしめながら、私は心の中で静かに思った。「この人と一緒にいられて、本当に良かった」と。そして、かつての自分を乗り越え、新しい幸せに包まれた今に、ただ感謝しかなかった。

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