金曜日の夜、いつものように飲みの席で上司が突然、重い口を開いた。「俺の嫁の相手をしてくれないか」この言葉に、私はビールが喉を通らなくなった。
私の名前は近藤誠也。どこにでもいる平凡なサラリーマンだ。この上司とは、プライベートでも親しくしており、家族ぐるみでの付き合いもある先輩だ。彼からの突然の依頼に、私は困惑するしかなかった。彼の悩みを聞くと、EDに苦しんでおり、それが原因で妻との関係が冷え切っているという。私は戸惑いを隠せずに「それって、具体的に男女の仲ってことですか?」と尋ねた。彼の顔には痛みが滲み出ていた。声を震わせながら、彼は言った。「彼女がそう望むなら、それも仕方がない」彼は妻を愛しているが、自身の問題で関係が悪化していることに深く罪悪感を感じているようだった。「頼む、おまえにしか頼めないんだ」私は返答に窮し、心臓が早鐘のように鳴り響いた。この突然の要求に対し、正義と欲望の間で心が裂けそうになった。友人としての情、男としての義務、これらが複雑に絡み合い、どう答えるべきかさえわからなくなった。
ある日、帰宅すると妻が「今度さゆりさんたちと旅行に行こうよ」と提案してきた。驚きつつも、その背景を聞くと、さゆりさんから夫の悩みを聞いてあげて欲しいと頼まれたそうだ。何とも奇妙な夫婦だが、結局はお互いを思いやっているのだと感じた。半ば呆れながらも、妻にはOKの返事をした。男女の関係になるかも知れないなど、妻はこんな状況でもまったく疑っていないようだ。彼女の無防備さに、私は複雑な心境で苦笑いを浮かべた。愛おしさと同時に、深い懸念が胸をよぎる。
「奥さんから聞いたか?今度の旅行の時、妻のこと頼んだぞ!」翌日、上司からそう言われたが、彼は何も知らない。私は「何があっても責任は取れませんよ」と念を押し、少し楽しみにしながら旅行の日を待った。
旅行の朝、心臓の鼓動が耳を打つような感覚に襲われた。不安と期待が交錯する中、私はゆっくりと呼吸を整えた。集合場所に足を踏み入れると、そこには美しく着飾ったさゆりさんが立っていた。彼女の一挙一動に、心が動揺した。彼女は先輩とは9歳差で、まだ40代前半。普段からその若々しさにはいつも心を奪われる。だが、今回は普段よりも気合が入っていて、なおさら彼女の姿に圧倒された。横にいる妻も普段よりも気合が入った装いと、珍しく緊張し、何か決意しているような目をしていた。
「じゃ、今日はよろしくね」私たちは夫婦別々に車に乗り込み、先輩の車が先に走り出した。私の目は自然と妻の姿を追いかけていた。追いかけて行こうとするとさゆりに手を握られて止められた。「行き先はここね」と、聞いていた旅館と違う旅館が示された。(え?このままどうなる?妻は大丈夫なのか?)と戸惑いながらも車を走らせ始めた。「緊張するね!今日はいっぱい楽しみましょ?あなたたちも最近してないんでしょ?」とさゆりが手を握りながら言い、その目は期待に輝いていた。彼女の手の温もりが、不安と期待の狭間で私の心拍数を跳ね上げた。私はこの一連の出来事が仕組まれていたことに、やっと気が付いた。心は憤りでいっぱいだが、彼女に対する欲望、そして妻への罪悪感、さらに自らの妻が別の男に寝取られることに胸が痛む。この矛盾した感情に自分自身が混乱し頭が真っ白になっていたが、私の下腹部には異常なほど血液が集まってきていた。