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禁断の関係 自分が異常なのかと思っていた

いつまでも若く感動禁断純愛

高校生の頃、俺はいつも家の中に漂う微妙な空気を感じていた。両親の俺に対する態度が、どうにも腑に落ちない。遠慮がちというか、何かを隠しているような、そんな感覚が拭えなかった。それは、妹の菜実に対する態度との違いでより際立っていた。

「どうしてお兄ちゃんは良くて、私だけダメなの?」

菜実が不満をぶちまけるのを、何度も耳にした。俺が夜遅く帰っても何も言われないのに、菜実が門限を少し過ぎると厳しく叱られる。俺が進路に迷っても親は特に口を挟まなかったが、菜実が何かに迷うとすぐに指導が入る。子供ながらに、俺はその差を不思議に感じていた。もしかしたら、俺だけが特別扱いされているのかもしれない、と。

それでも、菜実とは仲が良かった。二つ違いという年齢差もあって、兄妹としてよく一緒に遊んだり、時には喧嘩もしたりしながら、何でも話せる関係だった。だが、ひとつだけ理解できないことがあった。菜実は、俺に彼女ができそうになると、決まって邪魔をしてきたのだ。

「冗談だろ?」とその度に笑い飛ばしていたけれど、菜実のその態度にはどこか本気の色が混ざっていた。それが、俺の心の片隅に引っかかっていた。

そして今、数十年が経ち、俺はもうすぐアラフォー世代に手が届こうとしている。結局、誰とも結婚することなく、独身のまま気楽な生活を送っている。一方で菜実も結婚せず、今でも独り暮らしの俺の家にちょくちょく顔を出しては、こう言うのだ。

「もう、ちゃんと片付けなよ」

小言を言いながら、いつも俺の散らかった部屋を片付けてくれる。俺は「自分でやるよ」と言いつつも、彼女の几帳面さに甘えるのが常だった。そうやって、彼女が帰った後にきれいになった部屋を見回しながら、「もし菜実がいなかったら、この部屋はどうなっているだろう」と考えることがよくあった。

そんな日々が続く中、祖父が亡くなった。葬儀も無事に終わり、親族が集まって遺産の分配の話になった。祖父からの遺言があり、俺が受け取る財産の割合が他の親族に比べて妙に多いことに、俺は不思議な感覚を覚えた。なぜ俺だけ、こんなにも多くを受け取れるのか?

相続の為に必要だった戸籍謄本を取り寄せると、そこで初めて、自分がずっと感じていた「引っかかるもの」の正体が明らかになった。俺はやっぱり、両親の実の子ではなかったのだ。

「そういうことだったのか…」

すべてが繋がった。両親の遠慮がちだった態度、菜実との扱いの差、そしてあの奇妙な距離感――そのすべてが、この一枚の書類に収まった事実に結びついていた。俺の本当の父親は、母の兄。俺の両親は、俺がまだ赤ちゃんの頃に事故で亡くなり、その後、妹である今の母に引き取られたのだ。

この事実を改めて両親に確認すると、彼らは静かに頷いた。隠すつもりではなかったけれど、伝えるタイミングをずっと逃していた、と。その時、俺はふと菜実のことを思い出した。俺と菜実は、本当は兄妹ではなかったんだ。そしてさらに驚くべきことに、菜実はこの事実をずっと知っていたのだという。

それを知った瞬間、俺の中で長年の違和感がすっと腑に落ちた。だが、それが大きなショックになったわけではない。むしろ、何かが解けたような、そんな感覚に近かった。

時が過ぎ、多く入った遺産で実家をリフォームし、俺は両親へ今までの感謝の気持ちを込めた。それで全てが片付いたように思えたが、心の奥に何かまだくすぶっているような感覚があった。菜実との関係だった。

それからも、菜実はいつものように俺の家にやってきて、相変わらず部屋を片付けたりご飯を作ってくれたりしていた。その時ふと思った。俺と菜実の間にあるもの――それは、ただの兄妹の絆ではない。俺たちは本当は、どうあるべきなのだろうか?

その日の午後、俺はいつものように菜実が片付けをしている背中を見ながら、自然と口を開いた。

「俺とお前、本当の兄妹じゃなかったんだな…」

菜実の手が止まり、しばらく沈黙が流れた。彼女の背中が微かに震え、やがてその声が返ってきた。

「…うん、そうだよ」

静かな、けれど確かな言葉だった。俺は彼女の横顔を伺った。いつもは強気な彼女が、その瞬間だけ、まるで自分を押し殺すように見えた。

「でもね、お兄ちゃん。兄妹じゃなくて良かったの!私…ずっとお兄ちゃんが好きだった」

その言葉が、俺の胸を突き刺した。ずっと一緒に過ごしてきた妹が、そんな感情を抱いていたなんて考えもしなかった。でも、何かが解けるように俺の中で繋がっていく。彼女が俺に女性の影があるたびに、邪魔をしてきた理由。遠慮がちに俺に干渉してきた理由。そして俺自身が、彼女に対して妙な感情を抱いていた理由。

「でも、言えなかった。お父さんとお母さんが、『お兄ちゃんが傷つくから絶対に言わないで』って…。でも、私は兄妹じゃなくて本当に良かったの。お兄ちゃんが好きだったんだ。ずっと、ずっと…でも言えなくて…」

その声は次第に涙で震え、菜実の頬には大粒の涙が溢れていた。俺は一瞬どうすればいいのかわからなくなった。今まで見たことがない菜実の姿に、言葉を失っていた。だけど、自分の心もまた、ずっと悩み続けてきたことを思い出した。

「俺も…実は、お前の体を見てしまったり俺は自分がどうかしてるんじゃないかって思ってた。だから、お前が家に来るたびに、心が揺れ動いてた」

その言葉を聞いた菜実は、驚いたように俺を見上げた。涙で潤んだ瞳が俺を真っ直ぐに見つめ、次の瞬間、彼女は俺に飛び込んできた。そのまま俺は彼女を抱きしめ、もう何も考えられなかった。

「私、お兄ちゃんと結婚したいの。世間がどう思おうと関係ない。どこか遠くにでも行こうよ…お兄ちゃんじゃなきゃダメなの…」

彼女の言葉は、必死で切実だった。俺は彼女の背中を撫でながら、しばらく黙っていた。考えないといけないことは山ほどあったが、俺の中でひとつの答えが浮かび上がった。

「もう、泣かないで…」

そう言って、俺は彼女を強く抱きしめ、唇を重ねた。菜実の温もりが、胸にじんわりと広がる。二人の気持ちが、初めてひとつになった瞬間だった。

それから数日後、俺たちは両親にすべてを話した。両親は最初こそ驚いたが、やがて深い溜息をつき、「いずれはそうなると思っていた」と静かに受け入れてくれた。そして、俺たちは一緒に住むことを決めた。新しい日々が始まる。

どんな未来が待っているのか、まだわからない。困難なことがたくさんあるかもしれない。けれど、もう隠し事も遠慮もない。二人で新しい道を歩んでいこう。どんなことがあっても、俺たちは一緒に。それだけは、確かだ。

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