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初体験。この年ではじめてなんです

いつまでも若く純愛
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川島栄太が母を見舞うために通っていた介護施設で、彼女に初めて出会ったのは、35歳の秋のことだった。母が認知症を患い、仕事に追われる栄太は介護施設の助けを借りざるを得なかった。自分を一人で育ててくれた母を預けることへの後ろめたさに胸が痛む一方で、どうしても自分だけで支えることができない無力感に、日々苛まれていた。

そんな彼が施設の廊下で出会ったのが、介護士の早苗だった。落ち着いた雰囲気で、どこか物静かな彼女は、栄太の母にも丁寧に接し、母の名前を優しい声で呼びかけてくれていた。その姿は、栄太にとって大きな救いとなり、心がじんわりと温まるような気がした。ある日、栄太は思い切って早苗に声をかけた。

「いつも母を大事にしてくださって、ありがとうございます」。彼女は少し驚いた表情を見せたが、やがて控えめに微笑んで

「いえ、私もお話しするのが好きなんです」と答えた。そのささやかな会話が、二人の交流の始まりだった。

見舞いのたび、栄太は早苗と言葉を交わすことが増えていった。小さな雑談から始まり、彼女の学生時代の話や、故郷の風景についての話に至るまで、話題は少しずつ広がった。早苗の声にはどこか寂しさが滲んでいて、彼女の穏やかな微笑みの奥に、言葉にしない悲しみが潜んでいるように感じられた。

ある日、栄太は思い切って聞いてみた。「早苗さんはご家族とは同居なんですか?」と。早苗は少し戸惑ったように視線を落とし、しばらくの沈黙の後、ぽつりと呟いた。「私は、一人なんです」。その言葉には、彼女の中にまだ癒えない深い傷があることを示唆する重みがあった。「すいません、変なことを聞いてしまって…」栄太は気まずい思いでそれ以降黙ったが、どうしても彼女のことが気にかかり、その日は帰り道もずっと彼女の表情が頭から離れなかった。

それ以降、栄太が施設に訪れても早苗さんと話す機会を作らせてくれなかった。話しかけるタイミングを避けていた感じだった。

どうしても気になった栄太は、翌週勇気を出して早苗さんを呼び留めた。「もし良ければ、少しお話ししませんか?」と。早苗は少し迷ったように見えたが、やがて小さく頷いた。その日、施設の小さな庭で二人きりになったとき、

「この前は変なことを聞いてすみませんでした…」そういうと、早苗は自分の過去を静かに語り始めた。

「私、小学生の頃に父に襲われたことがあるんです。母がすぐに見つけてくれたんですけど、母は育児放棄な人だったので…父が悪いのに私は家から追い出されて…だから私はそこから私施設で育ったんです…。それ以来、どうしても男性が怖くなってしまって。すみません。この前から態度悪かったですよね。」

早苗は言葉を絞り出すように語り、手のひらが震えているのが見えた。栄太はただ静かに聞き続け、彼女の痛みに寄り添うように「すみません、僕が変なことを聞いたばかりに。申し訳ありません。辛かったですね…」と言葉をかけると、早苗はふっと息を吐き、ほんの少し肩の力が抜けたように見えた。

「それ以来、ずっと男の人が怖くて……だからもう誰とも、ちゃんと向き合えないのかと思っていました」と早苗が続けた。栄太は、自分の存在が彼女にとって少しでも癒しになればと願わずにはいられなかった。「無理する必要はありませんよ。僕にできることがあれば、なんでも言ってください」と優しく声をかけた。早苗はその言葉に、はじめて少しだけ微笑みを浮かべ、「ありがとうございます……」と小さく呟いた。

その日を境に、栄太と早苗の心の距離は少しずつ縮まっていった。早苗にとって、栄太は「男性」としてではなく、「人」として安心できる存在になっていった。栄太もまた、彼女の純粋な優しさに触れ、もっとそばにいたいという気持ちが日に日に強くなっていた。

数か月後、早苗から勇気を振り絞って栄太に告白した。「私、栄太さんのことが好きになりました。もうすぐ40になるこんな私でも、あなたのそばにいさせて下さい…」そのときの早苗の顔は、震えるような不安と希望が入り混じった表情で、栄太は思わず彼女の手をそっと握りしめた。「もちろんです。僕も、早苗さんともっと一緒にいたいと思っています」と答えた瞬間、早苗の瞳が潤み、心の奥で長い間凍りついていた何かが静かに溶け出していくのを感じた。

その後、二人は交際を始めたが、早苗の心にはまだひとつの壁が残っていた。それは、体を許すことへの恐怖だった。早苗はある夜、栄太にそのことを打ち明ける決意をした。「私、過去のことがあるから、まだ経験が無くて。どうしても怖いし……まだ心の準備ができていないんです」。栄太は静かに彼女の話を聞き、「大丈夫、無理する必要はないよ。君が本当に安心できるまで、僕は待ってるから」と優しく微笑んだ。その言葉に、早苗は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じ、彼に「ありがとう」と涙を浮かべて言った。

二人はゆっくりと時間をかけ、少しずつ関係を深めていった。やがて40歳を迎えた早苗と栄太は、静かな結婚式を挙げた。小さな教会で、ほんの少しの親しい人たちに見守られながら、二人は誓いを交わした。栄太は純白のドレスに身を包む早苗の姿を見て、出会った頃には想像もしなかったほどの深い愛情と尊敬を感じていた。

結婚後、栄太の際限のない優しさに包まれついには二人は一つになることができた。そして、それはすぐに新しい家族が増えることにつながった。早苗は母親としても一生懸命で、子供たちと向き合い、家族の笑顔を絶やさない存在になっていった。彼女の中で、かつての恐怖が消え、家族の温もりがその場所を埋めていった。

 栄太はふと、これまでに3年連続で3人もの子供を授かったことに思いを馳せ、押さえつけられていた早苗の情熱の深さに内心少し驚きつつも、微笑を浮かべてしまった。そんな自分を見て、早苗も照れくさそうに笑う。

「栄太さん、大丈夫?最近、少し疲れているみたいだから……」と心配そうに早苗が尋ねると、栄太は「いや、早苗が凄いから」と返すと「もう、何言ってるのよ」と早苗は顔を真っ赤にして照れていた。

ある夜帰宅すると、日中の疲れで早苗がソファで眠りについていた。栄太はそっと彼女の寝顔を見つめた。かつて、悲しみに囚われていた彼女が、今では自分のそばで穏やかに眠っている。彼はふと、小さな寝息を立てる子供たちの寝室の方に目をやりながら、「これが、俺たちの幸せなんだな」と心の中で呟いた。

そのとき、早苗がうっすらと目を開け、寝ぼけた声で「栄太さん……ありがとう」と呟いた。その声に栄太は驚きつつも、ふっと微笑み、彼女の手をそっと握りしめた。二人の間には、言葉にしなくても通じ合える何かが確かに流れていた。

夜の静寂の中、栄太は目を閉じ、隣で眠る早苗の温もりを感じながら、彼女と共に歩んできた日々に想いを馳せた。「これからもずっと、この幸せが続きますように」と静かに願い、彼もまた眠りについた。

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