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感謝

その朝、浩一はいつものように車を運転しながら、ラジオからのDJの陽気な声が、ふと浩一の意識を引きつけた
「今日は3月9日、サンキューの日ですね」という言葉に、「サンキューの日か」とつぶやいた。
彼にとっては、まだ何も始まっていないただの一日の始まりだった。

その日の午後、浩一は若い女性と共に、アクセサリー店へ入っていった。
しかし、その場面を偶然目撃したまゆみの友人が、浩一が楽しそうに若い女性とアクセサリーを選んでいたと、すぐにまゆみに連絡した。

夕方、家に戻った浩一を待っていたのは、静まり返ったリビングと、テーブルの上に静かに置かれた離婚届だけだった。
彼は何が起こったのかを理解するより早く、まゆみの実家へと車を走らせた。
到着するや否や、彼はまゆみとその両親から冷たい視線を浴びせられた。

まゆみは怒りを露にし、「何?何しに来たの!?あの女は誰!!」とクッションを投げつけながら叫ぶ。
浩一の説明を聞く前から、彼女の心は怒りでいっぱいだった。
浩一はその瞬間、まゆみの怒りの根源が彼の行動に対する誤解であることを悟った。
まゆみが怒っているところを遮って

実はね、その女性は部下なんだ。そして、今日はサンキューの日だろ?だから、まゆみに感謝の気持ちを伝えようと思って…」

彼は深呼吸を一つして、落ち着いて事の経緯を説明し始めた。
「今朝、ラジオで『サンキューの日』だって聞いて、君に何か出来ないかなと思ったんだ。
浩一は彼女の手を取り、落ち着いて話を続けた。
「僕は、君に感謝してるんだ。毎日、そばで支えてくれてありがとう。
妻へ感謝するにはどうしたらいいかなと部下たちと話してたんだ。
すると彼女たちは手伝ってくれたんだよ。
僕たちが一緒に店に入ったのは、まゆみへのプレゼントを選ぶためだったんだよ。」
その後、彼はポケットから小さな箱と手紙を取り出す。
手紙には、日頃言葉にすることのなかったまゆみへの深い感謝の気持ちが綴られていた。
まゆみは手紙を読み進めるにつれ、浩一の誠実な説明と心からのメッセージに触れ、誤解に気づき、目に涙を浮かべる。
まゆみは深く反省し、二人の間の誤解はすぐに解けた。
「ごめんなさい、私、早とちりして…」

浩一は微笑みながら、まゆみを抱きしめた。
「浩一くん今度はまたゆっくり来なさい」義両親も呆れていた。
浩一は普段のコミュニケーションの重要性を再確認した。

この一件が、二人の絆を試すものとなり、結果的にその絆を一層深めることになった。
だが、まゆみの次の一言でまだ終わっていないことも認識した「で、その部下の人たちって誰?」やれやれ、長い1日になりそうだ。

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