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不倫旅行

明子は、日々の生活の中でふとした瞬間に、心の奥深くに隠された秘密を思い返すことがあった。彼女は不倫をしているのだ。相手の男性は現在は違う会社に勤めているが、元同僚の会社の後輩である。彼女はもう5年もの間、深い関係を続けている。明子はこの秘密を心に抱えながら、日常を過ごしてきた。

夫の清がある日、1週間の出張があるとの話をしてきた時に、明子は心に突如として思いもよらない計画が思い浮かんだ。それは、不倫相手と秘密の旅行にいくことだった。この計画は彼女にとって、日常からの一時的な逃避であり、同時に胸を高鳴らせる冒険でもあった。

彼女と清との出会いは、知人を通してのお見合いだった。形式的な出会いから始まり、最初はお互いに対して強い感情を抱いていなかったものの、清の誠実さと優しさに徐々に心を開いていった。そしてそのまま結婚をした。幸せな家庭を築くはずだった。しかし、子供が生まれないまま十数年の年月が経ってしまった。清に大きな不満があったわけではないが、彼女の心は何か大切なものを失ってしまったような寂しさを感じ始める。そんな中、やがて彼女は不倫という選択へと走ってしまった。

「出張中、私もちょっと友達と旅行に行ってもいいかしら?家に一人はちょっとさびしいから」と、明子は清に提案する。彼女の声には、わずかながらも緊張と震えが混じり合っていた。しかし、清は何の疑いも抱かず、快く同意してくれた。このやり取りは、明子にとって計画を前に進めるための重要な一歩となった。

明子は計画が露見しないように綿密に準備を進めた。彼女は清の出張先とは完全に逆方向の地を選び、夫のスケジュールを細かく調べ上げた。すべては、この秘密の逢瀬を完璧に実現するためだ。

計画通りに物事が進み、明子は不倫相手との旅行で普段味わうことのない特別な時間を楽しんだ。三日間、二人は互いの存在だけに集中し、日常の束縛から解放されたかのように感じた。

しかし、旅行からの帰り道、東京駅のアンテナショップでお土産を選んでいる時、思いがけない人物と目が合った。そこには、明日帰宅予定の清がそこに立っていた。

「え?どうして…ここにいるの?」明子の声は、信じられないという感情と、深い戸惑いが入り混じっていた。

「あ、ああ、は、早く出張が終わって、な。お、お土産を買う時間もなくて。明子は?」清の返答も、動揺を隠せない様子であった。

「えっと…私も、うっかり忘れていて…」明子も動揺し、明らかに取り繕った返事になってしまっていた。

この偶然の出会いに戸惑いを隠せず、二人とも言葉を濁した。清が本当は出張に行っていなかったのか、それとも別の理由があったのか。疑念を抱きながらも、二人はその場を何とかやり過ごした。

この出会いが二人の関係に何をもたらすのか、その答えはまだ誰にもわからない。しかし、確かなことは、この瞬間が、二人にとって新たな物語の始まりを告げているということだった。

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