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万引き犯~許して下さい~

背徳

「何でもします。許して下さい」彼女はこう言った。
「ふーん、何でもねぇ。何でもって意味わかってますか?」重昭はその女性をじっと見つめながら、彼女の肩にそっと手を置いた。

重昭がスーパーの店長として働き始めて早十年。その店は地元で評判が良く、多くの常連客に支えられていた。しかし、日々の業務には頭痛の種も多く、特に万引きが大きな悩みの一つだった。
灰色の空が広がるある冷え冷えとした日、重昭はカウンターの裏で警戒しながら店内を見渡していた。彼の目はふと、一人の女性客に留まった。彼女は静かに商品を手に取り、それをカバンに滑り込ませる動作をした。これが彼女の犯した小さな過ちの始まりだった。
重昭の心臓は速く打ち、日々のイライラと疑念がこの瞬間に集約された。店内の静けさを背に、彼は女性がレジを通らずに出口へ向かうのを確認し、すぐに彼女の後を追いかけた。店の外、冷たい空気が二人の間を流れる中、彼は彼女の肩に手を置き、静かに声をかけた。「お会計をお忘れのようですが。」
女性は驚きの表情を浮かべ、言葉を失った。重昭は彼女を店の一角にある小さな事務所へと誘導した。事務所に入ると、女性は無言で座った。重昭はカバンを指し示し、「中身を見せてください」と静かに命じた。カバンからは次々と商品が現れ、重昭の顔には失望の色が深まった。

「なぜ万引きなんかしたんですか?」重昭の問いかけに、女性は「家族には言えない事情があって…」と言葉を濁した。この時、重昭は彼女の必死の眼差しに心が揺れた。彼女は40代とは思えないほど色白で雰囲気があり、何故か許してしまいそうな魅力を持っていた。
「警察だけはご勘弁を」と女性は涙を浮かべて訴えた。彼女の目を見ていると重昭はどうしても警察に電話をすることができず、時間だけが刻々と過ぎていった。「何でもしますから」と彼女は再び言った。その言葉に、彼の中の何かが変わり始めた。彼女の目の中には恐怖と戸惑いが交じり合っており、重昭はその感情を読み取りながら、慎重に次の言葉を選んだ。「何でもって、その意味、本当にわかってますか?」重昭はその女性をじっと見つめながら、彼女の肩にそっと手を置いた。

彼女は「はい、何でもします…」と決意したような声を絞り出す。その瞬間、重昭は理性が吹き飛び彼女の体に手が伸びかけていた。がその時、けたたましく内線が鳴り響いたのを機に、彼は冷静さを取り戻した。今回の件は、彼女に買い上げてもらうこと、今後同じことを繰り返さないように誓約書を書かせることにして彼女を許し開放した。だがその時、彼女は感謝しつつも安堵とは言えない何とも言えない不思議な目をしていた。
そしてその事件から数日後、重昭は驚愕する出来事に出会う。「店長、万引きした人を捕まえました。」と事務所に連れてこられた女性は、なんとあの時捕まえた女性だったのだ。唖然としている重昭の前にその女性は静かに座り、はにかむように笑顔で重昭のことを見つめてきた。

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