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隣人~浮気相手が隣に引っ越してきた

いつまでも若く恐怖背徳

「こんにちは、お隣に引っ越してきた高橋です。これからよろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそ。ご丁寧にありがとうございます。」
彼女の微笑みは一瞬にしてその場の空気を変えた。引っ越しの挨拶と粗品を手渡すと、彼女は軽やかに去っていった。

「あなた、お隣さんにようやく新しい人が入ったみたいよ。」
「おお、そうなのか。良い人だったか?」
「きれいな35.6のお姉さんって感じかなぁ。まあ愛想は良かったわよ。」
「そうか、良い人なら良いんだけどな。」 その日の朝、朝食を食べながら何でもない会話を妻としていた。その時は何気なく口にしたその言葉だったが、後々大変なことになるのだった。

俺の名前は鈴木幸太郎、48歳。早くに結婚し、もう子供は巣立ち、夫婦水入らずで暮らしている。しかし、夫婦仲は可もなく不可もなく、正直同居人という感じだった。特別お互いに不満があるわけでもなく、特段どこの夫婦もこんなものじゃないかとさえ思っていた。それもそのはず、俺は浮気をしているからだ。その相手は取引先の女性社員で、元々は仕事の打ち合わせで何度も会っているうちに、いつの間にか恋仲になっていた。
「幸太郎さん、私のこと好き?」
「あぁ好きだよ。」
「ずっと?」
「あぁ。ずっとだよ。」 会うたびに同じようなやり取りをしている気がする。
「いつになったら一緒に暮らせるの?」 彼女は俺が妻と離婚し、早く俺と一緒になれることを夢見ている。こう言われると俺自身が最低の男のようだが、実を言うと彼女も既婚者だ。彼女のご主人は単身赴任中なだけなのだ。そしてそんな彼女との関係は2年も続いていた。

 ある日の仕事帰り、マンションのエレベーターの扉が開いた瞬間、この前引っ越ししてきたお隣さんが廊下に立っていた。
「こんばんは」そう言って通り過ぎようとした瞬間、
「こんばんは、幸太郎さん」 その声が耳に届いた瞬間、全身にドバっと冷たい汗が流れ、心臓が一瞬止まったような感覚に襲われた。振り向くと、そこに立っていたのは浮気相手の愛実だった。
「え?な、なにしてるんだよ。」焦りとパニックから声が大きくなってしまう。
「声が大きくて人が出てきちゃいますよ。」 彼女はそういうと家に入るように手招きしてきた。俺は拒否することも出来ずそのまま誘導され、家に入った。
「引っ越ししてきたのって君だったのか?」
「そうよ、これでいつでも一緒にいられるわ。」 彼女の目を見た俺は狂気を感じ、少しあとずさりしてしまった。
が、「幸太郎さん。」そう言いながら彼女に捕まった俺は、そのまま彼女に飲み込まれてしまった。

「毎日先にこっちに帰ってきてね。」 それからというもの、一旦彼女の家に寄ってから自宅に帰るという形が出来上がってしまった。それだけじゃなく、自宅に帰ってからも彼女はちょっかいをかけてくる。突然家のチャイムが鳴ったと思うと、おかずを作り過ぎたからどうぞと言いおかずを持ってきたり、隣から壁を叩いたような意図的な音が聞こえてきたりする。俺は気が気じゃなく心が休まらなくなった。
「お隣さん、良い人で良かったわね。」と妻が言う。
「あ、あぁ。良かったな。」
「お一人なのかしら?たまに話し声が聞こえるときがあるんだけど。」
「そ、そうなのか?今度聞いてみたら良いんじゃないか。」
「そうね、聞いて見えるわ。」 それ以上話題になるのは辛く、すぐに俺は風呂場に逃げて行った。が、風呂に浸かっていると、彼女の歌声が響いて微かに聞こえてくる。毎日神経をすり減らされているようで俺は眠れない日々を過ごしていた。

 そんなある日、いつものように周りの目を気にしながらサッと彼女の家に入る。するとそこには彼女と見知らぬ男性が座っていた。
「だ、誰だ!」と男が叫ぶ。俺は一瞬何が起きたのかわからなかったが、彼女の表情を見た瞬間、 「あぁ!!すいません!!隣の鈴木です。一つ手前で間違えました!すみません!すみません!」 そう謝り、すぐに部屋を出た。バタバタと音がしていたからか、うちの玄関が開いた。
「あら、あなた。どうしたの?」
「あぁ、間違えてお隣さんに入っちゃったんだよ。」
「え?もう!何してるのよ。さ、早く入って入って。」
その日の夕食中、 「今日、お隣さん旦那さんらしき人がいたわよ。」
「え?じゃあ、さっき見た男の人がそうなのか。」 彼女からメールの連絡もなく、俺はこの日も眠れないまま、朝まで考え込んでいた。

翌朝、出勤時のエレベーターに彼女が走って乗り込んできた。
「幸太郎さん」俺の顔をみた彼女が「すごい顔ですね」 どうやら俺はストレスで目の下に大きな隈を作りすごい顔をしていたみたいだ。
「ごめんなさい。」

「これで、最後にします。」 そういうと彼女はそっとキスをしてきた。
「もうイタズラするの辞めます。一人で寂しかったの。今まで困らせてごめんなさい。」 彼女はそう言うと走って仕事に向かって行った。

 彼女からそれ以降連絡もなく、またすぐに引っ越していった。 「お隣さん、もう引っ越しちゃったみたい。」と妻は驚いていたが、俺は心の底からほっとしていた。その後の彼女は取引先の仕事も辞めていた。数か月後、新しい担当の方との打ち合わせ中にどうして辞めたのかと聞いてみると、「おめでたです」と、聞かされ俺は盛大にコーヒーをこぼしてしまったのだった…

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