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妻の妹

いつまでも若くひととき禁断背徳

川島太一(42歳)は、穏やかで満ち足りた結婚生活を送っている……そう思っていた。毎朝仕事に向かい、夜には家に戻る。帰れば、妻が待っている。彼女との生活に特に不満はなかった。長い時間を共に過ごし、互いを理解し合っていると信じていた。確かに、妻との間にはもうときめきのようなものはないかもしれないが、それでも太一はこの生活に安心と充足感を覚えていた。

だが、最近、胸の奥に小さな違和感が生まれ始めていた。それは、妻の妹である紗耶香が家に来るたびに感じる妙な胸騒ぎだ。紗耶香は、妻よりも少し年下で、屈託のない笑顔とあどけない仕草が印象的な女性だった。無邪気で、どこか小動物のような愛らしさがあり、太一もつい目がいってしまう。

彼女はとにかく姉が大好きで頻繁に我が家にやってくる。そんなある日、何気なく彼女に目をやると、紗耶香がじっとこちらを見ているのに気付いた。普段の明るい笑顔とは違う、どこか真剣な眼差しに、太一は思わず視線をそらしたが、心の中に引っかかるものが残った。そんな視線を感じたのは、これが初めてではなかった。最近、彼女が見せるふとした仕草や目つきが、何かを暗示しているように思えてならなかったのだ。

そんな中、妻が突然のケガで入院することになった。太一は仕事を切り上げ、すぐに病院へ駆けつけた。妻のことが心配だったが、医師から命に別状はないと説明され、ひとまず安堵した。それでも、しばらくは入院が必要だと言われ、彼女を支えるためにできる限りのことをしようと決めた。

だが、予期せぬ出来事に戸惑う太一の元に、思いがけない救いの手が差し伸べられた。それが義妹の紗耶香だった。

「お姉ちゃんがいない間、私ができることがあれば何でも言ってくださいね。太一さんも無理しないでください」

そう言って、紗耶香は毎日太一の家を訪れるようになった。最初は、面会に行ってくれた妻の様子を伝えるためや、家の掃除を手伝うためという名目で来ていたが、次第にその理由も曖昧になっていった。頻繁にやって来る紗耶香に、太一は助けられていると感じる一方で、胸の奥に小さな違和感を覚えていた。

ある日、紗耶香が夕食を作りに来てくれたときだった。彼女がエプロンをつけてキッチンに立ち、料理をしている姿を見ていると、不意に自分の妻がいるような錯覚を覚えた。彼女が振り向きざまに、いつもの無邪気な笑顔を浮かべて「どうですか? いい感じでしょ?」と訊いてくる。その瞬間、太一の胸の奥が小さく疼いた。

「ありがとう、紗耶香ちゃん。でも、あんまり無理しないでくれよ」

「無理なんてしてませんよ。太一さんのために、こうしてお料理作れるの、嬉しいんです」

そう言って紗耶香が微笑んだ瞬間、太一は妙な違和感を覚えた。彼女の瞳が自分を見つめる視線に、家族以上のものを感じたのだ。だが、すぐにそんなわけがないと自分に言い聞かせた。紗耶香は無邪気な性格で、そんなことを考えるはずがない。

けれど、それからも紗耶香はほぼ毎日、家に訪れるようになり、太一にとって必要以上に親密な距離を保とうとするかのようだった。料理を作るだけでなく、時には一緒にテレビを見たり、何気ない話をしたり。いつの間にか、二人で過ごす時間が自然になっていく一方で、太一の心には小さなざわめきが消えないまま残っていた。

ある夜、紗耶香が持ってきた手作りの夕食を二人で食べ終え、リビングでくつろいでいると、ふとした拍子に彼女の肩が太一の肩に触れた。紗耶香は何事もなかったかのようにそのまま座っていたが、太一は体が強張るのを感じた。どうして、こんなふうに感じてしまうのだろう。

「太一さんって、ほんとに優しいですよね。お姉ちゃん、幸せ者だと思います」

不意に、紗耶香がぽつりとつぶやいた。その声には、どこか寂しさのようなものが含まれていて、太一は一瞬、彼女の顔を見つめた。彼女はしばらく黙っていたが、ふいに小さな笑みを浮かべて太一を見上げた。

「……でも、もし私が最初に出会ってたら、どうなってたんでしょうね」

その言葉に、太一は動揺を隠せなかった。家族としての枠を越えた想いが、今、紗耶香の口からこぼれたように感じたのだ。彼女の無邪気な笑顔の奥にある、微かな哀愁と未練。その視線が、自分を試すように絡みついてくる。

「紗耶香ちゃん……それは……」

太一は、返す言葉に詰まった。けれど、彼の心にはっきりとした感情が生まれ始めていた。義妹として接してきたはずの彼女に対する、抑えがたい思い。理性ではそれが禁じられたものであることは分かっている。だが、彼女が見せる一つひとつの仕草や言葉が、太一の心を揺さぶって離さないのだ。

その夜、二人で並んで座るリビングのソファに、静かな沈黙が流れた。二人とも言葉を発せず、ただ隣同士の距離を感じていた。その距離は、ほんの数センチにもかかわらず、埋めてはいけない溝のように感じられた。

だが、気づけば太一の視線は、彼女の手元に落ちていた。ふとした瞬間に、彼女がこちらを見上げて微笑む。その微笑みが、太一の理性を薄く溶かしていくように感じた。彼の中で、「これは間違いだ」という声と、「もう少しこのままでいたい」という欲望がせめぎ合う。

妻が戻ってきたとき、太一は胸の奥に奇妙な罪悪感と義妹への抑えられない想いを抱えたままだった。二人で過ごした時間が、いつまでも心に残り、消えてくれない。隣にいるはずの妻にさえも、ふとした瞬間に「秘密を知られているのではないか」という不安がこみ上げる。

彼は目を閉じるたび、義妹・紗耶香が見せた微笑みが暗闇に浮かぶのを感じた。妻の隣で眠っていても、背後から紗耶香の声が聞こえてくるような気がする。その静かな誘いに答えてしまいたい自分がいることを、太一は自覚していた。

彼が築いてきた平穏な日常は、今や砂の城のように脆く、いつ崩れ去ってもおかしくない。その足元で揺れる砂が少しずつ崩れていくのを、太一は感じながらも、どうすることもできなかった。

そして、夜の静寂に包まれながら、太一はただその不安と欲望に苛まれていくのを、どうすることもできず見つめていた。

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