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スワップの代償

いつまでも若くスワッピング系

夜の冷たい風が頬を叩き、心臓が爆発しそうなほど激しく脈打つ。息が切れ、足がもつれそうになりながらも俺は全速力で自宅に向かっていた。ドアを開けると、そこには妻の雅美が立っていた。
「ハァハァ、雅美。良かった。ごめん、俺が間違ってた」
「これで分かったでしょ? あなたには私が必要なのよ?」雅美の物悲し気な笑みを見ると、俺は申し訳なさで胸がいっぱいだった。

俺の名前は太一。小さいながらも会社を経営している。業績も順調で、会社も少しずつ大きくなっている。そして、完璧で美しい妻もいる。雅美は、こちらが何かを言わなくても全てを完璧にこなす女性だった。炊事洗濯、食事など、非の打ち所がなかった。そのため、俺はその完璧な状態が当たり前なんだと思い込んでいたのだと思う。正直調子に乗っていたのだろう。

そんなある日、友人の浩一と飲みに行ったときの話だ。彼は奥さんとうまくいっていないらしく、最近は全く関係がないそうだ。触らせてもくれないらしい。
「お前のところの奥さんみたいな人と結婚したかったよ、俺は」と浩一は飲み過ぎでベロンベロン状態だった。延々と交換してくれよと愚痴ってくる。あまりの彼のしつこさに、
「あぁ、もう! わかったよ! 一回食事するだけだぞ? !」と彼の提案に乗ってやった。俺には妻が浩一になびくなんてありえないという自信があった。だからこんな提案でも仕方なく受けてやったのだ。

もちろん妻には何も言わずに友達と食事することだけを伝えた。だがそんな食事会で意外なことが起きた。浩一の妻がやたらと可愛く感じてしまったのだ。完璧な雅美はどうしても冷淡な感じがするが、浩一の妻は可愛らしい女性で甘えるのが上手な方だった。俺は妻がそこにいるのに、彼女のことばかり目で追ってしまった。そして時間が経ち4人とも飲み過ぎてしまった。冷静さを失っていたのもある。さらに、俺はただただ調子に乗っていたのだろう。浩一が酔っている妻を連れ出そうとしてるときも、俺は浩一の妻と一緒にいたくてそのままにした。雅美の視線が一瞬、俺に向けられたが、その意味を読み取ることができなかった自分が今となっては情けなかった。

浩一の妻は浩一がいなくなると、話し方も甘えモード全開になり、べたべたと甘えてきた。そして、俺は誘導されるように繁華街を歩かされていた。このままそういうことになるのか、酔っ払い過ぎて冷静な判断ができなくなっていた。その道中、彼女はコンビニのトイレに入った。俺はコンビニには入らず外で待っていたのだが、外からは手洗い場が見えていた。その時、トイレから出てきた彼女はさっきまでの酔っぱらった彼女ではなく、身だしなみを整え、真剣な顔をしていた。だが、コンビニから出てきて俺の前に立つと、酔ってフラフラしだし、俺にもたれかかり、甘えモード全開でベタベタしてきた。あまりの露骨さと切り替えの速さに私はスーッと気持ちが冷めていった。

俺はようやく冷静さを取り戻し、どの口が言ってるんだと自分自身でも思ったが、彼女に一時の感情に流されてはダメだよと諭した。そして彼女を家まで送り、すぐに妻に電話した。だが妻は電話に出ない。浩一にかけても出ない。

無性に妻に会いたい。調子に乗って妻の気持ちを考えていなかった妻に謝りたい。お酒が回りフラフラしていたが、いつのまにか自宅に向かって走っていた。

ハアハアハアハアッ

息を切らせながら自宅へ走る。ドアを開けると、そこには妻が立っていた。

「ハァハァ、雅美。ごめん、俺が間違ってた」

「・・・これで分かったでしょ? あなたには私が必要なのよ?」雅美の微笑みは、まるで俺の愚かさをすべて見透かしているかのようだった。
「あぁ、本当にその通りだ。申し訳ない」俺は、浩一とのやり取りを全て雅美に自供し、謝罪した。
「私は人形じゃないんだよ!」と呆れ顔だった。
「それで浩一はどうなったんだ?」
「ビンタしたわよ。」雅美の声が小さすぎて聞き取れなかった。
「え?なんて?」
「だから、ビンタして置いてきたわよ!」雅美はちょっと勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「ハハハっ」と俺は思わず吹き出してしまった。
「笑い事じゃないわよ」と雅美もそう言いながらもふふっと噴き出していた。
「あなたは奥さんどうしたの?」
「あぁ、ちゃんと送り届けてきたよ」
「そう」安心したのか雅美もほっとした表情を浮かべていた。
俺は妻をゆっくりと引き寄せ強く抱きしめた。

今回の飲み会で俺には妻が必要だと再認識できた。調子に乗っていたことをきちんと謝罪し、妻に許してもらった。今回の代償は今後お酒を2杯以上飲むのは禁止ということになってしまったが、やってしまったことは仕方ない。俺は今回のことは一生かけて償っていこうと思っている。
それ以降、浩一には悪いが俺たちの夫婦仲は改善、いや、劇的に良くなったのだった。
後日談になるのだが、浩一夫妻もビンタされたことが笑い話になり、その後夫婦仲は改善したそうだ。

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