薄暗い朝焼けの中、雄太は思わず博美を強く抱きしめた。彼女の温かい体温が、彼の心を一瞬で溶かしていく。「だ、だめですよ」と彼女は囁いた。最初の抵抗には力が入っていたものの、博美の身体は徐々に力が緩み、彼女は最終的に身を委ねて、雄太の背中に手を回した。二人は静かな朝の静けさの中、ゆっくりとキスを交わした。
雄太は、ある小さな街の片隅にある、温もりのあるパン屋の店主だ。彼は毎朝4時、パンの香りに包まれた店内で仕込みを始める。博美と過ごす朝のひとときは、彼にとって一日の中で最も貴重で、他に代えがたい秘密の時間だった。彼女は、雄太が経営するパン屋で、朝の仕込みを手伝うパート従業員だ。初めはただの助手だったが、今や彼の日常には欠かせない人物になっていた。雄太と彼の妻との間には、長い間、冷え切った空気が流れており、パン屋は彼にとっての逃避場所だった。博美の存在が、彼の孤独を和らげてくれた。
そんなある日、博美が焼きたてのパンを取り出す際に、ミスで雄太の腕にやけどを負わせてしまう。彼女の慌てふためく様子と、涙目で続けられる謝罪は、普段の落ち着きとは異なり、雄太の心を強く打った。彼は、久しぶりに味わうその純粋な心遣いに感動し、腕を氷で抑えてくれている彼女の手にそっと手を添えた。その瞬間、二人の間に流れる空気が変わったことを、雄太は深く感じ取った。
それからの二人は、お互いを新たな眼差しで見始める。雄太は博美への感情を抑えることができなかった。ある朝、博美の様子がどこかおかしいことに雄太は気づく。博美は、夫から長年モラハラを受けている。昨日は、些細なことで怒鳴られ、暴力を振るわれそうになったそうだ。それを知った瞬間、雄太は抑えきれない感情に駆られ、思わず博美を強く抱きしめた。「だ、だめですよ」と彼女は囁いた。最初の抵抗には力が入っていたものの、博美の身体は徐々に力が緩み、彼女は最終的に身を委ねて、雄太の背中に手を回した。二人は静かな朝の静けさの中、ゆっくりとキスを交わした。
そこからの展開は早かった。お互いの抑えられない感情、久しぶりに求められる幸せ。結婚している罪悪感よりも、相手への欲情が上回り、止めることはできなかった。
以降、雄太にとっては、博美と過ごすこの朝の時間だけが生きがいとなっていた。「博美、お前といるときだけが、俺の本当の自分でいられるんだ」と雄太はある日、彼女に心からの言葉を告げた。博美もまた、彼の言葉に心を動かされた。しかし、二人の関係が深まるにつれて、「戸惑い」も芽生え始めていた。この気持ちはただの逃避なのか、それとも本物の愛なのだろうか。今はまだはっきりとはわからない。だが、この二人の秘密の時間は二人にとって生きていく上で必要な時間なのだ。