源二は妻を亡くしてから、ひとりの時間を長く過ごしてきた。その静けさは、息子が家庭を持つまで続いた。息子が源二を心配し同居を提案してくれたのだ。家に連れてきたのは、常に笑顔を絶やさないありさだった。彼女との同居は、源二の穏やかな生活に小さな波紋を投げかけた。
息子の多忙な仕事のため、源二とありさが二人だけで過ごす時間が増えていた。「お義父さん、ご飯できましたよー」と優しい声で呼びかけるありさに、源二の心は温もりを感じる。ありさの明るい性格と時折見せる無邪気な仕草は、源二の日常に新鮮な風を吹き込んだ。ありさが庭で花に水をやっている姿を目にした日、源二は自分がどれだけ彼女の存在に馴染んでいるかを実感した。彼女の自然体で周りを気遣う様子、家の中でスムーズに溶け込む姿に、源二は安堵感とともにふとした愛おしさを感じるのだった。
しかし、源二の心に静かな波紋を生む一つの問題があった。それは、ありさの無防備なほどの薄着だ。彼女の安心感からくるのかもしれないが、家の中でのその軽やかな装いは、源二の心をかき乱す。短いワンピースから見え隠れする彼女の白い肌は、時に源二の理性を試すかのようで、彼は自分の年齢を忘れるほど心を乱されてしまうのだった。彼女は息子の嫁というのは分かっていながらも、源二とは血のつながりもないただの他人なのだ。源二の心には説明できない感情が渦巻いていた。
そんなある日、台風の接近により息子が帰宅できなくなり、二人で過ごすことになった。ありさは幼い頃に災害を経験しており、不安と静寂が交錯する空気に満たされていた。「今日はここにいようか」と源二が提案すると、ありさは感謝の言葉とほっとした表情を浮かべていた。
強風による家の軋みが増す中、ひときわ強い突風が家を揺さぶった。その瞬間、ありさは源二にしがみついた。「すみません。お義父さん」と震える声で話すありさに、「大丈夫だよ」と優しく声をかけた。彼女の細やかな震えと不安に満ちた瞳を前にして、源二は自分でも驚くほどの強い保護欲を感じた。ありさを軽くだが、確かに抱きしめるその手の中で、彼は彼女の柔らかな温もりと共に、自分の中にひそむ複雑な感情の波に気づかされた。それは、ありさをただの家族としてではなく、一人の女性として意識している自分の感情だった。彼の心は、ありさへの深い慈しみと、同時に禁じ得ない惹かれる感情の間で揺れ動いていた。源二の心の中では、彼女への複雑な感情がより一層高まっていった。
台風が過ぎ去るまでの時間、源二はありさを抱き締め続け、彼女が安心して眠りにつけるまでを見守った。源二は心身共に激しく消耗し、泥のように眠りについた。その夜の経験は、源二にとって深い印象を残し、彼の内面に新たな感情の芽生えをもたらした。
翌日の息子の帰宅と共に日常が戻ってきたものの、源二の心には変わらない何かが残っていた。ありさへの感情と向き合いながら、彼は自分の心の中に何が起こったのか、どう進むべきかを考え続けた。特別な一夜は、源二にとって大切な経験であり、彼の人生における新しい章の始まりを告げていた。それ以降、息子とありさの仲睦まじいやり取りを見ると、微笑ましいという反面、どす黒い感情が湧き上がってくるのを感じていたのだった。